第30回かわいい!増える!最強!「多肉植物」
みなさん、こんにちは!
園芸研究家の矢澤秀成です。
私と多肉植物の出合いは、小学生の頃。
ミニサボテンを集めていたんです。
多肉植物って、サボテンから観葉植物系、花が咲くものまで
ほんとに幅広いので、どれを選んだらいいのか
迷ってしまうと思うんですが、
かわいいのに手間がかからない。
しかも丈夫で強いうえに、
ポロッととれた子株から根っこがはえて
増えていくから不思議! すごくおもしろいんですよ。
「はじめの一歩」になる植物ですね。
園芸専門家の多くが、多肉植物から
この道に入っているんですよ。
だから、大人のみなさんはもちろん
ちいさな園芸家さんにも
ぜひ、オススメしたいアイテムです。
ということで、第30回は「多肉植物」のお話です。
目次
1:多肉植物とは
葉っぱや茎、根の内部などに水を貯えている植物のことを
「多肉植物」と呼んでいます。
グミみたいにプクプクとした見た目や触感が
かわいいものもあれば
ごつごつとした無骨なフォルムに味があるもの、
荒々しいトゲトゲがクールでカッコいいもの、
それぞれ個性があるから見ているだけで飽きないですよね。
葉っぱ1枚からでも増やせるし
あまり水をやる必要がないので
気軽に挑戦しやすいところも魅力ですが
私が思う1番の魅力は、
秋の紅葉。
夏場の日当たり加減によって、紅葉の色が変わってきますから
今からしっかり準備してほしいと思います。
反対に、多肉植物のたいへんなところは、
植物ごとに、活動期・休眠期がちがうこと。
活動期と休眠期では、水やりのペースや
お世話の仕方が変わってくるので
ひとつひとつ、その植物の生育パターンを
しっかり勉強する必要があります。
多肉植物には基本的に、
盛んに生育する活動期と、活動をゆるめる休眠期があり、
活動する季節によって
「春秋型」「夏型」「冬型」の3つに分けられます。
・春秋型=夏と冬が休眠期。
エケベリア、セダム、ハオルチアなど
・夏型=寒さに弱いものが多く、休眠中の冬場は室内で管理。
アガベ、アロエ、カランコエ、クラッスラの一部、ユーフォルビアなど
・冬型=休眠中の夏場は水分を少なめに管理する。
コノフィツム、リトープス、アエオニウムなど
とりあえず覚えておきたいのは
活動期でも、そんなにたくさん水をやるものではないこと。
そして、特に休眠期は「水を控えめにやること」です。
2:いろんな多肉植物
多肉植物には、とにかくたくさんの種類があるんですが
ポピュラーなものといえば
セダム、カランコエ、リトープスなどでしょうか。
私の推しは、‘アガベ’です。
軽井沢に引っ越したら寒過ぎて
1年目に9割が溶けてしまい、
残った1割も翌年、夏を越えられなかったという
悲しい思い出があるんですけどね、
アガベは、おもしろいです。
ひとつひとつの種ごとに
色も大きさも、トゲの出方も変わってきます。
置き場所は、日当たりと風通しの良い場所。
最近は、温暖化なので
西日本の暖かい地域なら
霜除けのビニール温室に入れて
霜と風を避けることができたら
冬を越えちゃうことも可能です。
どちらかというと
夏場に葉っぱが傷み過ぎる方が心配です。
特に、西日に当たっちゃうと
葉焼けを起こすかもしれないので
西日は避けましょう。
また、真夏の直射日光は強すぎるので
遮光率50%の寒冷紗の下などに
入れてあげたほうが良いでしょう。
では、夏場は日陰に置いてみたらどうなるかというと
明るい日陰ぐらいだと、
秋の紅葉が今イチになるんです。
ご自宅に風通しの良い日陰があるのなら
午前中はお日様に当てて午後は日陰に入れる、
その方がいい色に染まりますよ。
3:土、水やり、肥料について
一般の草花用培養土に
赤玉やパーライトを加えて使っても良いのですが
ビギナーの方には、多肉植物用の培養土が
失敗しにくいのでオススメです。
売り場には
多肉植物用の培養土がいろいろ並んでいるので
それらを使うと良いと思いますよ。
水と肥料については
植物の種類によりますが
そんなに頻繁にあげなくていいです。
花が咲くカランコエであっても
1週間に1回、そんな程度です。
ただし、水を与える時はたっぷりと。
その後、水をあげない期間をしっかり設けてください。
モノによっては1か月から、2・3か月もの間、
断水期を作っても大丈夫です。
気をつけたいのは
自分だけでなく数人で管理する場合。
知らない間に他の家族が水やりしていたら
加湿になって腐らせてしまうことがあります。
植物園など複数の人が管理する場所では、
「何日に水をあげました!」という札をつけて
水のやり過ぎに気をつけていますよ。
そして、
多肉植物の栽培で一番難しいのが
「寄せ植え」だと思います。
できれば、原産地が近いなど
同じ環境で育つ植物を
一緒に寄せ植えしてあげた方が良いでしょう。
これとこれは相性がいい、という組み合わせは
最初から分からないかもしれません。
何度も試してみるうちに
少しずつ分かってくると思いますよ。
多肉植物の寄せ植えで気をつけたいことは
「色」ですね。
植え付けた時の色だけでなく、
秋冬になったらどんな色に紅葉するか、
調べて想像しておいた方がいいでしょう。
冬になったら
意外な色に変わっているかも!
