でんえん

SNSをフォローして最新情報をCHECK!

INNATURA

矢澤先生によるコラム 教えて!矢澤先生!

育種家として第一線で活躍する
矢澤秀成さんによる園芸の旬な情報をお届け

第77回「寒肥(かんごえ)」で春の準備をしましょう!

みなさん、こんにちは!

園芸研究家の矢澤秀成です。

 

私は育種やガーデンの監修・管理のほかに

桜守りや樹木管理の仕事もやっています。

 

春に満開のきれいな桜を楽しむには

冬の間の管理が大事なんですね。

大好きなバラにも肥料をあげたいし、

冬は結構、忙しいです。

 

この時期に与える肥料を「寒肥」と言います。

「寒肥」は、絶対に必要な訳ではないんだけど

やった方がいい花が咲きます。

花も大きくなるし、花数も増えますね。

 

ただし寒肥をやり過ぎると

カビや虫がつきやすくなることもあるので

バランスがなかなか難しいんですよね。

 

ということで、第77回は、

「寒肥」についてお話します。

 

 

寒肥とは

寒肥とは、庭木や宿根草、多年草が

眠っている間に施す肥料のことです。

 

なぜ寒肥を施すのかというと、

春に、いいことがいっぱいあるからですよね。

根や芽の活動・生育を助けたり、

花数が増えたり…。

 

さらに、寒肥には、ゆっくり分解されて

ゆっくり効いていくものが多いので

ゆっくり土壌改良してくれる、

そんな効果も期待できます。

 

寒肥を入れる際、

土を掘り返すことで

根っこの先端が切れちゃうんですが、

根っこを切るとそこから

新しい根が出てきて元気になるので、

植物にとっては、いいこと尽くしなんですね。

 

 

寒い時期に行う理由

寒くなると落葉樹が葉っぱを落とすので

「弱っている」

と思われている方もいらっしゃるかもしれません。

「木が弱ってる時に根を切るなんて!」

と思われるかもしれませんが

 

じつは、落葉樹は休眠しているだけで

弱っているわけではありません。

 

逆に、活動が盛んな時期に根や枝を切っちゃうと、

切り口から大事な養分や水分が

ドバッと出てしまいます。

 

それを避けたいので

活動をお休みしている休眠期間に行います。

 

たとえば、サクラやカエデが起きている間に

枝や根をパチンって切っちゃうと、

そこからポタポタポタッと水があふれ出てきます。

 

ホットケーキにかける「メープルシロップ」って

カエデの幹に傷をつけて、

そこからポタポタッと出てくる樹液を垂らして

シロップの原料を採るんですよね。

それくらい、樹液が出てしまうので

そうならないように休眠期に作業をするわけです。

 

 

:寒肥の時期は、いつ?

だいたい12月から2月にかけての

冬季に施します。

 

ただし、先ほどお話したサクラとバラで時期が異なるように

植物によって休眠期間は異なるので

いつ施したらいいのかは、

植物ごとにしっかりチェックしましょう。

 

たとえば、サクラとかカエデは

1月になると、もう起きちゃうんですよ。

なので、サクラやカエデには

11月下旬までに寒肥をやった方がいいです。

 

バラには1月に寒肥をやるんですけど、

バラの時期に合わせて一緒にサクラの寒肥をやってしまうと

よくないんですね。

 

モミジも11月末ぐらい。

葉っぱが落ちたらすぐ、が目安なんですが

最近、葉っぱが落ちないとか、

茶色くもならないという声を聞きます。

葉っぱが落ちないと休眠していないので、

そういう時は葉っぱをむしりとる!

