第16回花咲く春を夢みるしあわせ♪ 秋植え球根
第16回 花咲く春を夢みるしあわせ♪ 秋植え球根
みなさん、こんにちは!
園芸研究家の矢澤秀成です。
秋植え球根の植えつけ時期がやってきました。
秋植え球根の場合、
芽が出るまで通常3〜4か月、
長いものでは5か月くらいかかります。
まるで、タイムカプセルみたいですよね。
ガーデンラインをイメージして植えた球根が
冬を越え、やがて春に芽吹き、開花するなんて
半年前の夢がかなうわけですから、
その瞬間を待つ間、ずっと楽しみは続きます。
芽が出ただけでも
「あと、ちょっとで春がくる」って感動しますよ。
ということで、
第16回は「秋植え球根」をご紹介するのですが
球根には実にいろんな種類があり
それぞれ植え方や育て方も違います。
そこで今回は、チューリップとムスカリを中心にお話しますね。
目次
1:秋植え球根いろいろ
秋植え球根といえば
「チューリップ」が圧倒的にメジャーですが
ユリ、スイセン、ヒアシンス、クロッカス、アリウムなど
美しい花が多いんですよね。
ブルーがキレイな「ムスカリ」も素敵ですね。
ちなみに球根には、実にいろんな種類があるとお伝えしましたが
豆知識として、知っておきたいのは
球根の種類には、「鱗茎(りんけい)」「球茎(きゅうけい)」「塊茎(かいけい)」「根茎(こんけい)」「塊根(かいこん)」の5タイプがあるということ。
チューリップやヒアシンスは、
タマネギのようにうろこ状に茎が重なり合っている鱗茎に分類されます。
クロッカスやフリージアは球茎、
ラナンキュラスは、肥大した根が塊状になる塊根です。
また、球根の生育サイクルには3パターンあり、
春植え球根・夏植え球根・秋植え球根があることも覚えておいてくださいね。
ちなみに、私がオススメしたい秋植え球根は「ヒアシンソイデス」!
(ひと昔前はシラー属に分類されていました。)
ほったらかしでも毎年、花が咲くから
初心者さんにも育てやすいですよ。
それからヒアシンス! 香りがいいんですよね。
海外では、ヒアシンスはとってもメジャーな植物なんですよ。
私は毎年200球ぐらい植えています。
2:いい球根の選び方
球根の中には、水分や栄養がたくさん含まれています。
生育しやすい環境が整うまで
休眠する機能を持っていることも球根の特長です。
そのため、一般的には大きくて、
手に持ってみて重たい球根を選んだほうが
水分や栄養をたっぷり含んでいるので
育てやすいということになります。
表面に傷やカビが付いていないもの、
張りのあるものを選ぶことも大切です。
中でもチューリップの場合は
まず、なるべく大きな球根を選ぶようにしましょう。
特に初心者さんはサイズ表示を見て、
11とか、12プラス、13あたりが大きめなので
(大球とか巨大球と言われます)
それを買って植えたほうがいいですよ。
また、赤・白・黄色・混合(ミックス)とかね、
色で選ぶ方が多いんですが、
品種や名前で選ぶのも楽しみのひとつです。
実はチューリップって、ひとつの品種を生み出すのに
最低12年かかるんです。
長いものだと20年くらいかかっちゃう。
人間の知恵と技術が生み出した芸術品なんですよね。
だから、名前にも
育種家の熱い想いが込められています。
富山や新潟を中心に
日本の育種家さんたちも頑張っていて
近年、和名の球根が出回っているんです。
私が今年、富山の育種家さんから直買したのは「なごり雪」
という名のチューリップ。
星咲きの八重咲きなんです。すごくキレイですよね。
3:秋植え球根を植えよう!
