でんえん

SNSをフォローして最新情報をCHECK!

INNATURA

矢澤先生によるコラム 教えて!矢澤先生!

育種家として第一線で活躍する
矢澤秀成さんによる園芸の旬な情報をお届け

第17回冬の妖精シクラメン

第17回 冬の妖精シクラメン

 

みなさん、こんにちは!

園芸研究家の矢澤秀成です。

 

私が好きな冬の花のひとつに

シクラメンの「セレナーディア」があります。

セレナ―ディア

 

冬の定番となりつつあるこの花は

ブルー系でね、この色が好きなんです。

花付きもいいですが、お値段もいいです(苦笑)。

あまり丈夫ではないので管理に手がかかりますが、

冬の青い花って、すてきですよね。

 

みなさんが好きな冬の花は、何ですか?

そう聞かれたら

「シクラメン」と答える方、けっこう多いのではないでしょうか。

 

じつは、日本のシクラメンは世界一と言ってもいいくらい、

育種が盛んで品種がとっても豊富なんです。

日本には「シクラメン」を好きな方が多いからだと思います。

 

じつは、私が種苗会社の研究員だった頃、

福島県のシクラメン農家で1年間研修をさせていただいたので、

シクラメン栽培については、かなり詳しいんですよ。

 

ということで、第17回は冬の妖精と呼ばれる

「シクラメン」についてお話します。

 

 

1:シクラメンあれこれ

シクラメンは、サクラソウ科シクラメン属の球根植物です。

とにかく品種が多い。すごくたくさんあります。

 

まず、大きく3つに分類されます。

室内で育てて観賞する大型シクラメンと

農場にて

 

屋外で育てるガーデンシクラメン、

ガーデンシクラメン

 

耐寒性のあるミニシクラメンです。

コブレット(ミニシクラメン)

 

さらに、花の大きさに大輪・中輪・小輪があります。

 

色のバリエーションも増えてきました。

白、ピンク、濃い赤、ブルー系に加え、

クリーム色っぽい黄色も誕生しています。

ゴールデンガール
ペチコート
ラビリンス
ラビリンス
黄花

 

花の形も、八重咲き、ロココ咲き、

さらに、ウインドミルとか風車咲きと呼ばれ、

花の形が風車のように見えるシクラメンもあります。

八重咲小輪
風車咲
フリンジ咲
フリンジ中輪

 

ガーデンシクラメンやミニシクラメンは、

ある程度、寒さに耐えられるので、

岡山の平地ならば冬の間も屋外で育てられるでしょう。

寄せ植えを楽しんでいただいてもいいと思います。

 

お部屋の中に置いて観賞する大型シクラメンの鉢は

水やりの方法によって2種類に分けられます。

ひとつは手かん水(土の上から水やりする)タイプ。

もうひとつは底面給水タイプです。

底面給水

 

水やりの方法によって鉢の種類も異なり、

根の張り方も、土も変わってきます。

 

2:大型シクラメンの「土」と管理について

大型シクラメンの場合、

水やりの方法によって(鉢のタイプで)「土」も異なります。

 

底面給水タイプの土は、

水揚げに優れているピートモス系が主体です。

手かん水タイプは、赤玉土などを混合したオリジナル培養土です。

日持ちで考えると、

手かん水タイプのほうが長く咲いてくれます。

そのぶん、お値段も高いです。

 

底面給水タイプのほうが少し安めの価格設定になっています。

こちらは2月頃になると葉っぱが黄化したり

花が減ってきたりすることがあります。

しかし、実は

管理のやり方次第で長持ちさせられるんですよ。

 

そのため、私は、安く購入できる

底面給水タイプを購入しています。

もちろん、買ってきた状態のまま

部屋に置いて育てても普通に楽しめますが

私は、あえて購入した日のうちに一度、鉢から抜き、

根鉢を崩さないようにして

市販の草花用培養土を入れた鉢に植えこんじゃいます。

 

そうすると、春先まで開花してくれる上に

夏越ししやすくなるんですよ。

 

底面給水タイプの鉢に入っている

ピートモス主体の培養土は水管理が難しいんですね。

一回カラカラにしちゃうと水がなかなか入らなくなるので

一般の方にとってはハードルが高いと思うんです。

 

なので、底面給水タイプは植え替えると

長く楽しめると思いますよ。

 

いっぽう、手かん水タイプの鉢の場合は

花や球根部分に水をかけないよう気をつけてください。

 

 

3:終わった花と枯れた葉はスグ取り除いて

すべてのシクラメンに共通する育て方のコツは、

終わった花や枯れた葉をきちんと抜いてあげること。

 

シクラメンは葉っぱの数だけ花が咲く植物なので

葉っぱを育てないと新しい花が咲かないんですね。

だから、花が終わりかけたらスグ取り除いて

真ん中部分に光を入れてあげましょう。

シクラメンの手入れ

 