それも多肉植物の楽しさです。
4:仕立て直しのコツは?
多肉植物がヒョロヒョロと徒長して
みすぼらしい感じになったり、
間延びしたら切り戻すしかありません。
形を揃えた方がキレイなので、
背が高くなり過ぎてしまった場合は
思い切って摘芯して高さを切り揃えましょう。
その際、枝を残しておけば
横からも出てきますよ。
また、切り落とした木や芽も
挿し木・挿し芽に使えます。
切った枝や芽を使って
新たに小さな寄せ植えを作ってみるのも楽しいですよ。
5:置き場所は屋内よりも屋外へ
多肉植物は、外の風に当たることで
表層の部分(皮)が厚くなって病気に強くなるし、
皮が厚くなることで水分蒸発も少なくなるので
できれば風に当てた方がいいです。
なので、置き場所は
部屋の中より外の方がいいですね。
乾燥地域が原産のものは、
外の軒下も良いです。
風のないところで育てると、
病気になりやすいし、ホコリダニも付きやすいので、
屋外でしっかり風に当ててあげてください。
6:挿し芽で増やそう
挿し芽をする場合は、挿し芽専用の土、
またはサボテン・多肉植物専用の土がオススメです。
芽を切ったら、必ず切り口を乾かしてから
挿してください。
カットしたあと、1日ほど日陰に転がして、
放ったらかしておいて大丈夫です。
中には、1週間ぐらい転がして
乾燥させている園芸家もいるぐらいです。
挿し芽をしても、水はやらないです。
あまり水分が多いと腐っちゃうので、
水やりは霧吹きで
シュシュシュッとスプレーする程度にしましょう。
7:病害虫対策
カランコエなど花が咲くものの場合は
ツボミがついたときに
アブラムシが寄ってくる、ということはありますが
多肉植物に関しては害虫の心配は少なめです。
たまに、多肉植物をかじるムシがいるんですが、
完全に食べ尽くすわけではないです。
葉っぱの一部だけなら
多肉植物は再生できますから
怖いのは病気の方でしょう。
たまに、多肉植物の葉っぱが
溶けていることがあるんですよ。
いろんな要因が考えられるんですが、
ひとつは、水のあげ過ぎによる根腐れ。
べと病みたいな感じになって溶けます。
もうひとつは、
日中の暑い時間帯に潅水した場合。
水滴がレンズのように
太陽の光を集めて多肉植物の葉っぱの
皮を破って穴をあけてしまうんですね。
その穴の部分から溶け出すという状況を
結構、見てきました。
なので、日差しの強い日中には
水をあげないようにしましょう。
多肉の病気予防は
とにかく水管理をしっかりやることです。
Q&A)
Q:多肉植物の葉がぽろぽろ落ちてくるのですが、どうしたら良いですか。
A:赤くなってぽろぽろ落ちる性質の多肉植物があります。
ぽろぽろ落ちた葉から勝手に芽が出てくるので心配しなくても大丈夫ですよ。
Q:白い団子ムシのようなムシが葉の上にたくさんくっついています。
害虫でしょうか?
A:情報が少なくて判断が難しいですが、
白くて、ちょっとシマ模様があって、
たくさんくっついていて気持ち悪い。
となると、カイガラムシの一種ではないでしょうか?
もしもカイガラムシが大発生していたら
カイガラムシ用エアゾールを薬散するしかないと思います。
Q:徒長した場合はどうすればいい?
A:ひょろひょろと伸びてきたら、切り揃えましょう。
できれば徒長しないように管理するのも大事です。
多肉植物は、風を当てた方が徒長しにくいんですよ。
山の上の松が風に揺れると伸びなくなるのと同じ理由で、
多肉植物も風に当たって揺れると伸びなくなる(矮化する)ようです。
投稿日:2023年8月23日