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育種家として第一線で活躍する
矢澤秀成さんによる園芸の旬な情報をお届け

第14回春までずっと楽しめる!パンジー・ビオラ

第14回 春までずっと楽しめる!パンジー・ビオラ

みなさん、こんにちは!

園芸研究家の矢澤秀成です。

 

ようやく秋らしくなって

屋外での園芸作業が気持ちいいですね。

さぁ、そろそろ来年の春に向けて

花だんの準備を始めましょう!

 

花の少ない冬場に欠かせない花といえば

パンジーとビオラです。

 

とにかく、花がかれんできれいですよね。

しかも、色数が多く、カタチも大きさもいろいろあるから

花だんでも寄せ植えでも大活躍。

 

私は、パンジーとビオラの育種を手がけて、

もう17年になりますが

ずっと飽きないんです。大好きな花です。

種苗会社に勤めていた頃には

ビオラ審査会の審査も担当していたんですよ。

 

ということで、第14回は、

「パンジー」と「ビオラ」のお話です。

 

比較的、育てやすいので

ビギナーさんにもオススメですよ。

 

 

1:ビオラとパンジーは、どうちがうの?

パンジーもビオラもスミレ科の1年草です。

 

原産地はヨーロッパ。

晩秋から初夏にかけて、半年以上もの間、

次々と花を咲かせてくれるので

花だんを彩る代表的な花と言っていいでしょう。

 

5年くらい前までは、花の大きさによって

パンジーとビオラを区別していました。

5cm以上はパンジー、

5cm以下はビオラと呼んでいたんですが

今はね、交配が進んで

大きさだけでは区別がつかないんです。

 

小さくてもパンジーの場合もあるし、

大きくてもビオラの場合もあります。

メーカーの判断にゆだねられているので

ラベルをよく見て購入してくださいね。

 

 

2:品種の選び方

たくさん花が咲く小輪パンジー

「わらく」「ナチュレ」「よく咲くスミレ」

 

花色がかわいい中輪パンジー

「虹色スミレ」

 

フリンジがかわいい小輪パンジー

「夢見るパンジー」

 

フリンジが豪華な大輪パンジー

「絵になるスミレ」など

 

品種の数は、星の数ほどと言っていいくらいたくさんあります。

 

花びらがフリルみたいだったり、

丸くてかわいかったり、

うさぎの耳のように見える「うさ耳ビオラ」もありますよ。

 

花の大きさも大輪から小輪まで幅広い。

 

タテに伸びるものは寄せ植えやプランターに。

ヨコに張って伸びる品種は

広い庭を覆いたい時に使いやすいし、

ハンギング用プランターにも使えます。

壁掛けプランター
ハンギング用プランター

本当にいろいろあるので、

品種の特徴をしっかり頭に入れて、

どんな用途で使いたいのか考えながら

選んだ方がいいと思います。

 

 

3:ベストシーズン10月に苗を植えよう

最近、パンジー・ビオラを

9月頃から販売している業者を見かけます。

でもね、パンジー・ビオラって実は、

暑さが苦手なので、気温の高い時期に植えると

高温障害(ヒートショック)で

生育が止まっちゃうことがあるんです。

変に徒長して、ボサーッとした形に

伸びてしまうこともあります。

 

なので、パンジー・ビオラの苗を

購入するなら涼しくなった10月中旬以降がおすすめ。

苗ポットの根の状態を確認して購入し、

ひと晩ぐらい水(5cmぐらいの深さ)につけたあと、

花だんに植える、あるいは、

パンジー・ビオラは大きくなると

1株の直径が25cm〜30cmくらいに成長しますので

そのことを考えて、鉢やプランターを選ぶといいですよ。

 

 

4:パンジー・ビオラに適した土

どんな土がパンジー・ビオラに適しているかというと

ズバリ、水はけが良くて保水力がある土。

また、パンジーもビオラも「多肥」を好む植物なので

培養土を利用する場合は

元肥が多めに入っている

「パンジー・ビオラ専用培養土」が便利でおすすめです。

 

一般的な培養土で育てる場合は、

元肥がどれくらい入っているかを確かめて。

生育の様子を見ながら

「肥料が足りない」と思ったら

早めに追肥を与えるといいですよ。

 

さらに、中級者さん以上で

培養土を使わず、

「自分で土をブレンドしたい」という方は、

赤玉50%・腐葉土20%・ココピート20%・パーライト10%

この割合をめやすにブレンドしてみてください。

ホームセンタータイムオリジナル培養土

 

 

5:冬越しのポイント

パンジーもビオラも、日当たりの良いところが大好き。

そして、基本的に寒さには強い植物です。

ただし、寒風に当たると葉が枯れることがあるので

県北の寒冷地域や、マンションの高層階で育てる場合は

気をつけてください。

 

