第46回世界にひとつだけの「アジサイ」!
みなさん、こんにちは!
園芸研究家の矢澤秀成です。
私の住んでいる軽井沢では
冬の寒さで西洋アジサイの花芽が
全部枯れてしまうのですが
日本のアジサイの花芽は
軽井沢の厳しい冬に耐えて
咲いてくれるので
ヤマアジサイの収集家、とまでは言いませんが
50品種以上、たくさん集めています。
アジサイって置かれた環境に合うように
色を変えていく性質なので
その家だけの色になっていく、
世界にひとつだけの色を見せてくれるところが
魅力だと思うのですが
みなさんは、どう思いますか?
ということで、第46回は
「アジサイ」のお話です。
目次
1:アジサイについて
梅雨空の下、
青や紫色の清涼感ある花を咲かせるアジサイは
アジサイ科アジサイ(ハイドランジア)属の花木(落葉)。
原産地は東アジアです。
ルーツは日本の自生種なんですね。
ヨーロッパで品種改良され、
「ハイドランジア」の名前で
世界中に親しまれるようになりました。
日本産ゆえに栽培は容易です。
何年も育てることができ
庭に根付いてしまえば植えっぱなしでも大丈夫。
花が咲くのは、
基本的には6月〜7月ですけど、
最近は、四季咲きや
初夏から秋まで咲く二季咲きタイプも
少しずつ増えてきていますよ。
2:アジサイの品種いろいろ
アジサイの花の咲き方は大きく分けて
「手まり咲き」と「ガク咲き」の2種類。
「手まり咲き」は、手まりのように
全体にこんもりと咲きます。
群馬の「さかもと園芸」さんの
ギフト用高級アジサイ「KEIKO」シリーズ、
島根県アジサイ研究会の
「万華鏡」「銀河」などが有名です。
とくに「万華鏡」は、美しいブルーで
ボリュームがあってね。
これは見事ですよ。
人気があり過ぎて、なかなか入手できないと評判です。
「ガク咲き」は、絵画の額縁のように
花を咲かせます。
代表的な品種としては「隅田の花火」が有名。
このほか、葉っぱに斑が入る「斑入り」タイプ。花茎が40〜50cmぐらい伸びる「切り花用」タイプもありますね。
日本の「ヤマアジサイ」にも
「秋篠テマリ」「七変化」「清澄沢紫陽花」など
たくさんの品種があります。
ちょっと性質が違いますけど
「アナベル」など、アジサイの仲間も多いです。
3:日なた〜半日陰に植えつけ
アジサイって、日陰のイメージが強いと思うんですけど
実は、日なたの方が花つきは良くなります。
ただし、乾燥に弱いので
地面がカラカラにならないよう、乾燥に注意を!
田んぼの土手にアジサイを植えると
陽がいっぱい当たって良いアジサイができる、
と言われています。
土がぐちゃぐちゃになるほど水分が多いところでは
ダメですけどね。
カラカラにならない場所なら
アジサイはひなたでもしっかり育ちます。
逆に、日陰で育てると徒長してしまうし、
花つきも悪くなり、
あまり良い花が咲かないですね。
また、強い日差しや西日が鉢の温度を上げると
葉焼けをするので注意しましょう。
鉢植えは乾きやすいので、
プラスチック鉢で乾燥を防ぎます。
または根元に腐葉土をすきこんで
乾燥させないようにしましょう。
地植えの場合は、乾燥しがちな場所だったら
腐葉土でマルチングして、
表面が乾燥しないようにしてあげましょう。
アジサイ専用の土を使うのも良いですよ。
4:アジサイの水やり・肥料
鉢植え・地植えともに、
土の表面が乾いたらたっぷり水を与えましょう。
水切れしないように注意してくださいね。
地植えの株が乾燥して、葉が垂れている場合は
根元に腐葉土や落ち葉を寄せて
乾燥を防ぐと良いでしょう。
肥料については
植え付けから2週間後に、
粒状の緩効性化成肥料を適量まきます。
その後、鉢植えは2週に1回、
適量の液体肥料を与えればOK。
地植えの場合は3月下旬に
株の周囲に深さ10cmの溝を掘って
肥料を施し、土を埋め戻すだけです。
ちなみに
アジサイには専用の肥料があります。
土壌が酸性か、アルカリか、
それによって花の色が変わるから
赤系の花用、青系の花用と
色別に肥料があります。
これを使うと、
赤は赤らしく、青は青らしい色が出ますよ。
土の酸度調整もしてくれます。
日本の庭の土は酸性方向に傾いているので
アジサイの青系は鮮やかに出るんですけど
赤系は、なかなか鮮やかな赤になりません。
だけど、その肥料を使うと
鮮やかな赤になってくれます。
5:花がら剪定は2節目の上で切る!
