第51回「秋の七草」でお庭をステキに!
みなさん、こんにちは!
園芸研究家の矢澤秀成です。
食べて味わう「春の七草」に対して
「秋の七草」は見て楽しむもの。
薬として重宝していた植物ばかりですが
季節の風情を慈しむ、
そんな楽しみ方が似合う植物が多いんですよね。
もともと日本に自生していたものばかりなので
とても育てやすいです。
日本の気候にも合っています。
庭に植えると毎年、咲いてくれるから
自宅にいながら秋の風情を満喫できるようになりますよ。
ということで、第51回は
「秋の七草」のお話です。
7つのうち、ナデシコとキキョウは
ご紹介済みなので
今回は、上記以外の5種類の植物をご紹介します。
―ナデシコはこちらから
―キキョウはこちらから
目次
1:秋の七草とは
「秋の七草」の由来は
奈良時代の歌人・山上憶良が詠んだ
和歌2首だといわれています。
どちらも万葉集におさめられているんですよね。
「秋の野に 咲きたる花を 指(および)折り
かき数ふれば 七種(ななくさ)の花」
「萩の花 尾花葛花 撫子の花
女郎花(おみなえし) また藤袴 朝貌(あさがお)の花」
(※朝貌は「キキョウ」のこと)
「秋の七草」の覚え方は、いろいろあるんですけど
私は「おすきなふくは」で覚えています。
お=オミナエシ
す=ススキ
き=キキョウ
な=ナデシコ
ふ=フジバカマ
く=クズ
は=ハギ
これらはすべて、古くから日本の原野に
自生してきた山野草。
だから、暑さ・寒さに強く、夏越し・冬越しもできますよ。
2:オミナエシ
オミナエシは、スイカズラ科の多年草。
お彼岸のお供えや、お月見にも飾られる植物です。
夏場は、ロゼットといって
茎の部分がほぼない感じ。
葉っぱが地面にピタッと張り付いたように
平面的かつ放射状に広がっている状態なのですが
8月下旬くらいからニョキニョキッと
茎が伸びてきてね、
秋になると黄色いお花が咲きます。
草丈は1m50cm〜2mぐらい。
結構、大きくなっちゃうんで
狭い庭だと、ちょっと迷惑かもしれません。
プランターで育てたら多少は小さくなって
1mぐらいになるかな。
庭植えでも、間引かずに5年ぐらいそのままにしてると
ちょっと小さめになります。
そこで
背が高いからという理由で
オミナエシを敬遠している方には
ちっちゃい矮性種をオススメします!
花は、まったく一緒です。
とても可憐でかわいい。
草丈は50cmぐらいです。
高さがあるので、切り花としても使えますよ。
私は、この矮性種を新潟のガーデンに使っています。
雪がつもろうが、マイナス5度まで冷えようが、
冬を越えて元気に毎年、咲いてくれますよ。
しかも、手がかからない。
ほったらかしでも毎年、秋には花が上がってくるし、
花が終わったあとも、花がらを摘み取ったこともないくらい
ほんとにラクです。
オミナエシは
タネから育てることもできるし、
株分け、挿し芽もできますが
地下茎で増えるので
ほったらかしにしておいてもどんどん増えていきます。
なので、そのままにしておくと増え過ぎて大変なので
ウチでは春になると、
オミナエシの芽を5〜6割抜いて間引いちゃいます。
病気は、ほとんど心配ないですが
最高気温と最低気温の差が激しくなって
うどん粉病の出やすい環境が整うと注意が必要です。
それほど、真っ白になることはないけど
重曹スプレーなどでしっかり予防しましょう。
3:ススキ
秋の七草の代表格といえば「ススキ」でしょうね。
もし、お庭に植えるとしたら
普通のススキじゃなくて、
葉っぱが細いのとか、斑入りとか
ガーデンニングに使われる品種を選んでみてはいかがでしょう。
オススメは「糸ススキ」。
そんなに大きくもならず、ゆっくり育つうえ、
ススキらしい美しい線も楽しめて、
お花もキレイ。
十五夜のお月様の頃に咲くので
お団子と一緒にお供えできますよ。
しかも、純和風の庭にも合うし、
洋風の庭にも合う!