葉っぱのない状態にして

2週間ぐらいすると強制的に休眠に入りますよ。

 

宿根サルビアは、

剪定と同時に寒肥を終わらせるので

11月の上旬〜半ばぐらいですね。

花が終わったら一斉に地際で切って

寒肥を施し、その上に腐葉土でマルチングします。

サルビアは微妙に寒さに弱く、

−2〜−3℃で枯れてしまうものがあるんで、

必ず寒肥のあとにマルチングして冬越しさせています。

 

時期が遅いものだと、サザンカやツバキは2月。

ナンテンやセンリョウも春先の2〜3月。

この時期も、ギリギリ寒肥になります。

 

クレマチスもね、私は3月の

芽吹きの時にやっています。

これも、寒肥なんですね。

「芽吹き肥え」という言い方もしますけどね。

この時期に肥料をやると

クレマチスのつぼみが膨らむので、

剪定の位置がよく分かるようになるんですよ。

 

ちなみに、雪の多い場所では、

雪が積もる前に作業を終えましょう。

もしも、すでに雪が降っちゃっていたら

3月の雪解けまで待った方がいいですね。

 

 

:寒肥の種類

寒肥として施すのは、

油かす、鶏ふん、骨粉などの有機質肥料や堆肥です。

油かす中粒
油かす大粒
粒状鶏ふん
固形骨粉
バーク堆肥

ホームセンターでは、

寒肥の時期になると必ず何種類か店頭に並びますよ。

 

そこで、どれにしようか迷うんですよね。

 

価格は、安価のものから値の張るものまで

ちょっと幅があります。

この違いは何かというと、

材料も違うのですが

やはり効果に違いがありますね。

 

とくに、バラには専用の優れた肥料があります。

お高いんだけど、とてもいい。

こういうのを買っておけば間違いない、と言えます。

値段の高さには理由があります。

寒肥
寒肥

「いやいや、そんな高い肥料は使えないわ」

という場合は、ひと手間かけるといいですよ。

 

たとえば、私は、腐葉土や魚粉、豚ぷんなど

ちょっとニオイは厳しいんですが(苦笑)

そういうのをいっぱい混ぜて使っています。

値段は、かなりおさえられます。

でもね、豚ぷんや鶏ふんはニオイがキツイので

車で運ぶ時は、軽トラを借りた方がいいですよ。

鶏ふんは「発酵鶏ふん」でもクサイですからね。

 

ニオイが気になる場合は

腐葉土、油かすなどを使われたらいいと思います。

 

ここで、ちょと知っておきたいのがCN比。

 

パッケージの裏側には

「CN比」というものが書いてあるはずです。

これを見れるようになると

なかなか、プロっぽいですね!

 

CN比とは、炭素のCと窒素のNの比率。

鶏ふんや魚ふんは、CN比が、ひとケタと低いんです。

牛ふんは20前後が多いけれど、

同じ牛ふんでも商品によって

CN比が20の場合も、13の場合もあります。

数字が大きければ大きいほど

養分が高いと考えていいと思います。

もみ殻入り牛ふん堆肥
発酵牛ふん
寒肥成分表示
有機質肥料成分表示
腐葉土成分表示

このCN比を参考にして、

肥料濃度が強い場合には腐葉土をたくさん入れて

薄めてあげるという調整をします。

 

寒肥は、あまり強すぎない方がいいんです。

 

また、発酵の程度が未熟な肥料を使うと

土の中の窒素分を発酵のために吸われてしまって、

肥料飢餓・窒素飢餓みたいな状態になってしまいます。

なので、有機質の肥料・堆肥は必ず

「完熟」とか、「発酵をよくしている」ものを選びましょう。

 

 

:寒肥の施し方

庭木の場合は、

まず、広がった枝の一番端の先端部分ね、

その真下あたりを目安に直径30 cmぐらいの穴を掘ります。

そのあたりに、根の先端があるので

根の先端に栄養がいくように、そこに穴を掘ります。

 

穴を掘りあげて出した土50%に対して、

同量の有機質肥料を土と混ぜてから

穴に戻してあげます。

たとえば、土50%、腐葉土25%、牛ふん25%を

混ぜて穴に戻す。

有機質肥料
有機質肥料

私は、この作業を毎年やってます。

サクラはもちろん、果樹類にも毎年、行います。

 

