第19回すてきな春を招く!プリムラ
みなさん、こんにちは!
園芸研究家の矢澤秀成です。
じつは私、5歳か6歳の頃からずっと
プリムラを育てています。
色も形もすてきですが
とくに匂いが好きなんですよね。
親の転勤で茨城、静岡にも引っ越しましたが
その度、株ごと掘り上げて持って行ったものです。
その頃の株とは違いますが、今の自宅の庭にも
早春にはプリムラ・ブルガリス(原種)が咲きます。
色は、ピンク系です。
めずらしいでしょう?
毎年、一番に春を知らせてくれるプリムラ。
「軽井沢みたいに寒い場所で大丈夫かなぁ」って
ちょっと心配だったんですけどね。
真冬には雪で凍ってしまいますが、春にはちゃんと咲いてくれます。
寒さに強く、育てやすいところも魅力です。
ということで、
第19回は「プリムラ」について、お話します。
目次
1:プリムラについて
プリムラはサクラソウ科の
宿根草です(品種によっては1年草扱い)。
とても種類が多く、
世界には原種だけで500種類以上あります。
私の好きな「プリムラ・ブルガリス」は
ヨーロッパ原産の原種。
ヨーロッパで「プリムラ」というと「ブルガリス」なんですよね。
花の色は、黄色に近い、白っぽいクリーム色ですが
ウチのは、ピンク系なんですよ。
プリムラを代表する、メジャーな品種といえば
「プリムラ・ジュリアン」と「プリムラ・ポリアンサ」です。
寒さに強く、冬から春まで
長く楽しめるのが特長ですね。
その他、ブルガリスと似たような改良種
「アラカルト・シュシュ」、
銅葉が美しい「プリムラ・ジェシカ」、
別名「化粧桜」で知られる「プリムラ・マラコイデス」もありますね。
マラコイデスは粉を吹くので「化粧桜」と言われるんです。
あの粉でね、私は目の周りがかゆくなるので扱えないのですが
綺麗な品種ですよね。
その他、「プリムラ・オブコニカ」、
「プリムラ・デンティキュラータ」など。
草姿は、パラソル・タイプとアコーリス・タイプの
2種類に分かれます。
アコーリス・タイプは、
花1個1個の茎が根元から出ているタイプ。
10本花が咲くとしたら、根元から10本の茎が出ています。
パラソル・タイプは、太い茎が1本、5〜10cmぐらいグッと伸びて、
その茎の先に細かい花茎が出る形。
遠くから見ると、まるで傘を差したように見えるので
「パラソル」という名前がついたんですね。
最近は、パラソル・タイプの品種がめっきり減って、
ほとんどアコーリス・タイプになっています。
花の咲き方は、
バラ咲きもあればフリル咲き、リボン咲き、玉咲き、一重咲きもあり、
バリエーション豊かです。
色も、赤、ピンク、黄色、青、紫、白など
色数も多いです。
2:ポット苗を植え付けよう!
鉢植えにするならば
苗ポットよりも、ひとまわり大きな鉢に植え替えましょう。
植え替える時は、根鉢を崩さないように
ポットからポコッと抜いて、そのまま植えた方が良いです。
土は、一般的な培養土(市販の草花用)で大丈夫。
ひと周り大きいサイズとは
3寸苗の場合は、4号鉢または5号鉢ですね。
6号鉢にギリギリ3寸ポットで3苗が一杯一杯。
プリムラは3.5寸苗が多いので
6号鉢だと2ポットかな。
3年ぐらいかけて2倍ぐらいに芽が増えていきます。
露地に植える場合は、
まず、畑をよく耕してください。
肥料が入っていないようだったら
牛ふん堆肥と腐葉土を、
全体の土の、およそ20%ずつ
根元に入れます。
もしも、水はけが悪いようだったら
パーライトを10%ぐらい入れてあげましょう。
花壇以外の場所やしばらく使っていないカチカチの固い土になった花壇は、
最初に苦土石灰を入れましょう。
分量は1平方メートルあたり約200g。
私の大きな手ではひと握り、一般にはふた握りぐらいです。
苦土石灰を撒いて1週間後、堆肥を入れ2週間待って植え付けます。
なので、露路植えの場合は土の準備をお早めに。
株と株の間は15〜20cmぐらい
開けた方がいいでしょう。
その他、植え付け時の注意点は、
地際の成長点を埋めてしまうと腐っちゃうので
土をあまり高く上げないように、浅植えにすること。
植え付けたら、しっかりと水を与え、
植え付けから2週間ぐらい経ったら
化成肥料をパラパラと施します。
3:メンテナンス
比較的、寒さに強いので
雪は全然大丈夫ですが
寒風には、あたらないほうがいいかな。
冬は乾燥の方が怖いです。
冬の間、水をやらずに
乾燥した状態にする方が多いのですが
乾燥すると、葉っぱがぐしゃぐしゃになって
そのまま枯れてしまうことがあります。
なので、水やりだけはしっかりやってもらえたらと思います。
水の与え過ぎもいけないけれど
状態をよく見て、
葉っぱがピンとした状態になるように
育てていきましょう。
冬の間の水やりの目安は、5日に1回ぐらいです。
私は、あまり水をあげない主義なので
葉っぱが枯れるかどうか、
ギリギリくらいであげるんですね。
花がら摘みは
できるだけ下の方から
ハサミで切りましょう。
手で引っ張ると、
茎の芯の筋が残っちゃうので
ハサミを使ったほうがいいですよ。
アコーリス・タイプは、花芽と茎が
同じ部分に集中しているので、
よく見て、つぼみを切らないように
手で株元をわけながら
刃先で切るようにしましょう。
冬の間の追肥ですが、
軽井沢のような寒冷地だと、
プリムラはお休み中なので不要なんですけど、
あったかいところだと
花が咲いてくるんですよね。
岡山でも、暖かいところは春先に咲くと思うので
2か月に1回くらい
パラパラッと化成肥料を
まいておいたほうがいいと思います。
そして、プリムラは早春になると
花も咲くけど、葉っぱも出てきて
さらに動きが活発になります。
3月に入ったら、また施肥をしていただいたほうがいいですね。
そして、春になったら
3〜4日に1回のペースに
水やりの回数を増やしましょう。
4:夏越しさせて翌年も楽しみたい!