ただし、ススキは
ほったらかしにすると、
どんどん株が大きくなって
抜けなくなってしまうので
植物園では5年に1回、掘り上げます。
秋の終わりになると
ススキの株は、まっ茶色になって
枯れているように見えるんだけど
株は生きています。
5年経った株だと直径20cmぐらいありますね。
この株の下部を10センチぐらい残して
葉っぱを刈払い機で全部
スパッと切っちゃうんです。
さらに、掘り起こした株を
ナタで割ります。
これを、さらに5分割ぐらいしたものを
鉢や庭にポンポンと植えておけば
春になったらそこから芽が出てきますよ。
お試しください。
4:フジバカマ
フジバカマは「蝶々を呼ぶ花」として知られるようになり、
最近、人気を集めています。
だけど実は、野生のフジバカマは減少傾向にあります。
昔は、川原にいっぱい咲いていたんですけどね。
そこで、いろんな自治体が
「川に、もう一度フジバカマを戻そう」という
活動を始めていて、最近、いろんな地域で
植えられるようになってきました。
特に、「アサギマダラ」という美しい蝶を呼ぼうという試みが
全国各地で繰り広げられています。
フジバカマは、アサギマダラが大好きな花なのでね。
私が造ったバタフライガーデンにも
フジバカマを植えていますよ。
1年目は、なかなかアサギマダラが来てくれなかったんだけど
2年目になるとたくさん遊びに来てくれました。
他のチョウ、セセリチョウとかシジミチョウなど
もやって来ます。
花が咲くのは9月下旬から11月下旬くらい、
2か月くらい咲いています。
花がキレイですよね。
白色やピンクもあります。
古風で奥ゆかしい印象ですが、
とても丈夫で育てやすいです。
しかも、地下茎で増えるのでよく増えます。
タネで増えるものもあります。
株分けでも増えますよ。
ホームセンターでは、
フジバカマは鉢植えで売られていると思うので
最初の年は鉢で育ててもらったらと思いますが
1年で鉢の中が根でパンパンになると思うので
早めに植え替えたほうがいいと思います。
土は、水はけが良ければ大丈夫。
あまり大きくしたくない方は
毎年、半分に切るなど
樹形を保ってコンパクトに育てましょう。
5:クズ
もともと、クズ(葛)は生薬なんです。
葛根湯でも、おなじみですよね。
咳止めに使われるなど、体にいい植物なんですが
繁殖力が強過ぎるうえに
つるが伸びて、木ごと飲み込んじゃうくらい
はびこってどうしようもないものだから
秋の七草の中では一番の嫌われ者なんです。
そんな「クズを有効活用しよう」と思いまして
私は、クズの講座をやっているんですよ(笑)。
参加者のみんなでクズのでっかい根を掘り上げ、
それを踏んづけて樹液をとり
何度も水にさらし、
白い「くず粉」という原料を作るところから体験して
本物の「くず餅」を作ります。
だって、本物のクズで作った「くず餅」って
ほとんど売っていないでしょう?
奈良のあたりだと、いまでも食べられますけど
一般的には、ジャガイモのデンプンで
代用されていますよね。
そういうことを子どもたちに教えると
嫌われ者のクズの株が上がり、
人気者に変わってくるのでおもしろいです。
ちなみに、クズは
ホームセンターで売られていないと思いますが
もしも植える場合は
近所迷惑にならないように気をつけてくださいね。
クズはマメ科植物なので
花が咲いた後、マメができて種ができます。
こぼれ種からも、根っこからも増えるので、
本当に大変です。
クズを駆除するには、
葉っぱを作らせず、どんどん切っていくしかないでしょう。
また、除草剤を切り口に塗り、
それを1年・2年と続けて繰り返すと
だんだん弱っていきますが
1回だけじゃ全然、減らないですよ。
6:ハギ
ハギの仲間は種類が多く、
実に、いろんなハギがありますが
代表的な園芸品種といえば
「宮城野萩(ミヤギノハギ)」でしょう。
品種は何であれ
ハギはマメ科なので生育は旺盛です。
ハギの根には根粒菌が共生するので
やせ地でもよく育ちますよ。
病気も、害虫による被害も多くないから
栽培しやすいです。
ただし、生育が旺盛だからこそ
人間が手を入れないと
大きくなり過ぎて大変なことになっちゃう。
そこで、毎年、株元近くまでバキバキッと
短く切っちゃう人が多いんだけど
そうすると、ハギは横に倒れちゃうんですよね。
そうならないためには、
花が終わって葉っぱが落ちて
枝だけになったら
枝を半分くらい透(す)かすと良いです(枝透かし)。
半分くらいまで間引くというか、透かして冬を越す。
すると、下から出てきた新しい芽が
古い枝を支柱がわりにして伸びていくので
雨風に強くなって倒れにくくなります。
ハギを育てるうえで一番、大事なことはコレでしょうね。
ちなみに、間引いて伐採した枝は
インゲンマメなどマメ類の支柱に
ちょうどいいですよ。
適度に高さもあるし、枝が分岐しているから
マメのツルが絡みやすいです。
肥料は、ほとんどやらないですね。
病気もほとんど心配ないけれど
新芽の時期はアブラムシに注意。
重曹スプレーや
オルトランなどの農薬を使って予防しましょう。
なお、ハギは、基本的には庭植えなんですが、
鉢植えで購入した場合、
花を見終わったら根を触らないで
厳寒期を避けた休眠中(11月・12月・2月下旬)に
ちょっと大きめの鉢に植え替えてあげると良いと思います。
そのほうが、管理はラクだと思いますよ。
第52回目は、グランドカバーについてお話しします。
9月25日ごろ投稿予定ですので、次回もお楽しみに!
投稿日:2024年9月11日