そうすると、葉っぱが、またワサッと出てきて

新しい花も咲かせてくれます。

 

花や葉をひき抜くときには、茎の根元部分をつまんで

キュッとひねって引っ張るとすんなり抜けます。

このとき、ハサミを使って切り口を作ってしまうと

切り口から雑菌が入るかもしれないので

ハサミは使わず、手で取るようにしましょう。

 

 

4:シクラメンのお手入れ注意点

シクラメンには、

水あげが良く、ねばりが良い土が適しています。

思った以上に根っこが張る植物なので

根っこがしっかりと張れるように

市販のシクラメン専用培養土に植えたほうが

育てやすいと思います。

シクラメン土

 

肥料については、

シクラメン専用肥料もありますが

一般的な草花に使う緩効性化成肥料でも大丈夫です。

追肥のタイミングは、年明け〜1月中旬頃かな。

栽培している環境で

肥料の使い方は変わってくるので

これは、目安ですけどね。

 

とにかく、連続して花を咲かせようと思ったら

肥料切れを起こさないことが望ましいです。

切れる前に与えることが大切です。

 

シクラメンの生産者さんは出荷の1か月くらい前に

肥料を与えていると思うのですが

購入後、1度も追肥をしないと

2月頭ぐらいには肥料が切れて徒長し始めます。

徒長し始めてから与えるのでは遅いです。

 

なので、1月中旬までには

追肥をしましょう。

 

 

2回目以降の追肥に、

IB(アイビー)化成肥料のように

肥料の効果が持続するタイプを使うのであれば

パッケージに肥効期間が書いてあるので

それをよく読んで、肥料が切れる前に追肥をしましょう。

IB化成肥料

 

と言うのは簡単ですが

肥料切れを防ぐのは意外と難しいんです。

 

でも、1度肥料切れを起こすと、

あとから肥料を追加してもなかなか効いてくれないんですよ。

だから、切れないようにやるのが理想的。

かといって、やり過ぎも困るので、

葉っぱの様子などを見ながら経験を積み、

栽培環境にあった追肥のタイミングを体得しましょう。

 

 

5:夏越し対策

花期が過ぎると夏の間、

シクラメンは休眠します。

その間の夏越し対策についてお話しましょう。

 

夏越しには「完全休眠」と「半休眠」があります。

 

ガーデンシクラメンやミニシクラメンの場合は

「半休眠」なので

夏越しは、そんなに難しくありません。

夏の間も葉っぱがついたまま、

水やりしながら夏を越すことができます。

 

だけど、大型シクラメンは

「完全休眠」がオススメ。

人間と同じでしっかり睡眠をとったほうが、

そのあといい仕事ができるからです。

 

シクラメンも夏の間、「完全休眠」させて

しっかりと休められるようにして夏を越すと

9月からの活動が盛んになります。

 

「完全休眠」の方法としては、

6月に入ったら一切水をやらないこと。

雨にもあてないでください。

軒下とかね、雨のあたらない場所に置きましょう。

すると、そのうち葉っぱが黄色くなって

パリパリに乾燥してきます。

球根も、3分の2ぐらいの大きさになって

土もパッサパサに乾きます。

それでも、6月・7月・8月の3か月間は

一切水をやらないこと。

 

そして、9月の頭に植え替えをします。

私は毎年9月1日と決めているのですが

鉢からシクラメンの球根と根をスポッと抜いて

(土も乾いて小さくなっているので簡単に抜けますよ)

マイナスドライバーで根のまわりの土を全部かき落とし、

まんじゅうみたいな形をした球根と根だけにします。

根っこは、5cmぐらいに短くバサッと切っちゃいます。

それをそのまんま植木鉢に入れます。

 

もともと植えていた同じ植木鉢でもいいです。

その場合は、きれいに洗ってから使ってくださいね。

 

土は、新しい培養土に入れ替えます。

土落とし、根切り、土替え、全部やるんですね。

 

続いて、植木鉢に入れた土の上に

球根を軽く置く感じ、で植え付けます。

球根が埋まってしまわないように

横の部分にちょっとだけ土を寄せてあげる、

と言ったほうがいいかな。

 

球根がほとんど見えた状態で大丈夫。

 

そのあと、水をかけると

球根からシュシュシュッという音がしてね、

シクラメンがしゃべり出すのがわかると思いますよ。

 

水が球根の中に入っていってね、

ひと晩でパッツンパッツンにふくらみます。

ここから2〜3週間たつと

ちっちゃな芽がついてきますよ。

これを見ると感動します。シクラメンの息吹なんですよね。

 

このツブツブの芽が葉っぱになり

やがて、その間から花が咲いてきます。

 

ただ、花が咲き始めるのは、

11月や12月ではなくて

市販のシクラメンよりも1か月くらい遅くなると思います。

だいたい正月があけた頃かな。

 

