第12回清楚で可憐!秋の七草・ナデシコ
第12回 清楚で可憐!秋の七草・ナデシコ
みなさん、こんにちは!
園芸研究家の矢澤秀成です。
今年の夏も暑かったですね。
みなさん、体調はいかがですか?
お庭やベランダの植物は
無事に夏越しできましたか?
天候や運にも左右されますが
真夏の手入れをがんばった人には
たくさんの花や収穫、癒しが与えられるはず。
そうだといいな、と思っています。
今回ご紹介する「ナデシコ」も
お世話する人の努力にこたえて長く咲く、
強くてけなげで、かわいらしい草花です。
「秋の七草」のひとつとしても有名ですよね。
私が種苗会社の研究員になって最初に育種したのがナデシコで
国内のコンテストで優勝したこともあるので
思い入れの深い花でもあります。
ナデシコは、いま植えると来年の春も、
秋も楽しめますよ。清楚な花に癒されてください!
目次
1:ナデシコについて
「萩の花 尾花(おばな)葛花(くずはな) なでしこの花
女郎花(おみなえし) また藤袴 朝がほの花」
奈良時代の歌人・山上憶良が「秋の七草」を詠んだ
この歌は『万葉集』に収められています。
そんな大昔からナデシコは日本に自生しているんですね。
この歌に詠まれたナデシコの品種は
「河原ナデシコ」あたりでしょうか?
やさしい草姿で、花弁に深い切れ込みがあって美しいです。
日本各地に自生している「河原ナデシコ」は
山野草の部類に入り、
夏の終わりから秋にかけて開花します。
「河原ナデシコ」のほかに、「高嶺ナデシコ」や「伊勢ナデシコ」も
山野草として扱われています。
「河原ナデシコ」の雰囲気を残しつつ、
ベランダなどで育てやすいように改良された
「なでしこスープラ」もかわいいですよ。
ナデシコは、学名を「ダイアンサス」といって
世界に300種類ぐらい存在します。
じつは、カーネーションも「ダイアンサス」の仲間なんですよ。
近年は、品種改良がさらに進み、
多くの園芸種が誕生しています。
一般に多く流通しているのはテルスター系といって
「美女なでしこ」と、唐ナデシコ系統のセキチクとの交配種です。
コンパクトで、花がたくさん咲くのが特徴。
テルスター系の品種には「スーパーパフェ」のような
大輪種もあります。
「美女なでしこ・ジョルト ピンクマジック」は
ピンク・チェリー・白の花が一度に咲いて
徐々にライトピンクへ、最後はダークピンクに
花の色が変わっていきます。
四季咲きで、長く楽しめるので人気があります。
2:ナデシコの苗の秋植え
ナデシコの苗の植え付けは、主に春と秋に行います。
秋は、春に比べると売り場に並ぶ種類が少ないのですが
秋の花が咲いたあと冬越しできて
春にもパァッと咲いて、次の秋にも咲くから
同じ株で2年楽しめるんですよね。
非常に長く楽しめるというメリットがあります。
ナデシコの苗の秋植えは
寒冷地では9月中旬から10月上旬の
ヒガンバナが咲いている間に行います。
暖地では9月中旬から10月下旬までに行いましょう。
この期間を過ぎて植えると寒くなるので
根が張りにくくなります。
この時期に販売されている苗には
すでに花が数輪、咲いていると思います。
できれば花の色や形を確かめて、
徒長していないもの(伸びていないもの)を選びましょう。
3:ナデシコの苗を植えよう
購入した苗が、直径およそ9cm(三寸)のポット苗1株であれば
5号鉢くらいのサイズの鉢に植えましょう。
プランターで育てる場合は、
株と株の間が15cmぐらいあった方がいいので
1つのプランターに3株ぐらいかな。
土は、タイムズファームさんの「花と野菜の土」など
市販の園芸用培養土を使ってください。
ナデシコは高温多湿が苦手なので、
水はけに気をつけて
鉢やプランターは日当たりの良い場所に置きましょう。
そして冬場は、寒風が直接あたらない場所に
置いてあげるといいと思います。
とくに、マンション高層階の場合は、
風当たりを考えて、
置き場所を選ぶといいでしょう。
4:定植後の冬越し作業
苗を植えて2週間ぐらいしたら
根が張ってくると思うので
緩効性化成肥料を適量、与えてください。
花は11月下旬くらいまで咲かせて
それ以降は、できるだけ
咲かせないようにします。
そして、終わった花の花がらを摘んだら
花茎の処理をします。
花茎は、根元の部分まで切っちゃっていいです。
葉っぱをしっかりと蓄えた状態で
冬を迎えましょう。
寒さを乗り越えて、もう一度、春から開花します。
ナデシコは強いので、ほったらかしても大丈夫。
しっかり休眠させて寒さにあてましょう!
