第20回とっても、おいしい!春植えジャガイモ
みなさん、こんにちは!
園芸研究家の矢澤秀成です。
昨年の秋に「秋ジャガ」をご紹介したのですが、
みなさん、おいしい秋ジャガを収穫できたでしょうか?
大満足の方も、そうでない方も、
次は「春植えジャガイモ」に挑戦してみませんか?
「春植えジャガイモ」は皮が薄いので
とっても、おいしいですよ。
しかも、管理しやすく、
家庭菜園の初心者にもオススメです。
ということで、
第20回は「春植えジャガイモ」について、お話します。
目次
1:春植えジャガイモの品種
春植えと秋植えでは、
どこがどう違うのでしょうか。
一番の違いは、品種です。
ジャガイモって、暑さがあまり好きじゃないんです。
でも、秋植えの場合、まだ残暑が厳しい
9月に植えるじゃないですか。
だから、どうしても暑さに強い品種に限られてしまいます。
その点、春植えの植え付け時期は2月中旬から3月上旬。
植えてから90日が収穫の目安なので
梅雨前には収穫できます。
暑さの苦手な品種でも春植えなら大丈夫。
そんな、春植えジャガイモの代表的品種といえば、
筆頭は「男爵」です。
「男爵」の新ジャガでつくるポテトサラダは絶品ですよね!
2番目は、ジャガイモ界で最も有名な「メークイン」。
型崩れしないので、
煮物やポテトスティック、ポテトチップも美味です。
3番目は
赤い色が特徴のアンデスレッド系。
比較的、煮崩れしにくいので何にでも使えますね。
私は毎年、「デストロイヤー(グラウンドペチカ」」という品種を
数え切れないくらい、たくさん栽培します。
理由は「デストロイヤー」のポテトチップが最高だから!!!!!
スライスして素揚げにするだけで
すっごく、おいしいですよ。お塩控えめが矢澤流です。
そのほか、「キタアカリ」も人気のある品種です。
栗のようにほっこりした食感から別名「くりいも」と呼ばれています。
ビタミンCたっぷり、栄養満点のジャガイモです。
2:種イモを準備しよう!
秋植えのジャガイモは、
種イモ丸ごと1個につき1株として植えましたが
春植えは、種イモをカットしても全然平気なんです。
つまり、1個の種イモが、3個に切れば3株に増える訳ですから
春植えのほうが、少量の種イモで
たくさんの株を育てることができます。
種イモはホームセンターの店頭で手に入ります。
パンパンに張って、かたいものが良いです。
品質のお墨付きとして
「検査済証」の印が押してありますよ。
購入した種イモは、
小さいイモの場合は2つ、中くらいは4つ、
大きいのは6つくらいにカットします。
その前に、
芽が出ていない種イモについては
雨が当たらず程よい日差しが当たる場所に置いて
芽を出させてからカットした方が切りやすいと思います。
その際、イモの「ヘソ」に注目してください。
(ヘソ=木につながっている部分)
凹んだところが「ヘソ」です。
「ヘソ」からは芽が出てこないので、
この部分を中心に、
芽出しの芽を含めるようにして切っていきましょう。
次に、私は切り口の断面に草木灰を塗ります。
最近はイモ用「傷口保護剤」という便利な商品も売ってあります。
これを塗ったあと、切り口の面が下側になるように
(芽が上を向くように)植え付けます。
では、いつ植えれば良いでしょうか?
暖かい地区では2月下旬から植え付け可能です。
2〜3月にしっかり根を張り、葉っぱを広げ、
4〜5月にイモを大きくします。
3:種イモを植え付けよう!