この作業を何年も続けると、

どんどん球根が大きくなっていきますよ。

 

 

6:気をつけたい害虫と病気

シクラメンで最も気をつけたいのは腐敗。

球根や花に水がかかった場合、

茎がドロッと溶ける「腐敗病」にかかることがあります。

ベストな対策方法は、キノンドーなどの殺菌剤を

かけてもらうことなんだけど、

キノンドーはかなりの大ビンで扱いにくいので

一般的なスプレー式殺虫・殺菌剤を使ってもらったらいいと思います。

ベニカエックスファインスプレー

 

冬場なので虫の心配は少ないんだけど

たまにダニがつくことがありますね。

ダニは水が嫌いなので、

葉水をかけて予防しましょう。

 

部屋に置く場合は、シクラメンホコリダニに注意。

乾燥していると、つきやすいんですよね。

アザミウマもくるかもしれないので

市販のスプレー剤をシュッシュとかけて

予防してもらったらいいと思います。

虫や病気が出てからかけてもいいですよ。

 

このスプレーで、うどんこ病や灰かび病、黒ほし病も予防できます。

 

 

Q&A

Q:寒風でガーデンシクラメンの花がしおれてしまいました。

復活させる方法はありますか?

A:ガーデンシクラメンは寒さに強いほうなんだけど、

冷たい寒風にあたるとダメージを受けちゃうんだよね。

ひどい時は真っ黒になっちゃうこともあります。

真っ黒になったらもう復活できないと思いますが、

少しの間の低温で花がしおれたくらいであれば、

しおれた花を全部取って新しい花を咲かせるといいでしょう。

 

球根がフニャフニャと柔らかくなっていなければ大丈夫ですが、

球根が芯まで冷えて凍ったりすると復活は難しいかもしれません。

葉っぱが半分くらい無事だったら復活する可能性はある、かな。

 

大事なことは、そういう寒風があたるような環境に、

もう置かないことですね。

例えば、天気予報で冷温になることがわかったら、

軒下など風の当たらない場所に鉢ごと移してあげましょう。

路地に植えていて移動できない場合は、

苗キャップのようなものをかぶせてあげましょう。

また、庭に植える際には木の近くに植えれば

枝葉が霜よけや風よけになってくれますよ。

苗帽子

 

Q:暖房の効いた室内に置いていたシクラメンが

しおれてしまいました。復活できるでしょうか?

A:暖房の風にあてちゃったんですね。なるほど。

まず、暖房が原因でしおれてしまったシクラメンは、

室温15度くらいの涼しい場所に移してもらえたら復活できると思います。

どれくらいしおれたのか、状況にもよりますが。

とりあえず涼しい部屋に移して、しばらく様子を見る。それしかないですね。

そして、花はすべて取り除いて株の負担を軽くし、

次の花芽を咲かせましょう。

適正な温度の場所に移せば2週間ぐらいで回復するんじゃないかと思います。

 

じつは、シクラメンにとって一番快適な温度は15度ぐらいなんです。

暖房の設定温度って、20度から25度くらいでしょう?

シクラメンにはちょっと暑いんですよ。

だから、涼しい場所で育てていただければと思います。

どうしても暖房の効いた室内に置きたい場合は、

夜だけでもいいから玄関など涼しいところに置いてもらえたらいいと思います。

 

投稿日:2022年11月30日

 

この記事のカテゴリ

矢澤先生のプロフィール

ホームセンタータイム
ガーデンアドバイザー
矢澤 秀成 先生

矢澤 秀成 先生

現在、やざわ花育種株式会社、葉乃畑合同会社に所属し、代表取締役社長を務める。
種苗会社植物バイオ研究室に16年勤務し、多くの花や野菜を開発する。その間、国内新花コンテストで金賞を含む18回入賞、社内では社長賞2回受賞する。
種苗会社退職後、大手ホームセンター商品開発部長及び顧問、大手肥料メーカー顧問、パテント会社代表、野菜市場顧問、ガーデンセンター顧問などを歴任。多くの植物園などのヘッドガーデナーや監修を行う。
育種家として、多くの個性的な花や野菜、漢方薬などの新種育成を行っており、18年前から全国各地の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う。子供たち自身が交配して世界に一つだけの小さな種を作り、その種を大切に育て世界に一つだけの花を咲かせる授業を行っている。さらに「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、2002年から地域の花好きを育て、そして花の街を育てる「花のマイスター養成制度」を提案しスタートする。現在全国各地でマイスターを育てる花の学校を開校し、マイスターと共に花いっぱいの公園づくりや街づくりに取り組んでいる。
NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」、NHK長野「ひるとく」、BS-日テレ「麗しの庭散策」、SBCラジオ「ずくだせ エブリデイ」、篠ノ井有線放送「花暦」などの多くの園芸番組の講師として出演中。全国で講習、講演活動を多数行い、園芸関連多数執筆中。