そして、霜にも、雪にも強く、

マイナス10度以下にならなければ

カチカチになっていても元に戻ります。

雪が降ったあとも、いったんペチャッてつぶれるんですが、

1週間たてばふわっと戻ります。

ただし、1回凍ると、なかなか溶けないので

県北などの寒冷地域では不織布のカバーをかけて

なるべく凍らないようにしましょう。

 

水は、土の表面が乾き始めたらたっぷり与えてください。

注意したいのは、土が凍る期間の水やり。

日中でも寒い地域では、夕方に水やりすると

夜間に水が凍ってしまうことがあるから

午前中の温かい時間帯に水やりしましょう。

 

肥料は、2か月に1回くらいのペースで

定期的な追肥が必要です。

粒状の緩効性肥料を使うといいですよ。

東日本では1〜2月の間、生育が止まっちゃうのですが

岡山のように暖かい地域では

冬期でも生育するので

肥料を忘れずに。

 

肥料切れを起こすと徒長が始まり

ひょろひょろっと茎が長くなってしまいます。

ゴールデンウィーク頃まで

きれいに花を咲かせたいんだったら

花が咲いてる限りは肥料を継続した方がいいでしょう。

植物用緩効性化成肥料

 

6:秋のうちに摘芯して芽数を増やそう!

パンジーもビオラも11月頃になると、

タテ型の苗は上に、横型は横に

茎がちょっと伸びてきます。

 

このとき、先端をソフトピンチすると

芽数が増えて株にボリュームが出ます。

花もたくさん咲くのでとてもきれいに仕上がりますよ。

 

 

厳寒期やまだ肌寒い3月頃にバサッと切ると

分枝しないで枯れてしまうことが多いので

摘芯するなら年内がオススメ。

 

たくさん花を咲かせたいなら

秋のうちの摘芯で

芽数を増やしておきましょう。

 

 

7:高低差を上手に利用して寄せ植えしよう!

パンジー・ビオラは比較的、育てやすいので

はじめて寄せ植えに挑戦する人にもオススメの植物です。

アリッサムやカレンデュラ(キンセンカ)など

パンジー・ビオラと開花時期が同じ草花を合わせたり、

葉ぼたんなど色合いが美しく育てやすい植物と組み合わせたりして

寄せ植えを楽しんでみませんか。

たとえば、背の高い葉ぼたんを使い、

後ろ側に葉ぼたんを植えて

手前にビオラやアリッサムを植えるとかね。

 

そういう高低差を上手に使うと

きれいな寄せ植えができますよ。

 

ちょっと慣れてきたら

パンジーやビオラの間に球根をしのばせておく

「ダブルデッカー」に挑戦してみませんか。

草丈を計算して、

チューリップなどの球根を仕込んでおくんです。

春になると

かわいいパンジーやビオラの花の間から

チューリップが伸びて開いていきます。

 

 

8:パンジー・ビオラを増やす楽しみ

パンジー・ビオラには「増やす楽しみ」もあるんですよ。

方法は、タネを採るか、挿し芽で増やすか、

その2種類です。

 

まず、タネについて。

基本的に、ムシが飛ぶ季節でないと

交配がうまくいかないので

冬の間はタネを取る必要はありません。

西日本では、3月中下旬頃からムシが飛ぶと思うので

そうなれば自然とタネがつくでしょう。

 

もちろん、自分で交配するという方法もあるのですが

ちょっと難しいので、

これは、また別の機会に。

 

自然にまかせて、

ムシが交配してくれたタネを採って翌年まくと

もともと咲いていた花とはちがう色や形の花が

バラバラに混ざって咲くのでおもしろいですよ。

 

気をつけたいのは、タネって気がつくと

はじけ飛んでしまっていること。

タネを採取するには

ちょっとしたコツがあるんです。

タネが入っている「サヤ」が黄色くなってきたら

タネの影が見えてきます。

こうなると、もう弾ける手前ぐらいなんですよ。

そしたら、サヤを包むように

不織布や袋などでカバーします。

いつ弾けてもタネが採れるように準備しましょう。

 

「あと3日で弾けるかなぁ」と思って何もしなかったら、

気がつくとタネがはじけてどっかに飛んでしまった、

そういう悲しい思いを何度もしてきたので

みなさんは、不織布などでフタをして

見事にタネを採取してくださいね。

 

また、増やす手法としては、

タネのほかに

「挿し芽」がありますが

こちらは、かなりハードルが高いです。

挿し芽の土

 

春になったら、お気に入りの花の先端を、

鋭いハサミでスパっと切って

さし芽用の用土に挿して育てます。

手で切ると茎がつぶれちゃうから

必ず鋭いハサミで切ってくださいね。

また、最初はしおれやすいので

毎日、水をしっかりやること。

そして、明るい日陰で育てる訳ですが

問題は、夏越しです。

 

