第58回2025・巳年の幸運をよぶ「エリカ」
みなさん、新年おめでとうございます!
園芸研究家の矢澤秀成です。
2025年も、このコラム共々どうぞ、よろしくお願いします。
さて、今年の干支は「巳」=「蛇」ということで
その姿カタチから人気がイマひとつ、らしいですね。
植物の世界には「ジャノメエリカ」という花木があって
花の真ん中の部分が「蛇の目玉」に見えることから
この名前が付けられたそうなんですね。
と言っても、小さくてよく見えないかもしれませんが
虫眼鏡なんかで拡大すると
「あぁ、なるほど蛇の目玉ね」って思うんじゃないかな。
花は小さくて可憐でとっても愛らしいし
植えっぱなしでも毎年、健気に咲いてくれるから
「巳年」の記念に!? 植えてみてはどうでしょうか。
花が少ない時期に咲く品種は特に重宝しますよ。
ということで、第58回は「エリカ」のお話です。
目次
1:エリカについて
エリカはツツジ科エリカ属の常緑低木で
原産地は南アフリカ、ヨーロッパ、北アフリカ。
花の色には赤、ピンク、オレンジ、黄色、白があり、
花の形は、ベル型、細長い筒状など変化に富んでいます。
開花期は、種によってまったく異なりますが
どの品種も花の雰囲気は可愛らしい、
という点で共通していますね。
樹高は15 cmから3 mくらい。
品種によっては、グラウンドカバーに使えるものもありますよ。
2:エリカの品種は700以上!
「エリカ」には700種以上の品種があるそうなのですが
日本で、よく見かける「エリカ」といえば
「ジャノメエリカ」です。
鉢物で40〜50品種ぐらい流通していますよ。
「ジャノメエリカ」は、気温-5度くらいまで耐えられるし、
病気もほとんど心配ない。
ほったらかしでも大丈夫だから育てやすいんだけど
そのぶん、すごく大きくなるんです。
山陽地域で地植えしたら大変なことになるんじゃないかな。
3mくらいは伸びるでしょう。
なので、私は毎年剪定して、
あまり大きくしないようにしています。
園芸初心者のみなさんは鉢植えにして、
コンパクトに育てるといいと思いますよ。
そのほか、「スズランエリカ」という品種は
冬の寄せ植えに、よく使います。
雪をイメージして葉っぱにちょこんと綿をつけても
かわいいですよ。
そのほか、荒地でも育てやすい「ヒース」、
「アケボノエリカ」などは、
比較的、手に入りやすい品種だと思います。
3:「エリカ」がよく育つ環境は?
「エリカ」は通常、鉢で出回っています。
ホームセンターなどで購入した「エリカ」の鉢植えは、
日当たりがよく、風通しのよい屋外に置いてあげましょう。
できれば冬に買った「エリカ」は、
花を楽しみながら冬越しさせて、
花がおわったら
春から初夏の間に剪定しながら、
植え替えるといいと思います。
根鉢を崩して、新しい鉢に植え替えましょう。
その際、土は次のことに注意して選んでください。
・「エリカ」は弱酸性の土を好む。
・夏の高温多湿で根腐れしやすい。水はけのよい土を選ぶ。
「エリカ」は、いわゆる痩せ地の方が好きな植物。
肥沃ではない土の方が
しっかり育ちます。
だけど、あまり水はけをよくし過ぎちゃうと
乾燥してパッサパサになってしまうので
観葉植物用の培養土に、ピートモスを1〜2割くらい混ぜると
ちょうどいいと思います。
植え替えの際に肥料を与えるタイミングは、
完全に根づいてから。
植えつけた2〜3週間後に
緩効性化成肥料を適量よりちょっと少なめに
パラパラッと与えるといいでしょう。
「エリカ」は、養分を必要としないので
あまり耕作に適していないような
痩せ地にほったらかしで育てても
大丈夫なんだけど
冷たい北風だけは苦手なので
北側に建物があるような場所、
北風を避けられる場所に
「エリカ」の鉢を置くようにします。
また、水はけはよい方がいいのですが、
乾燥し過ぎにも注意が必要です。
根が乾燥しちゃうと、「エリカ」の木は
パッサパサになっちゃうので
土の表面を乾かさないようにしましょう。
冬場はどうしても雨が少ないから乾燥してしまうので
根元に腐葉土でマルチングしておくと安心です。
腐葉土がなければ枯れ葉でもいいので
土の表面に細かい根が出てこないように
しっかり隠してあげましょう。
4:乾き始めたらたっぷり水を
地植えのジャノメエリカであれば、
根づいたあとの水やりは
ほとんど必要ありませんが
鉢植えの場合は水切れしないように
でも、多湿にもならないように
「土が乾き始めたらたっぷり与える」
そんな感覚で水分管理をしましょう。
加えて、鉢にもマルチングした方がいいですね。
乾き過ぎもよくないけれど
「エリカ」の根は細いので、根腐れ注意なんですよ。
程よい湿度を保つには
腐葉土のマルチングぐらいがちょうどいいです。
5:肥料は少なめに
「エリカ」は、肥料をほとんど必要としません。
「エリカ」は養分が多い場所で育つと
大きくなり過ぎちゃうし、間延びしちゃうんです。
しかも、花も少なくなる傾向にあります。
そのうえ根腐れしちゃう!
なので、肥料を与えるとすれば、成長期の春に、
緩効性化成肥料を適量よりも少なめの量で
パラパラと与えるぐらいで十分です。
6:花がおわったら
花がおわったあとに、花がらをそのままにしておくと、
風通しが悪くなったり、
日当たりが悪くなったりするので、
こまめに取り除くことが理想です。
確かに、理想ではありますが
花が小さくて多いですからね。
花がら取りは、とても大変。
なので、園芸初心者さんは、
花がおわったらすぐに(5〜6月頃)
枝の先端部分を切り落として
剪定することを覚えておいてください。
ちょっと時期が遅くなってしまうと
花芽形成が始まっちゃう可能性があるし
大きくなってしまうので
花がおわったらすぐに取りかかりましょう。
剪定の際は、ハサミを入れる場所より下に
葉っぱが残るような位置で切ってあげること。
棒(茎)だけになると枯れちゃうこともあるので
必ず葉っぱを残します。
7:挿し木で増やすことができます!
「エリカ」を増やしたい場合は
5〜6月の頃に挿し木をするといいでしょう。
花がおわったあと、軽く剪定する際に
新しく伸びた枝を2節以上の長さで斜めに切り、
1時間くらい水に浸してから挿し木にします。
時期的には、梅雨の時期が一番いいと思いますよ。
8:病害虫対策
「エリカ」の場合、病気はほとんど心配ありませんが
害虫のアブラムシとカイガラムシには、
少し気をつけた方がいいでしょう。
特に、周囲にカイガラムシがいるとつきやすいので
もしも数匹でも見つけたら
ちゃんと薬剤をまいて絶滅させておくことが大事です。
カイガラムシは1度や2度の薬剤散布では全滅しないので、
「白い虫が見えたら散布する」
これを何度も繰り返し、しつこいカイガラムシを撃退しましょう。