掘る穴の数は、1本につき2箇所。

奇数の年は木の南北。北と南に、それぞれ1箇所。

偶数の年は東西に各1箇所、施すように決めています。

こうすると、2年で東西南北に肥料を与えることができるし、

毎年同じ場所にやってしまうことがないからね。

 

穴を掘るのが、「ちょっと難しいなぁ」という方は

溝でもいいですよ。

庭木の、広がった枝の先端の真下あたりを

まぁるく1週、幅10cmぐらいでいいですから

スコップやシャベルなど手軽な道具を使ってね、

ぐるっと10cm幅の溝を掘って土をかきだし、

そこに肥料を土と混ぜて戻してあげればOKです。

 

やるのとやらないのでは全然、結果が違います。

 

溝も難しかったら、

溝を掘らずに肥料をまく、それだけでもいいと思いますよ。

 

または、ホームセンターで販売されている

「グリーンパイル」という樹木専用の打ち込み肥料、

こちらを使ってみてもいいんじゃないかな。

肥料の棒みたいなものを土に打ち込むだけでいいです。

グリーンパイル

ご自分の体力にあった方法で

無理のない作業をしてくださいね。

 

 

:寒肥を行う際の注意点

寒肥の最大の注意点は、

やり過ぎると弱くなっちゃうこと。

とくに、庭木は、やり過ぎに気をつけてください。

病気の菌がつきやすくなったり、

害虫がつきやすくなったりします。

 

やり過ぎはダメです。

ほどほどがいいんです!

 

と、講演会で一生懸命伝えるんだけど

どうしてもやり過ぎちゃう方が

いらっしゃるんですよね。

 

反対に、やり過ぎを恐れて

全然あげない方もいらっしゃいます。

 

そういう「ほどほど」が難しい方には、

あらかじめバランスをとってくれている肥料があるので

そういう商品を買うようにしましょう。

 

ちなみに私は、バラや果樹には毎年、寒肥を施しますが

庭木の場合は数年に1回です。

木の様子を見て判断してあげてくださいね。

 

第78回目は、剪定についてお話しします。

2026年1月14日ごろ投稿ですので、次回もお楽しみに!

 

投稿日:2025年12月10日

この記事のカテゴリ

矢澤先生のプロフィール

ホームセンタータイム
ガーデンアドバイザー
矢澤 秀成 先生

矢澤 秀成 先生

現在、やざわ花育種株式会社、葉乃畑合同会社に所属し、代表取締役社長を務める。
種苗会社植物バイオ研究室に16年勤務し、多くの花や野菜を開発する。その間、国内新花コンテストで金賞を含む18回入賞、社内では社長賞2回受賞する。
種苗会社退職後、大手ホームセンター商品開発部長及び顧問、大手肥料メーカー顧問、パテント会社代表、野菜市場顧問、ガーデンセンター顧問などを歴任。多くの植物園などのヘッドガーデナーや監修を行う。
育種家として、多くの個性的な花や野菜、漢方薬などの新種育成を行っており、18年前から全国各地の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う。子供たち自身が交配して世界に一つだけの小さな種を作り、その種を大切に育て世界に一つだけの花を咲かせる授業を行っている。さらに「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、2002年から地域の花好きを育て、そして花の街を育てる「花のマイスター養成制度」を提案しスタートする。現在全国各地でマイスターを育てる花の学校を開校し、マイスターと共に花いっぱいの公園づくりや街づくりに取り組んでいる。
NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」、NHK長野「ひるとく」、BS-日テレ「麗しの庭散策」、SBCラジオ「ずくだせ エブリデイ」、篠ノ井有線放送「花暦」などの多くの園芸番組の講師として出演中。全国で講習、講演活動を多数行い、園芸関連多数執筆中。