1年前にのびた新芽に花がつくので
花がら剪定ができなくても
花は咲くんですね。
でも、花がら剪定をすると
花の数が増えるので
できれば花がらを
7月中旬〜8月中旬の
剪定適期に摘み取りましょう。
この時期に花がら剪定をしないと、
来年、花がつきにくくなります。
なぜかと言うとアジサイは、
お盆前後に来年の花芽を形成してしまうから。
9月に入ってから剪定すると
間違って花芽を切ってしまいがちなので
花後1か月くらいまでには
剪定しておいた方が安心です。
6月に咲いたとしたら
7月下旬から8月上旬までに
切っておいた方がいいです。
剪定する際の注意点は
花のすぐ下、1節目までの茎からは
芽が出てこないので
2節目の上で切ること。
花から2つ目の節の上、約2cmの位置で切ります。
つまり1節目と2節目の間、ですね。
花がら剪定をせずに
10月くらいまで花をつけたままに
していても、それはそれでいいんですよ。
咲き進んで退色した花は
切り花(秋色アジサイ)として利用できます。
アジサイって、咲いている間に
3〜4色ぐらい変化しますよね。
例えば、白からピンクになって、
ブルーになって紫になって、
グリーンになる…。
そうやって色が変わるのが普通なので
色変わりを楽しむ方は
花がら剪定せずに
冬のはじまりぐらいまで
花をつけたままにしてもいいと思いますよ。
ドライフラワーにして飾るのも素敵です。
アジサイは1年で50cmくらい伸びるので
花がら剪定で切っても
どんどん背が高くなります。
そのため、5年に1度ぐらいバッサリ剪定し、
株の大きさをコントロールします。
花後にあまり強い剪定をすると
株を傷めてしまう可能性があるので
秋の落葉後の休眠した状態で切った方がいいですよ。
強い剪定をした翌年は
花の数が少なくなりますが
1年間休ませる、と思って
今年のびた新梢の芽を
3〜5個残して剪定します。
11月の落葉後に切り詰めると
どこを切れば良いか見やすいので
切りやすいうえ
株を傷めず樹形を小さくすることができます。
続いて、春剪定について。
アジサイの場合、花後の剪定が
ピックアップされますが
実は、春剪定がすごく大事です。
冬を越えた後、3月末ぐらいになると、
西日本ではアジサイの芽が出始めて
ちょっと緑色がかってくると思うんですよ。
枯れ枝と生きている枝が
見た目ですぐわかるので
枯れ枝を根元から切ってあげます。
そうすると風通しが良くなって
病気にかかりにくくなります。
春剪定で枯れ枝をしっかり除くと
すごく生育が良くなるんですよ。
ついでに、春の肥料もあげましょう。
株の10 cm外から緩効性化成肥料をパラパラっと
適量かけるだけでいいですよ。
さらに、余力があれば
赤系のアジサイを植える場合は
アルカリ性なので苦土石灰を混ぜた方がいいですね。
青系は日本の土は、もともと酸性方向なので、
青系は特に必要ないと思います。
6:挿し木で増やそう
アジサイには種もできるんですが
通常は、挿し木で増やしますね。
前年の枝を使って春に挿す、
あるいは、6月ごろに新しく伸びた枝を使います。
前年の枝に花がつくので、
花がついた枝の1節と2節の間で花がら剪定をします。
そこは挿しても芽が出てこないので
挿し木をしたい場合は2節以下を使うので
