第67回アジサイ初心者にもおすすめ!「アナベル」

みなさん、こんにちは!
園芸研究家の矢澤秀成です。
6月の終わり頃は、私が手がけている
信州善光寺の「雲上台公園」アナベルガーデンが
見頃を迎えている頃だと思います。
善光寺の花木寺子屋塾のみなさんと一緒に
つくっているお庭なんですが、すごく素敵なので
善光寺にお参りに行かれることがあれば
ぜひ、ご覧ください。
アナベルは、日本のアジサイと同様に栽培がとても簡単です。
アジサイ初心者さんはアナベルから
始めたらいいんじゃないかな、と思いますよ。
ということで、第67回は、
「アナベル」についてお話します。
目次
1:アナベルについて
アジサイ科アジサイ属(ハイドランジア属)の低木「アナベル」の
原産地は北アメリカ東部です。
別名は「アメリカアジサイ」。
「アナベルアジサイ」とも呼ばれます。
開花期が長く、日なたでも半日陰でも大丈夫。
また、寒さにも暑さにも強いので
特別な管理をしなくても毎年よく開花してくれますよ。
アナベルの花の構造はアジサイと同様ですね。
花のように見えるのは装飾花と呼ばれる「がく片」で
本来の花は中心部分にある小さな花(両性花)です。
アジサイに比べてアナベルは装飾花が多く、
手まりのような形になります。
大きくなる品種の花房は直径30 cmぐらいにもなりますよ。
※装飾花については以前、アジサイのコラムでもご紹介しています。
ぜひ、ご一読ください。
園芸お役立ちコラム『教えて! 矢澤先生!』
2:好きな色や大きさの品種を選ぼう!
アナベルの色は、純白に近いものから緑っぽい色まで
品種によって少しずつ色が違います。
アジサイと同じで、だんだん移り変わっていく
不思議な花でもあります。
最近はピンク色の品種も人気があるようですが、
私は、白いアナベルが好きですね。
善光寺 雲上台公園にも純白のアナベルを植えていますよ。
花房の大きさは、普通サイズだと直径20 cmくらいですが
30 c m〜40 c mになる、でっかい大輪の品種もあります。
花房がどれくらいの大きさになるのか、
調べてから購入された方がいいと思いますよ。
3:水はけの良い場所・土に植えつけよう!
アナベルは、真夏でも極端に乾燥しないような
「水はけの良い土壌」で育てましょう。
ポイントは「水はけの良さ」です。
水はけの良い場所であれば
半日陰から日なたまでよく育ちます。
樹高は1 mから1.5mなので、そんなに高くはなりませんが、
枝がたくさん出てくるし、大きく育つので
基本的には庭植えで栽培します。
あ、でもね、
玄関に白いアナベルの鉢植えが置いてあると爽やかだし、
すごくきれいなんですよね。
ちょっと大きめの鉢に植えて
軽く花首を垂らすようにしてね。すごく素敵ですよ。
庭植え、鉢植え、どちらの場合でも気をつけたいのは
地温が高くならないようにすること。
午後は木陰になるような場所を選ぶとか、
ある程度、かたまりで植えて日陰をつくるとか、
西日を避けることも大事です。
加えて、あまり乾燥してしまうと株が傷みやすくなるので
私は、腐葉土のマルチングを施して地面が乾かないようにしています。

