第21回ラナンキュラスに、きゅん!
みなさん、こんにちは!
園芸研究家の矢澤秀成です。
鳥取にいた頃のことですが
ラナンキュラスを500株植えてね、
一斉に咲き誇った時に「すごくキレイでした!!!」と
お客様からもスタッフからも大絶賛されたんだけど
花が咲いている間、留守をしていた私だけ見られなかった、
という悲しい思い出があります。
「なぜ、オレの出張中に咲くんだ〜!!!!」
って、叫んだもの(涙)。
ラナンキュラスの花の生命は短いですが、
夏越しに成功できれば
2年目、3年目は、さらに見事な姿で楽しませてくれます。
毎年、株が育っていく様子を見るのは
人生の楽しみにもなると思いますよ。
すごくデリケートだけれど、
あの幾重にも重なった繊細な花びらの透明感といい、
華やかなのに凜とした花姿といい、
ラナンキュラスは本当に美しい!
ということで、
第21回は「ラナンキュラス」について、お話します。
私のように開花を見逃さないよう、
花が咲いたらすぐ写真に撮ってくださいね!
目次
1:ラナンキュラスについて
学名:Ranunculus asiaticus L.(ラナンキュラス アシアティクス)
和名:花金鳳花(ハナキンポウゲ)
分類:キンポウゲ科キンポウゲ属(多年草)
原産地:東ヨーロッパ・南ヨーロッパ・西アジア
ラナンキュラスには、八重咲きや半八重咲きなど、
種類がすごく多いうえ、花色も豊富です。
赤、白、ピンク、オレンジ系のほかに、紫系もあります。
半耐寒性球根なので―3℃くらいまで耐えられるから
凍らなければ大丈夫でしょう。
私の暮らす長野のような
寒冷地で育てるのは難しいですが、
瀬戸内なら生育にぴったりじゃないでしょうか。
草丈の高さも、高いものから低いものまで多種多様です。
花壇には、背の低い「わい性」品種を用いますね。
品種は、かなり多く、
スプリンクルス(わい性)、ドリーマー(タキイ種苗)、
ラナンキュラス・ラックスなど。
中でも「ラックス」は、すごく人気が高いです。
宮崎の綾園芸さんが異種間交配によって作出した
衝撃的な品種で、夏でも植えっぱなしでOKなんです。
しかも、咲いた花が終われば次々切って大丈夫。
どんどん咲いてくれます。
寒さにも、ある程度強く、
私の経験では−5℃でも大丈夫でした。
花壇苗としては若干高価ですが
1度植えて根付くと宿根して何年も咲くので
花が好きな方へのプレゼントとしても喜ばれますよ。
2:苗の植え方
ラナンキュラスの生育適温は5℃〜15℃ぐらいなので、
家庭で苗から育てるならば
3月頭から下旬に植えつけると良いでしょう。
土質は「水はけがよく、腐植質(ふしょくしつ)に富んだ砂質土壌が良い」とされています。
土壌の酸度は弱酸性(ph6前後)が適していますが
安心してください。
そんなに神経質にならなくても大丈夫です。
よく日の当たる場所に植えてください。
プランターで育てるならば
腐葉土などの有機質が3〜4割くらい入った、
根張りのよい培養土を使いましょう。
鉢は深い方が良いので、できればロングポットを選びましょう。
路地にしても、プランターにしても、
ラナンキュラスの苗を植えつける時のコツは
根を傷つけないこと。
その後の生育に影響するので
ポットから苗を取り出し、そのまま
根をほぐさずに植えた方がいいですよ。
路地の場合は株と株の間を
20cm以上離して植えましょう。
植えつけたら、たっぷりと水やりしてくださいね。
つぼみのついた苗を植えるので
緩効性肥料を植えつけた時に
パラパラッとまいていただければ
花が終わるまで肥料不足にはならないでしょう。
とにかく肥料は3月いっぱいまでで終わりにしますが
球根を来年も咲かせたいので、
花が終わっても球根を太らせるために、
葉が黄色くなるまで水やりを続けましょう。
3:夏越し〜鉢ごと日陰で管理する場合
ラナンキュラスの夏越しは難しいので
失敗しても落ち込まないでくださいね。
でも、がんばってみたい!という方には
球根を掘り上げて保管するよりも
鉢のまま夏越しする方法をおすすめしたいと思います。
まず、黄色くなった葉や茎はすべて取り除きます。
次に、鉢植えの状態のまま
涼しい日陰に置き、水やりをやめて管理します。
花壇に植えっぱなしにしていると、
高温多湿の夏の間に球根が枯死する確率が高いです。
そのため、土壌中の菌類やバクテリアが繁殖しないように、
「水分を抜く」ことが大事です。
とにかく、水気が良くないので
乾燥させた方が夏越しできる可能性は高いと思います。
4:夏越し〜掘り上げて球根の状態で管理する場合
花が終わって5月の中下旬になり、
葉が黄色くなって全体が枯れてきたら
球根を掘り上げるタイミングです。
遅くても梅雨前、6月中旬までに
株を抜いて球根を掘り上げましょう。
茎を球根の付け根あたりから手で折り、
ひとつひとつの球根が折れないように
ざっくりと分けます。
この時、球根を細かく分け過ぎないように。
チューリップやムスカリの球根は
掘り上げたらそのままネットに入れて日陰干しすれば良いですが、
ラナンキュラスの球根には、
もうちょっと繊細なケアが必要です。
できるだけドロを水で洗い流してから
ミカンネット(収穫ネット)などに入れて
風通しの良い涼しい日陰に吊るして
秋まで乾燥させましょう。
5:秋の植えつけ前に、しっかり吸水を!