プランターで栽培したい場合は、
秋植えと同様に、
菜園用プランター(長さ65cm・土の量は30リットルくらい)に
野菜用の培養土を入れて準備します。
元肥は、化成肥料で大丈夫。
パッケージの裏側の注意書きをよく読んで
土の中にしっかり混ぜ込んでおきましょう。
菜園用プランター1つにつき、
種イモ1個程度が適当だと思います。
植えた種イモの上に
10cmぐらい土をかければ良いでしょう。
植え付けたらたっぷり水をあげますが、
それ以後は、芽の状態をよく見て、
しおれてなければ水をあげなくてもいいです。
水をかけ過ぎて腐らせないようにしましょう。
ちなみに、畑やプランターがなくても
袋で育てるジャガイモ用の培養土「ポテトバッグ」
という商品もありますよ。
一方、露地栽培(畑)する場合は、土の中に堆肥を多めに入れましょう。
できれば、ナス科以外のものを作っていた場所がいいですね。
もし、ナス科の野菜を育てていた場所でジャガイモを育てるというならば、
苦土石灰で土壌改良するという方法しかありません。
植え付けの2週間前までに
腐葉土を2割、牛ふん堆肥も2割ぐらい、
と堆肥を多めに入れて、
苦土石灰も1㎡あたり50gぐらい入れてしっかり混ぜてから
2週間ぐらい経って落ち着いたら畝をつくって植えましょう。
水はけの良い場所なら畝がなくても栽培できますが、
通常10cm〜15cmぐらいの高さに畝立てして
植え付け、10cmぐらい土をかけます。
株間は、30〜40cmぐらい。
種イモを植えたら、たっぷり水をまいてください。
よっぽど雨が降らない乾燥状態でない限り、
植え付け時以外は水をまかなくていいと思いますよ。
ただし、土の表面が乾いたらたっぷり水をあげてください。
2〜3月の寒い時期なので
路地(畑)の場合、できれば黒マルチ(穴ナシ)をかぶせましょう。
3月下旬頃になると、イモの芽が伸びて
ビニール表面にぶつかってきます。そうしたら
穴を開けて、芽を外の空気にさらしてあげてください。
その後、1週間もすると立派な葉っぱが
ぐんと伸びてきます。
私は、この方法で栽培しています。
なお、芽が出た後、マルチをカットしてあげないと
暑さで種イモが腐るので注意しましょう。
また、すべての芽が同じ
タイミングで芽が出る訳ではないので
畑に行ってはチェックし、
ビニールにぶつかっていたら順次、
ビニールを切るようにします。その際、
芽を切らないように気をつけてください。
4:芽かき(間引き)で収穫量を増やす!
1個の種イモからたくさんの芽が出ますが
全部の芽を大きくすると栄養が分散してしまうので
小さなジャガイモしか収穫できなくなります。
だから、不要な芽を間引いて必要な芽だけを残す
「芽かき」は、とっても重要な作業なんですね。
風通しを良くするためにも、
芽が密集しているところから整理してあげてください。
弱そうな芽や、ヒョロヒョロした芽を取り除き、
芽が2〜3本集中して出てきているところは1本に絞ります。
秋植えとの違いは、芽の成長スピード。
2〜3月の間は、そんなに成長しませんが
気温とともにだんだんスピードアップし、
4月後半からの芽の動きは速いです。
1週間も様子を見に行かないと、かなり大きくなっています。
いつの間にか花が咲いちゃうことも。
そのため、暖かくなったら頻繁に様子を見に行き
「芽かき」を行うようにしましょう。
「芽かき」をして、栄養を集中させた方が
いいイモが穫れますし、味も良いです。
5:土寄せと追肥
「ジャガイモ栽培中は、しっかり土寄せしましょう」と言われるのは、
イモが土から出て太陽に当たると緑色になるからです。
私は、種イモを植え付ける最初から
深植えするので、そんなに土寄せしません。
10cmも土をかけていれば
イモが表面に出てくることはありません。
雨が降れば畝が崩れることもあるので、
そういう時は、土寄せプラス畝の再生をしています。
また、追肥は、やらないですね。
植え付け時に化成肥料をまいたら、
そのまま3か月間もたせます。
最初に、元肥をたくさん入れましょう。
「土寄せごとに追肥をする」というやり方もあるそうですが
私は、肥料が効き過ぎて花が咲いたり、腐ったりする方が怖いな。
とくに、黒ぼく系の土の場合、肥料をやり過ぎると
イモが溶けてしまうんですよね。
なので、私は肥料をあまりあげないようにしています。
6:葉っぱが黄色くなったら収穫のサイン
春植えジャガイモは、およそ90日で収穫できるので、
2月下旬から3月頭頃に植えると、
収穫時期は梅雨前か、梅雨が始まった頃になります。
では、収穫日をどうやって決めるかというと
植えた日から計算して90日頃に
葉っぱの様子を見て、
黄色くなっていたらできるだけ土の乾いている時に
掘ってみて決めます。
