第56回秋冬からはじめる! 初めてのバラ栽培
みなさん、こんにちは!
園芸研究家の矢澤秀成です。
私は、いま、全国5カ所ほどのバラ園の
管理を担当しています。
およそ1000種類のバラを扱っているのですが
その中で、私が好きなバラを選ぶとすれば
「アイスクリーム」とか
「ジュビレ デュ プリンス ドゥ モナコ」とか
いろんな色が混ざったような花を咲かせる品種です。
みなさんは、どんなバラがお好きですか?
「私はコレが好き!」と思えるバラに
まだ出会えていないならば
一度、バラ園を訪ねてみませんか。
そして、自分好みのバラが見つかったら
あこがれの「バラ栽培」をはじめてみましょう!
秋冬は、初めてバラ栽培にトライする方でも育てやすい
大苗(2年生苗)が出回る季節。
そこで、今回は大苗を植えたあとの、
冬から春までの管理についてお話します。
目次
1:バラの基本情報
バラ(バラ科バラ属)は、みんなのあこがれ。
大人気の花木(落葉)・低木(一部つる性)です。
原産地は、アジア、ヨーロッパ、中近東、
北アメリカ、アフリカの一部。
開花期は5月〜11月で
四季咲き性のバラは枝を切ると
新しい芽を出して花を咲かせます。
日当たりがよく、
水はけや風通しのよい場所が栽培に適しています。
耐寒性、耐暑性は、ともに強いのですが
真夏は株元に直射日光が当たらないように
腐葉土などでマルチングしましょう。
一般に出回るバラの品種は
人気や流行にかなり影響されるんですよね。
最近は、農薬を使う量が少なくて済むように
耐病性のある品種が増えています。
育てやすいバラの種類もたくさん育種されているので
一度バラ栽培に挫折した人も
また、挑戦してみてほしいな、と思います。
2:自分好みのバラを選ぼう!
バラは、とにかく美しく人気があるので
花の形、色、香り、花つきのよさ、樹形など
多種多様な品種から好みに合わせて選べるところが魅力です。
房咲き、一輪咲きなど、咲き方の種類も多いので
バラを栽培しようと思ったら
「品種選び」がとっても大切です。
枝が上に向かって伸びる木立ち性のもの、
這って伸びるつる性の品種もあるし、
一般的なハイブリッドティーローズ(交配されたバラ)でも
2 mくらいの高さに育つものもあります。
なので、購入したあとに後悔しないためにも、
一度バラ園や植物園に行って、
実際に咲いている姿を見てみることをオススメしています。
「この品種は面白そう」とトキメキを感じたとか、
草丈や色合い、花の形、咲き方など、
ご自分の趣味に合うバラを選ぶようにしましょう。
3:秋冬は大苗を購入しよう!
秋冬はバラの「大苗(2年苗)」が出回る時期なので、
今からバラ栽培をはじめるなら
この大苗を選ぶのが一般的です。
大苗を買ってきたら
鉢で育てる場合は、もう一回りぐらい
大きな鉢に植え替えた方がいいと思いますね。
鉢植えでも、地植えする場合でも、
基本的には11月から12月半ばぐらいまでに
植え付けるのがベストだと思います。
暖かい瀬戸内地域ならば
1月・2月の寒い時期でも
植え付けられるかもしれませんが
あまりオススメできません。
4:培養土を選ぼう!
はじめてバラ栽培に挑むならば
バラ専用の培養土が、実にたくさん出回っていますので
ホームセンターの売り場で購入されたらいいと思います。
10種類あったら全部異なるぐらい
どの培養土も個性的で、よく考えられてありますが
有機質に富んだ土が最適だと思います。
ちなみに私は、著書の中で
赤玉土硬質40%、腐葉土30%、牛ふん堆肥25%、魚粉5%に
籾殻くん炭、ケイ酸塩白土を少々加えることを推奨しています。
初心者からレベルアップを望むセミプロ志望の方は
ぜひ、このようなブレンドにも挑戦してみてくださいね。
5:大苗を植え付けよう!