2年目となるラナンキュラスの球根の植えつけは
彼岸花の花が終わる頃、10月上中旬頃に行います。
植えつける前に、
まず、球根にゆっくり吸水させる!
これが成功の必須ポイントです。
この際、球根を水の中にチャポン!と入れるのではなく
キッチンペーパーを水でよく湿らせてから軽く絞り、
その湿ったペーパーで球根を包んでビニール袋に入れ、
ひと晩、冷蔵庫で保存します。
こうすると、翌朝には、球根が
ぷくぷくっとふくれているので、
それを確認してから植えつけてください。
その際、球根の上下を確認します。
とがった方を下にして植えつけます。
もしも迷ったら、横向きに植えると安全です。
横向きなら、上も下も関係なく芽が出ます(笑)。
球根の上に5cmぐらい土がかかっても全然平気です。
ちなみに、ラナンキュラスの球根って、
肥大した根が塊状になってできているから
「塊根(かいこん)」と呼ばれています。
根っこの大きな塊みたいなものが
たくさんくっついているんだけど
これを無理にひとつひとつに分けること(分球)は、
しない方がいいと思います。
無理に分けずに、そのまま植えてもらう方が安全なうえ、
花が株立ちで咲くので豪華絢爛というか、見事ですよ。
2年目より、3年目の花は、さらに立派になるので
ぜひ夏越しにチャレンジして、
壮麗なラナンキュラスの群れをひとり占めしてください。
6:気をつけたい害虫と病気対策
気をつけたい害虫の一番は「アブラムシ」です。
見つけたのが数匹程度なら
セロハンテープにくっつけて捕まえ、
スプレー式の薬剤をシュシュシュっとかけて予防しましょう。
大量に発生していたら迷わずスプレー式の薬剤を使ってください。
病気としては「灰色かび病」が根元付近に出るかな。
花が終わったあとに花びらが落ちて、
その花びらが原因で、かびが出ることが多いですね。
病気を予防するためにも
花びらをきちっと片付けてもらった方がいいです。
Q&A
Q:秋に球根を植えましたが芽が出てきませんでした。
A:それは、悲しかったでしょうね。なぜ、芽が出てこなかったのでしょう?
いくつか理由が考えられますが、1つは、球根が枯死していたから。
2つめは、暑さに弱いところがあるので、植えた時期が早かったから。
彼岸花が終わる頃から10月なかばぐらいまでに植えましょう。
3つめは、意外と難しい「球根の選別」に失敗してしまったから。
売っている球根の中には、小さく分けたものもあるのですが、サイズが小さいと育てるのは難しいです。
袋の裏側が透明になっていて中が見えるので、何個かひとかたまりになった大きめなものを選んだ方がいいと思います。
4つめは、植える前に、確実に吸水させること。
本文4の吸水の仕方を読んでみてくださいね。
Q:植え替えをしようとしたら、黒い根がありました。どうしたら良いですか。
A:もしも、黒ずんで腐っている根があれば、切ってしまっていいですよ。
黒くなるのは大概、水のやり過ぎが原因なので、乾燥気味に管理してもらえば元気に復活してくると思います。
投稿日:2023年3月8日