追肥は、翌春の3月下旬くらいに
緩効性化成肥料をパラパラッと与えましょう。
芽が動き出してくると思いますよ。
5:冬場の管理で気をつけたいこと
ナデシコの冬越しで気をつけたいことは、まず水の管理。
花が咲いていないから水やりを忘れてしまいがち。
1週間に1回必要か不要か、その程度の水やりでいいので
つい忘れちゃうんです。できれば、
水やりの記録をしてもらった方がいいと思いますよ。
一旦しなびた状態になると、
2度と起き上がらないこともあるので気をつけてね。
次に、ナデシコは直接、風にあてない方がいいということ。
だけど、寒さには「これでもか」ってぐらい(笑)
ガンガンあててもらった方がいいです。
秋に根をしっかり張らせて、
冬の低温に耐えて冬越しすると
春には素晴らしい花が咲きます。
花数がぐっと増えるんですよ。
霜対策については、基本的に必要ありませんが
11月に入ってから植え付けちゃうと
根がしっかり張っていないうちに霜が降りて、
植木鉢の中から株がポコッと浮いてくることがあります。
こうなると根っこが乾いちゃうので
手で押してください。
それでも下がらない時は株に土をかけて、
浮き上がった根っこの部分を埋めてあげましょう。
6:中級者は「さし木」でふやそう!
ナデシコの株をふやしたいと思ったら
さし木、または、タネをとってふやすという
2つの方法があります。
ただし、園芸種の場合は交配種が多いから
タネだと元の花とは異なる色や
形の花が出てくる可能性が高いです。
「今年と違う花を楽しみたい」と思うなら
タネをとって翌年秋のヒガンバナが咲いている間に
まいてみてください。
でも、オススメは「さし木」。
同じ色・形の花が咲くし、とっても簡単です。
ナデシコは、パーライトという土と相性がいいので
赤玉土にパーライトを10%ぐらい混ぜた土にさすと、
非常に活着率が高いし、いい根っこが出ますよ。
※パテント品種の増殖について
登録された品種の種苗を育成者の許諾なく、業として利用(増殖、譲渡、輸出入など)する行為は禁止されており、損害賠償、刑事罰の対象となる場合がありますので、ご注意下さい。
7:気をつけたい病気と害虫
ナデシコは、突然枯れることがあります。
土と茎が接している根元のあたりから腐って
カビが生えて、水や養分の通り道である
導管・師管が塞がれてしまうと、
上部がカラカラになって立ち枯れてしまうんです。
原因は「萎凋(いちょう)病」「立枯病」「灰かび病」など。
これを防ぐポイントは水管理。
乾燥気味にした方がうまくいきますよ。
害虫で気をつけたいのはアブラムシ。
アブラムシがついちゃうと植物にウイルスが入っちゃうので
発見したらすぐ潰す、または薬剤(スプレー剤)を散布しましょう。
一般の方は、害虫や病気が出てから薬をまく人が多いけれど
定期的にまいておけば予防にもなりますよ。
2週間に1回くらいのペースで、
殺虫・殺菌の両方に効果があるスプレー剤をまけば
ダニやアブラムシ、ネキリムシ、アザミウマ、ヨトウムシも解決です。
うどんこ病などにもかかりにくくなりますよ。
有機栽培にこだわりたい人、農薬が嫌いな人は
「牛乳」をスプレーしてみて。
牛乳の油膜でアブラムシやダニなどの害虫が窒息死します。
駆除したあとは、水でしっかり洗い流してね。
Q&A
Q:ナデシコが突然枯れました(涙)。ナゼでしょうか。
A:原因は「水のやり過ぎ」の場合が多いですね。
土がずっと湿った状態だと根が細く弱くなっちゃって
プチプチ切れたりしてね。
最終的に根腐れ病になって枯れてしまいます。
水のやり過ぎを防ぐには、
土を触ってみること。
または、鉢を持ってみて重かったら水をあげない。
ナデシコ(ダイアンサス)は、葉っぱがしおれる寸前ぐらいまで
水を抜いて大丈夫です。
しっかり抜いて、ガツンと与えましょう。
メリハリをつけた方が葉っぱも硬く立派に育ちますよ。
Q:根鉢がいっぱいになったので植え替えたいのですが、
いつ植え替えたらいいですか。
A:秋の、ヒガンバナが咲いている頃がベストです。
植え替えのタイミングは、できれば秋がいいです。
ヒガンバナが咲いている時期に
鉢からスポッと抜いて根の周りを軽くほぐし
ひと周り大きな鉢に移してあげてください。
すると、冬が来る前にしっかり根が張って
寒さにも耐えられるでしょう。
もし、どうしても春に植え替えたい場合は
株にストレスがかかっちゃうので
花が遅れる可能性があることを覚悟してください。
花芽形成していたら、花が小さくなっちゃうかも。
投稿日:2022年9月14日