早春から5月頃までの花の季節は
太陽の光に当てたほうが良いです。
しかし、プリムラは、
気温が35度に上がるような場所では
夏越しできないので、
岡山の夏の暑さは、
ちょっと厳しいかもしれません。
そこで、プリムラを
来年も咲かせるために
花が終わったら、
しっかりマルチングする、または
涼しいところに株を移して
夏越しさせてあげましょう。
では、どんなところに移せば良いでしょうか。
夏の間に、翌年の花を咲かせるチカラを
しっかり蓄えておく必要があるので、
ある程度、光は必要なのですが、
一日中、夏の日差しが当たるのはキツイ。
ということで
理想は、風通しの良い半日陰。
半日くらい光が当たるところですね。
しかも、西日が当たらない
ということが絶対条件。
オススメは落葉樹の下。
鉢ごと土に埋めちゃうのが一番いいですよ。
水は、土が乾いたらたっぷりあげましょう。
乾燥気味で管理したいので
その場所の状況によりますが
私は真夏でも2日に1回かな。
よく乾いていたら、水をあげてください。
そして、彼岸花が咲く頃になったら
施肥をしましょう。
その際、鉢の中で根がパンパンに張っていたら
ひとまわり大きなサイズの鉢に植え替えたほうがいいですよ。
5:気をつけたい害虫病気対策
プリムラに寄ってくる害虫は、
アザミウマ、エカキムシ、カタツムリ、コナジラミ、
ネキリムシ、ヨトウムシなど。
中でも、最も気をつけたいのはナメクジです。
ナメクジ予防には、コーヒーかすが利用できます。
プリムラの株をぐるりと囲むように
乾燥させたコーヒーかすを広げておけば
天然の防虫剤がわりになって、ナメクジを寄せ付けませんよ。
それでも、ナメクジを見つけてしまったら
ナメクジ対策用の薬剤散布を。
気をつけたい病気は、
モザイク病、軟腐病、褐斑病、
立枯病、灰色かび病、斑点病など。
よく見るのは、軟腐病ですね。
軟腐が出る原因は大概の場合、肥料の与え過ぎです。
肥料を少なめにするのと同時に、
普段から葉っぱのウラ側をしっかり見るようにして
害虫や病気の害の早期発見に努めましょう。
Q&A
Q:寄せ植えでは、どんなことに気をつけたら良いですか?
A:他の植物の葉っぱでプリムラが
日陰にならないように気をつけましょう。
プリムラの多くの品種は背が高くならないので
同じような背丈のアリッサムなどと
一緒に植えると良いと思います。
または、プリムラは、こんもりとした感じで横に広がるので
一番後ろに背の高い植物を植えて
手前にプリムラを植えても良いでしょう。
Q:花付きが悪いのですが、どうすれば良いですか?
A:シーズンの終わり頃は、どうしても花付きが悪くなりますが、
シーズン途中なのに花付きが悪いという場合は、
肥料が切れているのかもしれません。
または、花の部分にカビができてしまい、
その影響で、つぼみを枯らしているのかもしれません。
冬場でも、蒸れるとカビが出るんですよね。
とくに、つぼみの部分は水が溜まりやすい構造になっています。
そこから水が入ってカビが出るというパターンは多いです。
もしもカビを見つけたらスプレー式の殺菌剤などを散布して、
殺菌してください。
また、乾燥気味に管理するようにしましょう。
風通しの良い場所に移すことも考えてください。
たとえば、屋内の窓辺でプリムラを育てている方は
非常にカビが出やすいので注意が必要です。
カビが出ると、軟腐病に進行してしまうので
屋内で育てる場合は室温を低めに設定し、
カビや病気の出る確率を下げるようにしましょう。
Q:葉っぱに茶色い斑点が出ました。どうすれば良いでしょう?
A:原因は、細菌による病気が考えられますね。
斑点が出てしまった葉っぱは、もう元には戻らないし、
他の葉にも伝染する可能性が大です。
なので、まず、斑点の出た葉っぱはカットしましょう。
同時に、ベニカなどのスプレー式殺菌剤を散布し、
これ以上の被害を食い止めましょう。
細菌は葉のウラ側から入っていくものなので
葉のウラにもしっかり殺菌剤をかけてくださいね。
投稿日:2023年1月11日