2節と3節の間で切って、それを挿します。
すると2節のところの芽が伸びてきます。
今年のびた枝というのは
花のついていない枝です。
葉っぱだけしかついていない枝。
この枝は来年、花が咲く予定の枝です。
その枝の、天芽という一番先端の芽から
2節ぐらいのところでスパッと切ります。
さらに、葉っぱをできるだけ少なくして
挿してあげると、来年、
そこに花が咲きます。
挿し木をする場合は、
私は育苗箱を使いますが
鉢でも、ポットでも良いです。
それに、挿し木用の土、または培養土を入れて
アジサイの枝を挿します。
根っこが出るまでは毎日、
水をしっかりあげてくださいね。
すると、1か月後には根が出てくるので
次は9cmポットに植え付けます。
ここまで肥料はやらないです。
肥料を開始するのは、
挿し木をして1か月後、
根が出てから液体肥料をあげてもらえばOKです。
そして、秋になったら庭に植える、
または鉢に植えます。
なお、アジサイは登録品種が結構多いから
勝手に誰かにあげたりしないように。
あくまでも、挿し木はご自分用として楽しんでください。
7:病気と害虫について
注意したい病気は、うどんこ病を筆頭に、
モザイク病、斑点病、炭そ病などのウイルス病。
うどんこ病を予防するには
込んだ枝葉を剪定して風通しをよくすることが大事です。
このほかに、
最近すごく流行っている病気が「緑化病」です。
アジサイの花が一番最初に咲いたときから
葉っぱと同じ緑色をしていたら要注意。
7月ぐらいになって、
ピンク色の花がいつのまにか緑色に変わっていたならば
正常な変化なので大丈夫ですが
6月ぐらいから緑色の株は、危ないですね。
しかも、「緑化病」にかかっている花を剪定して
そのまま同じハサミで隣の株の枝を切ると
その株も感染してしまうので注意しましょう。
「緑化病」で株が枯れる訳ではないんですが、
葉っぱも花も全部、緑色になってしまう上
1度かかったら治らないので
結構恐ろしい病気だと思います。
アジサイにつく害虫では、
カイガラムシ、アブラムシが多いですね。
カイガラムシは“移動できるタイプ”のカイガラムシ。
なかなか、厄介なので
見つけたらスプレー式殺虫剤を使って駆除しましょう。
Q&A
Q:買ってきたアジサイを庭に植えたら、ちがう色の花が咲きました。
どうしてでしょうか?
A:アジサイは、その家の土のpHや、
アルミニウムイオンに影響を受けて
色が変わってしまうのです。
なので、お店で咲いていた色と
変わることは結構、多いです。
アジサイは、その庭に適した色になる、
ということです。
言い換えれば、他の家にはない色になる、
ということなので
その色を楽しんでもらえたら、うれしいです。
Q:母の日にアジサイの鉢花をプレゼントでもらいました。
その後、どうしたら良いでしょうか。
A:最近、母の日のプレゼントとしてアジサイの人気が急上昇しています。
花が咲いている間は、よく見える場所、部屋の明るい場所に
しばらく置いておいたら良いと思いますよ。
それで、花が終わったら剪定して庭に植える、
または、ちょっと大きめの鉢に植え替えるのが理想ですね。
第47回目は、ハーブガーデンの作り方 についてお話しします。
6月26日ごろ投稿予定ですので、次回もお楽しみに!
投稿日:2024年6月12日