秋植え球根には「低温欲求」があるので、
必ず最低2か月以上、寒さにあててあげないと
花が咲かなかったり、小さくなったりするんです。
だから、11月末ぐらいまでには植え込んで、
3か月くらいは寒さにあててあげてください。
すると、しっかり根が張って、
大きな花が咲いてくれますよ。
ここで、球根を植え付ける際に気をつけたいのは
品種によって植え付ける「深さ」や「間隔」が違うこと。
よく調べて、その球根にあった植え方をしてくださいね。
たとえば、チューリップやヒアシンスは、球根2個分の深さ。
クロッカスは深植え、ユリはもっと深植えです。
そういえば、クロッカスは浅植えだという方が多いのですが
実は、深植えなんですよね。
クロッカスは、球根のナナメ上に球根を作るので
どんどん上がってくるから、
ある程度、深植えしておかないと球根が見えてきちゃうんです。
これって、意外と知られていないみたいですね。
[土・肥料・水について]
球根が好む土は
水はけがよくて水持ちもいい土です。
プランターで育成する場合、
球根用の培養土や肥料もありますが、
通常の「花と野菜の培養土」で十分キレイに咲くと思います。
路地の場合も、水はけの良い土がいいですね。
毎年、何かを植えている庭や花壇ならば
軽く苦土石灰をまいて土壌を改良したあと、
堆肥を入れて土をよく耕し、
ふかふかにしておきましょう。
肥料についてですが、
私は草花類の場合、通常、植え付けて2週間後に肥料を与えるのですが
球根類については、植え付けて1週間ぐらいしたら
細かい根が出はじめるので
あらかじめ土に混ぜちゃっています。
化成肥料でもいいし、動物性堆肥でも構いません。
球根は、球根の中に肥料を蓄えているので、
もしも肥料をやり忘れても咲いてくれることが多いですよ。
そういう意味では
球根って初心者向きですよね。
水は、乾燥したらしっかりあげるのが基本。
問題は、つい忘れてしまいがちなこと。
乾燥し過ぎるとよくないので
球根の上に、ビオラなどの花苗か、浅植えの球根を
植えておくと水加減がわかっていいですよ。
プランターの場合は、
日当たりのいい場所に置いてください。
寒さにガンガンあててもらって大丈夫です。
追肥を与えるとすれば3月上旬ですね。
3月下旬に肥料をまくと、来年用の球根が腐るんですよね。
球根が溶けちゃうこともありますね。
だから、追肥は花が咲く1か月以上前の、
3月上旬までにやっておくこと。
そうすると腐りにくくなるし、
新しい球根が出てくる頃に肥料が切れて、ちょうどいいです。
肥料は、緩効性化成肥料で大丈夫ですよ。
[チューリップ]
チューリップは、クリスマスまでに植えれば大丈夫でしょう。
植え付けるときには、球根2個分の深さの土がのるようにしましょう。
ただし、岡山でも山沿いなど寒い地域では
球根3個分くらい土をかけてあげたほうがいいです。
なぜなら、霜が降りるような寒いところでは
霜のチカラでだんだん球根が地中から上がってきて、
やがて地上に顔を出してしまう
「霜上がり」という現象が起きることがあるから。
霜柱が立つようなところでは球根3個分、
それ以外の暖地は球根2個分と覚えておいてください。
それから、チューリップの球根には
「腹」と「尻」があるのをご存知でしょうか。
「腹」は平らなほう。
丸いほうが「尻」です。
プランターでも、花壇でも
チューリップを植え込む時には、
人から見える方向に尻を向けないように、
見る側の方に腹を向けて植え付けましょう。
そうすると、花が見やすい状態になります。
それから、チューリップは皮をむいたほうがいいと思います。
なぜかというと、
球根が咲かない原因の多くが
球根外側の茶色い皮と、内側の白い皮の間に
水が入ってしまったことで発生する「青カビ」だからです。
だけど、最初から皮をむいておけば
水が皮の間に入り込んで腐ることを防げます。
大変かもしれないけれど
100球ぐらいだったらむいたほうがいいと思います。
品種によって皮が硬いのと柔らかいのがあるんだけど
硬い場合は甘栗みたいに指で軽くパキッと押さえて、
横をあけるとスグ取れます。
あんまり強すぎると球根がつぶれるので気をつけてね。
3_B[ムスカリ]
ムスカリは、9〜10月頃から販売されていますけど
できれば11月に植えたほうがいいです。
早く植えてしまうと葉っぱだけがびよ〜んと伸びてしまって、
花が小さくなってしまうからです。
11月に植えると葉っぱが松葉のように立つんです。
その状態で冬を越したほうが
春の花が見事になりますよ。
ムスカリの球根を埋める深さは、球根1個分くらい。
植え付けの幅(球根と球根の間の距離)は
10〜15cmが標準的な植え方ですが
私は10cmよりやや狭い7〜8cmぐらいにします。
そうすると、花が咲いた時に
ムスカリのブルーが引き立ってキレイだと思います。
ムスカリは、路地でもプランターでも大丈夫だし、
そんなに深さはいらないです。
たくさん植えたいなら大きなプランターで
密植したほうがキレイな仕上がりになります。
目安としては
5号鉢に6〜8球くらい入れるとキレイですよ。
気をつけたいのは、冬の霜。
霜にあたるのは大丈夫なのですが、
ムスカリは浅植えにしているので
霜柱が立つようなところでは
霜によって球根が地上に押し上げられる危険があります。
これを防ぐため、球根の上に腐葉土などで
マルチングしておくと