ちなみに、庭に植える時は、
植えつけの1カ月前に苦土石灰と混ぜて土壌改良し、
植えつけの2週間ぐらい前には堆肥を混ぜて
土をふかふかにするのが理想的です。
だけど、いま、このコラムを読んでから植えるなら
ちょっと間に合わないので
まずは何も植物を植えていない場所に植えて、
来年の春先に肥料をやってもらえばいいと思います。
アナベルはあまり土を選ばないし、
強くて花つきもいいので、安心して育ててみてください。
4:アナベルの基本的なお手入れ
庭植えの場合、基本的に水やりは必要ありません。
だけど、もし今年の夏、極端に乾燥する日が何日も続いたり、
気温があまりにも高かったりしたら、
朝か夕方に水やりをした方がいいでしょう。
できれば、夏場は朝の方がいいですよ。
肥料は、開花後の7月中旬から8月下旬までに「お礼肥」、
1月から2月の間に「寒肥」を与えましょう。
まず、夏場のお礼肥について。
株元から15 cmぐらい離れた場所に
穴を1つ掘り、掘り出した土と堆肥を混ぜて穴に戻してあげましょう。
毎年、掘る穴の場所を変えてあげると
株元の土をまんべんなく豊かにしてあげられます。
このお礼肥のタイミングに合わせて、
2〜3年に1回のペースで根切りをします。
買ってきた年は、根切りをしなくて大丈夫ですよ。
根切りを行う場合も、株の周囲全部の根切りをするのではなく
穴を掘った部分だけ根切りをするようにします。
寒肥としては、草花用の緩効性化成肥料を
規定の量だけパラパラと株元に与えてあげます。
通常は1〜2月なのですが
暖かい山陽エリアでは、寒肥は早春でもいいと思います。


鉢植えの場合は、予想以上に早く
鉢の中が根っこでパンパンになってしまうので、
植え替えが必要です。
8月は、ちょっと暑いので
彼岸花が咲く頃に植え替えるようにしましょう。
株のサイズをあまり大きくせず、
そのままの大きさにしたいのであれば
土を落として根っこをある程度切って植え替えます。
5:花が終わったら剪定を!
アナベルの花が下を向き始めたら
7月中に花の剪定をしましょう。
花の裏側が見え始めたら剪定のタイミングです。
アジサイよりも簡単なので、ぜひ剪定してあげてくださいね。
剪定で切った花は風通しのよい日陰に吊るしておけば
ドライフラーになりますよ。
切るところは第1節の下、すなわち第1節と第2節の間です。
花が終わったら剪定した方がいいんだけど、
「もっと花を長く楽しみたいな」という方は、
夏から秋の剪定をせずに、
アナベルの白い花がうすい緑色に変化し、
最終的に緑になるまで花を楽しみ
年が明けてから4月末頃までに切ればいいですよ。
ココが普通のアジサイとアナベルの大きな違いです。
アジサイは「旧枝咲き」なので、
前の年に伸びた枝に花芽をつけるんだけど
アナベルは「新枝咲き」だから、
今年伸びた枝に花をつけるんです。
だから、3月〜4月にパチンパチンと枝を切っても
横から伸びてきた枝に花芽をつけてくれますよ。
だけど、前年に剪定しておくと花芽の数が増えるから
花数を増やしたい、ボリュームを出したい場合は
秋剪定を行いましょう。
高さを低くしたい場合は3節目とか4節目で切ってもいいです。
だいぶ茂ってきたなと思ったら、数年に一度、
地際近くまで切ってあげてもいいです。
アナベルとアジサイの剪定については
私のYou Tube「ほそめ園芸教室」アジサイの剪定方法
でも詳しくご紹介していますので、
これを見ながら頑張って剪定してくださいね。
6:挿し木で増やしたい!
同じ品種のアナベルを増やしたいと思ったら
挿し木に挑戦してみましょう。
挿し穂に新芽を使うと途中でしおれてしまうので
私は、花の色が移り変わってきたぐらいのタイミングで
挿し穂を取るようにしています。
もう少し詳しくお話しすると
6月頃に咲き始めた白い花が、7月の後半になると緑色になってくるんですね。そのぐらいになると、ちょうど花後剪定の時期でもあるので、
剪定を兼ねて挿し穂を選びます。
花の下の1節は挿し穂に使えないので
まず、花から3節ぐらいのところで切って
その枝を2節と3節に切り分けます。
すると挿し穂が2本できます。
その挿し穂についている葉っぱを半分に切り、
切り口は斜め切りにします。
そうしたら水に30分間ぐらいつけて、
その後、挿し木用培養土に挿したら完了。
土が乾かないように明るい日陰で管理して
1ヵ月半から2ヵ月ぐらい経つと
かなり根っこが出てきます。