もともと暑いのが苦手で、夏は枯れちゃう植物だから

西日本では、冷房を入れないといけないでしょう。

だけど、光が弱いと徒長してしまい、

光が強すぎると焼けてしまう。

挿し芽の夏越しは本当に大変なので

あまりオススメできませんが

不可能ではありませんよ。

 

 

9:よくある病気と予防法

パンジー・ビオラで気をつけたい病気は

うどんこ病、斑点病、立ち枯れ病など。

 

予防するには、

風通しのいいところで育てることです。

株が大きく育ってくると密集してムレるので

黄色くなった枯葉をしっかり取り除いて

風通しをよくしてあげましょう。

 

加えて、花がら摘みですね。

タネを採る必要がないのであれば

花が終わったら花がらを摘みましょう。

 

花弁が葉に張りついていたりすると

そこにカビが生えることが多いです。

根元のまわりに落ちた

花がらや花びらもカビの原因になるんで、

花がら、そして枯れた花びらも葉も、

しっかり取り除いてあげることが大切です。

それくらい愛情を持ってお世話してもらえば

ある程度、病気は防げます。

 

もしも、防げなかった時は、

スプレータイプの薬剤を散布しましょう。

 

 

10:気をつけたい害虫

パンジー・ビオラに寄ってくる害虫は、

アザミウマ、アブラムシ、カタツムリ、

ナメクジ、ネキリムシなど。

 

スプレータイプの殺虫殺菌剤を

定期的に散布することで

被害を予防することができます。

 

ナメクジには、忌避剤や誘殺剤がありますが

コーヒーを使ったナメクジ対策も

意外と効果があるので試してみてくださいね。

第1回ペチュニアのQ&A欄をご覧ください)

誘殺剤

 

 

Q&A

Q:植えつけが遅れてしまいました。

年が明けてから植えてもいいですか?

A:できれば年内に植えつけてほしいですが、

年が明けてから植えても大丈夫です。

購入前に苗の根の状態をよく確かめて、

出荷日からあまり日にちが経っていないものを選んでくださいね。

中には、根がぐるぐる巻きの「ポットバウンド」という状態になり、

真っ白になっている苗があるかもしれません。

こんな苗の場合は、新しい根を出させるために、

根をハサミで軽く切ってから植えつけたほうがいいです。

その際、切りすぎないように

気をつけてくださいね。

寒い時期なので、ガッツリ切ると、

いくら寒さに強いパンジー・ビオラでも

ストレスを感じて生育不良に

なっちゃうかもしれませんからね。

 

 

Q:茎がひょろひょろっと徒長した状態になった場合は

どうしたらいいですか。

A:切り戻すしかありません。

しかし、年内ならば切り戻しをしてもいいけど、

年明け以降の寒い時期に切り戻しをすると

枯れる可能性が非常に高くなるので、

なるべく徒長させないようにしましょう。

徒長させないためには、しっかり肥料と光を与えることが一番大事。

日照が不足する、あるいは肥料切れを起こすと 、
ひょろひょろと伸びやすくなります。

 

次に、適度な風を当てること。

風がまったく吹かない場所では、

扇風機の「微風」くらい、

一番弱い風を首振りで当ててあげるといいですよ。

ただし、寒風を一定方向から強く当てると枯れてしまうので気をつけて。

 

投稿日:2022年10月12日

 

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矢澤先生のプロフィール

ホームセンタータイム
ガーデンアドバイザー
矢澤 秀成 先生

矢澤 秀成 先生

現在、やざわ花育種株式会社、葉乃畑合同会社に所属し、代表取締役社長を務める。
種苗会社植物バイオ研究室に16年勤務し、多くの花や野菜を開発する。その間、国内新花コンテストで金賞を含む18回入賞、社内では社長賞2回受賞する。
種苗会社退職後、大手ホームセンター商品開発部長及び顧問、大手肥料メーカー顧問、パテント会社代表、野菜市場顧問、ガーデンセンター顧問などを歴任。多くの植物園などのヘッドガーデナーや監修を行う。
育種家として、多くの個性的な花や野菜、漢方薬などの新種育成を行っており、18年前から全国各地の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う。子供たち自身が交配して世界に一つだけの小さな種を作り、その種を大切に育て世界に一つだけの花を咲かせる授業を行っている。さらに「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、2002年から地域の花好きを育て、そして花の街を育てる「花のマイスター養成制度」を提案しスタートする。現在全国各地でマイスターを育てる花の学校を開校し、マイスターと共に花いっぱいの公園づくりや街づくりに取り組んでいる。
NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」、NHK長野「ひるとく」、BS-日テレ「麗しの庭散策」、SBCラジオ「ずくだせ エブリデイ」、篠ノ井有線放送「花暦」などの多くの園芸番組の講師として出演中。全国で講習、講演活動を多数行い、園芸関連多数執筆中。