雨の日に掘ると、
そのあとイモが腐ることが多いので、
土が乾いている時に掘った方がいいです。
また、ジャガイモは、暑さが得意ではないので
あんまり暑くなると生育スピードがゆっくりになってしまいます。
その状態で肥大するのを待ち過ぎると、
時期がきたら、さっさと収穫しましょうね。
春植えのジャガイモは皮が薄いぶん
腐りやすいので早めに収穫した方がいいですよ。
収穫後は日に当てないように冷暗所へ。
少し置いておくとウマくなりますよ。
7:気をつけたい害虫と病気対策
葉っぱを日に透かして見るとマダラになっていたり
葉っぱがねじれていたり、葉っぱの一部が黒く溶けていたり、
そういう症状を見かけたらウイルスに感染している可能性があります。
ウイルスの場合は、他に感染させる前に処分した方がいいと思いますね。
もう、その株はあきらめて抜いて、
根っこも取り除く。できるだけ丸ごと全体を抜いて
燃えるゴミに捨てた方がいいと思います。
根が残っていると、次に他の植物を植えた時に
症状が出ることがあるんです。
どういう感染システムなのか分からないんですけど、
葉っぱ、茎、根っこ、イモ、
全部しっかり取り除いた方がいいでしょう。
ジャガイモの代表的な病気といえば「そうか病」です。
土が、アルカリ性に傾くと出やすくなると言われています。
土作りの際に苦土石灰は必要だと思いますが
やり過ぎに注意してほしいんですよね。
苦土石灰を入れて、さらに鶏糞を加えると
アルカリが強くなっちゃうので
鶏糞のやり過ぎにも注意してください。
ジャガイモに適した土は、弱酸性です。
アルカリに寄らないように注意しましょうね。
そして、ジャガイモ栽培で気をつけたい害虫といえば、
アブラムシとハダニです。
寒い間は、あまり発生しませんが
暖かくなってきたら、だんだん出てくるんですよね。
アブラムシとハダニを見つけたら
早めに薬剤散布しましょう。
薬剤を使いたくない方は、
自然農薬のアイデアを取り入れてみては、いかがでしょうか。
ダニは水で洗い流せばある程度、発生を抑えられます。
アブラムシは、牛乳をかけて脂肪成分で固めてしまえば
除去できますよ。
Q&A
Q:ジャガイモと一緒に植えたら良いコンパニオンプランツには、どんな植物がありますか?
A:私は以前、ジャガイモのコンパニオンプランツとして麦を植えたことがあります。
ジャガイモの隣に麦を植えておくと、アブラムシと、アブラムシを追ってきたテントウムシが麦の方にみ〜んな移ってしまうんです。
確かに、麦はアブラムシだらけになっちゃうので成育途中で抜き取り、焼いてしまうしかないんですけどね。
麦以外では、ネギ類(ニンニク、ネギ、ニラ)がおすすめです。
ソラマメ、エンドウなどのマメ類も良いです。
Q:芽かきの際、誤って種イモごと抜いてしまいました。このまま埋めていい?
A:はい。そのまま埋めていただいて大丈夫です。
芽かきをする時に力いっぱい引っ張ったら株ごと抜けちゃった、
ということでしょうね。
芽かきをする時は、茎を持った手と別のほうの手で
地面を押さえながら抜くか、
茎を持ってコキコキと左右に動かしてからじんわり抜いてみてください。
Q:花が咲きました。放置していても良いですか?
A:花が咲いたら切っちゃう、という方もいらっしゃいますけど、
私は花を鑑賞したいと思うんですよね。
「これ、交配に使えないかな」と思うこともありますが(笑)。
しかも、私が毎年、育てる「デストロイヤー」の花色って、
普通とは違う赤紫色なんですよ。
近所の方が見に来られるくらい、きれいですよ。
Q:収穫したら、実の皮が褐色になっていました。
A:赤系の品種の場合、褐色の実ができることがありますが、
もしも、見るからにおいしくなさそうな場合は、
ウイルスの可能性があります。
ウイルスが原因だったら、全体に感染しているかもしれないので
私なら、全部捨てますね。おいしくないと思いますよ。
もし、このようなウイルスの可能性のある症状が出たら、
株ごと全部抜き取って、土壌に薬剤灌注した方がいいでしょう。
Q:収穫したら、実に空洞ができていました。食べられますか?
A:いわゆる、すがはいった状態ですね。
その部分を除けば食べられます。
う〜ん、でも、おいしくないですよね(笑)。
カレーか何か、味の濃い料理に入れた方がいいでしょうね。
すがはいる原因は、いくつか考えられます。
収穫後、イモの保存環境が悪いと水分が抜けてしまって
中に空洞ができることがあります。
また、実が大きく成長する時のスピードが速過ぎて、
すがはいることも。
大きいイモほど、すがはいるでしょう?
なので、肥料のやり過ぎにも注意しましょう。
それ以外にも、収穫期を逃しちゃうと出やすいんですよね。
投稿日:2023年2月8日