彼岸花が咲く頃には、しっかりと根っこが出ているので
その頃にポット上げしてもらい、そのまま冬越しします。
そして春に新芽が芽吹いてきたら
花壇やお庭に植えつけましょう。
アナベルは結構、活着率が良いので
ぜひ、挑戦してみてくださいね。
※品種登録されている植物を挿し木で増やし、それを他人に譲渡(販売)すると育成者権を侵害する行為として種苗法違反となる可能性がありますのでご注意ください。
7:注意したい害虫と病気について
アナベルは、害虫に食べられることも少ないし、
病気も少ないです。
だから本当に管理しやすいのですが、
たまに、寒暖差が激しいときや湿度が低いとき、
枝が茂り過ぎたときなどに
うどんこ病が発生しますので
スプレー式の殺虫殺菌剤でしっかり予防をしておくといいでしょう。
普通のアジサイは、モザイク病になることもあるんですが
アナベルがモザイク病になることは本当に少ないです。
だけど、アブラムシやカイガラムシが
病原菌を媒介することがあるんですね。
もしモザイク病にかかった葉っぱを見つけたら
アブラムシやカイガラムシなどの害虫がいると思って
ちょっと丁寧に見てあげて、見つけたら捕殺してください。

あと、たまにカミキリムシの幼虫が茎をガリガリとかじることがあります。
株元に木くずのようなものを見つけたら
カミキリムシがいると思って間違いないでしょう。
「テッポーダン(薬の名前)」を使う、または、
カミキリムシ用のキンチョールなどの薬剤で、すぐ対応しましょう。
茎から出ている木くずをほじくり出し、
そこにノズルを挿してシューッと、5秒間ぐらい薬剤を噴射します。
それで効果があるはずです。


そのほか、夏場の温室のようにひどく乾燥した場合、
ハダニが出ることがあります(めったにないですけど)。
ハダニの被害にあった場合、葉が茶色に変色し、
ひどい場合は落葉することがあります。
ダニは雨が嫌いなので、雨風に当たる環境であれば
そこまでの被害にならないと思うのですが
日照りが何日も続いたのに水やりが間に合わなかったら
ちょっと注意してあげてください。
予防法としては、週1回ぐらい
アナベルの上から株全体に水をジャーッとかけてあげるんです。
葉っぱの表裏にまんべんなく水が当たるようにかけてあげると
大概、ハダニは流れてしまいますよ。
Q&A
Q:アナベルの茎が細過ぎて花首が折れてしまいます。どうすればいいですか?
A: 花首が折れる原因は、花の重さに比べて支える茎が細過ぎることだけでなく、雨で花が重たくなった場合にも、下を向いたり折れたりしてしまうことがあります。花首がしだれるのは風景だと思って楽しんでもらえると良いのですが、「折れないように」ということなので手まり状になっている装飾花(がく片)を少しカットして(量を減らして)あげると、花が軽くなりピンと立ちますよ。「せっかく咲いている花を切るのは嫌」という人は、支柱を立てて花首を支えてあげましょう。支柱の色は、黒や茶色だと目立つから、アナベルの茎と同化する緑の支柱にした方がいいかな。
Q:アナベルの花を大きくするコツはありますか?
A:まず、大きくなる品種を選ぶことですね。そして、大きくするには根をしっかり張らせること。そのためには、土をふかふかにすること、そして肥料が重要です。植えつけてから2週間たったら規定量の緩効性化成肥料をパラパラとあげてください。また、翌年の春、芽吹きの頃にも緩効性化成肥料を与えると大きめの花が咲くと思いますよ。
第68回目は、自然農法についてお話しします。
7月9日ごろ投稿ですので、次回もお楽しみに!
投稿日:2025年6月25日