地植えする場合は、日当たりがよく、
雨の日に水がたまらない場所を選びます。
そして、
植え付けの2週間前ぐらい前から
しっかり土づくりをしましょう。
植え付ける場所に直径30 cmぐらいの穴を掘って、
その中に堆肥と腐葉土を混ぜて
土をふかふかの状態にします。
そのまま2週間ぐらい寝かせて
土が落ち着いてから植え付けるようにします。
このとき、基本的には大苗の根を傷めないように
植え付けることが大事なのですが、
もしも、株が鉢から抜けないくらい
根が鉢いっぱいに成長していたら、
外側から鉢をたたいて根鉢を取り出し、
ちょっとほぐしてあげてください。
鉢植えの場合は、
大苗の鉢の大きさよりひと回り大きな鉢を用意し、
苗を鉢の中央にすえ、
ウォータースペースが取れる高さを調整して植え付けます。
植え付け完了後は、
鉢から流れ出すほど十分に水やりをします。
その後は、用土が乾いたら水を与えます。
鉢植えの場合、一般的には冬の間は
軒下などに移動した方がいいと言われますが、
瀬戸内エリアは暖かいので戸外でも大丈夫だと思います。
ただし、寒い地域では注意が必要です。
北海道だとおがくずに埋めちゃうこともあるんですが
植木鉢を横に倒して土に埋めるという手もあります。
そして、植え付けから2週間後に
粒状の緩効性化成肥料を適量まきます。
さらに、肥料にもこだわりたい場合は
バラ用専用肥料もありますよ。
緩効性化成肥料
6:冬の剪定と施肥がポイント!
いい花を咲かせるコツは
冬剪定と、同時の施肥です。
冬剪定は、落葉後におこなうので
瀬戸内地方の場合は12月・1月ぐらいが適期でしょう。
ただし、近年、落葉の時期が遅くなる傾向にあります。
できるだけ葉っぱが落ちるまで待ってから剪定しますが
暖か過ぎて落葉しない場合もあります。
12月過ぎても葉が落ちない場合は
強制的に葉をむしり取ります。こうして強制休眠させてから剪定します。
まず、枯れ枝と細い枝を切り取ってあげます。
次に枝を短く切るのですが
1年目の剪定って、一番大事なんです!
どの位置で剪定するかによって
花の位置が変わってくるので
どの高さに花を咲かせたいのか、
そこまでしっかり考えておきましょう。
そのためには、この品種は
花が咲くまでにどれくらい伸びるのか、
50cm伸びて花が咲くのか、
20 cmしか伸びないで花が咲くのか、
その点を調べてから剪定しましょう。
たとえば、1 m20cmの高さに花を咲かせたいと思ったら、
50 cm伸びる品種は70cmのところで剪定しなきゃいけないですよね。
20 cmしか伸びない品種なら、
1 mのところで剪定しなくちゃいけません。
そうやって品種ごとにね、この品種は何cm伸びるのかを調べると、
どの位置で剪定したらいいかが自然とわかってきます。
品種によって、全く異なるので
ちょっと調べるのは大変だな、と思う方は
1年目に切ったところをマークしておいて
1年間でどれくらい伸びるか観察してください。
そうしたら、次の冬剪定では
前に切ったところを基準に考えられるので
深く切るか浅く切るか、
体験を通して覚えられるようになってきますよ。
ちなみに、バラの枝は意外と太くて硬いので
剪定バサミは、太めの枝も伐れるタイプのハサミを
選んだ方がいいと思います。
バラの枯れ枝なんて、ほんとに硬くて大変。
トゲもあるから、手袋をしないと
傷だらけになりますので気をつけてくださいね。
肘ぐらいまである革製の
長手袋をした方が安全ですよ。
そして、冬剪定と同時に
緩効性化成肥料、または有機肥料を
施してあげましょう。
バラ専用の肥料を試してみても
いいと思いますよ。
7:病害虫対策
今回は「冬から春にかけてのお手入れ」がテーマなので
病害虫の被害は少ないんですよね。
だけど、いくつか気をつけてほしいことがあります。
まず、ひとつ目は
冬剪定と同時に、落葉した枯葉を全部片付けること。
落葉した葉に菌類がすみついている場合があるので
土の上にも残さないよう
キレイに全部片付けて
燃えるゴミに出し、完全に捨ててください。
ふたつ目は、地植えでも鉢植えでも
2年に1回くらい掘り上げること。
1月頃に掘り上げて、「根頭(こんとう)がん腫」という腫瘍が
根の付近についていないかどうか確かめてください。
ついていると他の株に感染するので、
掘り上げてみて、もしも腫瘍がついていたら捨てること。
がん腫は、とても大きいので、
ついていればひと目で分かります。
なお、がん腫がついていても
しっかり咲いてくれる品種もあります。
他の株がなければ感染しないので
その場合は、そのまま植えてもらってもいいでしょう。
私も根頭がん腫病がついている株をひとつ持っています。
毎年、ちゃんと咲いてくれるので、
他とは隔離して、捨てずに花を楽しんでいます。
気をつけたい害虫は、カイガラムシ。
葉っぱが落ちた後、白い粉のようなものが枝についていたら
カイガラムシです。
カイガラムシには専用殺虫剤があるので、
それをかけて殺虫しましょう。
これ以外は、春が近づいてからですね。
春になると芽かき作業など、
いろいろやることがありますので
それは次回、お話ししたいと思います。
第57回目は、胡蝶蘭についてお話しします。
12月11日ごろ投稿ですので、次回もお楽しみに!
投稿日:2024年11月27日