霜が立ちにくくなるので、オススメです。
4:寄せ植えで水加減をわかりやすく
球根単体で植えると水加減がわからないので
ビオラやアリッサムなど、
冬に咲く花を一緒に植えておく
「ダブルデッカー」という方法で寄せ植えするといいと思います。
2種類の球根を上下2段階で植える
「ハイデッカー」という方法もあります。
たとえば、チューリップの上に
ムスカリを植えるとかね。
こうすると、ムスカリが先に咲いて満開になった頃に
チューリップが上がってくるんですよ。
花のリレーができます。
しかも、ブルーの背景に
赤とか、白とか、黄色のチューリップが咲くからキレイなんです。
長く楽しめる、という利点もありますよ。
5:球根を夏越しさせて翌年も咲かせよう
球根をたった1回咲かせただけで掘り上げて
捨てちゃう方がいらっしゃるんですけど、
ウチには、9年目のチューリップとかね、
植えっぱなしの状態にした球根がありますよ。
ユリも、クロッカスも植えっぱなしでいいです。
ムスカリだけは6月上旬くらいに掘り上げます。
捨てるのではなく、日陰干ししておくんです。
そして、また11月に植えます。
植えっぱなしだと花がちっちゃくなっちゃうんで
ムスカリを来年も咲かせたかったら掘り上げて干してください。
ただし、チューリップについては、
岡山の場合、夏の暑さを越えられずに
消えてしまう品種が多いと思います。
なので、夏越しさせたい場合は、
12プラスなど大きめの球根を選んで植えてみて。
夏越しできる可能性は高くなると思います。
それ以外の方法としては、
周囲の草を抜かずに草ボウボウにしておくことかな。
あんまり美しくないですけどね(笑)。
草があることで地温が下がり、球根を守ってくれます。
私は最近、草が伸び始めたら上だけカットして、
根っこは残し、カットした葉っぱを
マルチがわりに被せておくという自然農法的なやり方に挑戦していますよ。
6:気をつけたい病気
病気は、どの球根も「フザリウム」が多いですね。
フザリウムはカビの一種です。
これにかかると球根がやがてドロドロになって、
最後は石みたいにカチカチになります。
しかも球根が軽くなって、スカスカになるんですが
球根は地中にあるため、なかなか気づけないんですよね。
なので、なりにくい環境を作ってあげるしかない。
すなわち、水はけを良くして、水をあげすぎないこと。
プランターの場合は、
底面吸水プランターなどを活用し、
下から水が抜けるようにしましょう。
7:気をつけたい害虫
害虫では「アブラムシ」被害が多いですね。
ツボミの頃からついてきます。
その年の気候が例年より暖かい場合は気をつけましょう。
あとは、ツボミの頃から
「アザミウマ」が花の中に入り込んでいることがあります。
どちらも見つけたらスプレータイプの殺虫剤を使って
すみやかに駆除してくださいね
Q&A
Q:花が終わったあとに球根を大きくするには、どうしたらいいですか?
A:たとえば、チューリップならば
花茎と葉っぱを残して、一番上のタネザヤをポキッと折りましょう。
そして、花茎を切らずに枯れるまでそのまんまにします。
花茎を残したほうが球根は肥ります。
花を家に飾る場合は花茎を切ってしまうと思いますが、
茎をちょっと短めに切る、
球根を残す株だけは花茎と葉っぱを残しておくなど工夫してみてください。
気をつけたいのは、球根を大きくしようと思って
花が咲いた後に肥料をあげないこと。
遅い時期に肥料をあげると腐っちゃうんですよね。
たまに、本やインターネットの記事に
「最後にお礼肥えをやりましょう」と間違ったことが書いてあるんですが、
最後の肥料は3月上旬までにしましょう。
Q:毎年、ヒアシンスを「水栽培」しています。
土に植えるのと、どちらがいいですか?
A:ヒアシンスのほかに、クロッカスも、チューリップも
水栽培できるんですけどね、根が弱くなってしまうし、
花もちっちゃくなってしまうんです。
しかも、水栽培だと翌年の球根ができにくいし、
次の年に花が咲いたとしても貧弱になっちゃうんだよね。
だから、できれば、植木鉢でも花壇でもいいので、
球根は地面に植えてあげたほうがいいな、と僕は思います。
室内で育てたいから水栽培しているという方は、
ラウンドの鉢に土を入れてね、
ヒアシンスの球根の下部を1cmぐらい埋めて、
球根がほとんど見えたような状態で植えつけてみて。
かなりキレイに咲きますよ。
土の部分に水苔を貼るといいね。
外国の方の多くは、そういう育て方をされていますね。
あ、日本の矢澤さんもやっています(笑)。
2月下旬くらいまで屋外にほったらかして置いたほうがいいです。
3月になったら室内に入れてね。
窓辺に置いておけば、いい花が咲いてくれます。
とにかく香りがいいんだよね。
ぜひ、やってみてください!
Q:球根は消毒したほうがいいですか?
A:ホームセンターの店頭に並んでいる球根は、出荷時に殺菌されています。
だから通常、売り場で買えば心配ありませんが、
もしも、青っぽいものが付いていたり、触るとベタベタしたりするなど、
気になるようだったらベンレート水和剤という殺菌剤を使うといいでしょう。
バケツに水とベンレートの粉末を入れて希釈液を作り(パッケージに書いてある用法に従ってください)、
そこにザブンと漬けておくだけです。
予防にも使えますよ。
私は、球根を輸入した際、ベンレートを使うことがありますね。
投稿日:2022年11月9日