第24回「母の日」におすすめ!ラベンダー
みなさん、こんにちは!
園芸研究家の矢澤秀成です。
さて、「ラベンダー」といえば
みなさんは、どこの風景を思い浮かべますか?
薄紫色の花が一面に咲き誇る北海道・富良野の丘?
イギリスや南フランスという方も
いらっしゃるでしょうね。
ラベンダーには高温多湿が苦手な品種が多いので
比較的、涼しい地域で育つ植物という
イメージをお持ちの方が多いのでは?
最近は品種改良が進んで
西日本の暑さにも耐える品種が
出てきているんですよ。
ラベンダーは見て美しいだけじゃなく
香りやお茶も楽しめるので
「母の日」のプレゼントとしても
人気が高まっています。
ということで、
第24回は「ラベンダー」についてお話します。
目次
1:ラベンダーについて
ラベンダーは日本で最も名の知れた
宿根草のひとつだと思います。
原産地は地中海沿岸、生育適温は15℃〜20℃です。
学術的には、シソ科ラバンデュラ属の
「常緑低木」に分類されています。
「木」なので、夏越し・冬越しができれば
同じ株で何年も花が楽しめます。
ハーブ園によっては10年物、20年物もありますよ。
ただし、ラベンダーは高温多湿が苦手なので
西日本の暑さを耐え抜くのが
場所によって厳しいかもしれません。
1シーズンで終わっても、がっかりしないでくださいね。
花の色は、紫色が最もポピュラーですが
ピンクや白もありますよ。
愛好家が多いので品種はすごく多く、
何種類もの系統がありますが
大きく分けると2つ。
イングリッシュ系(コモン)とフレンチ系に分かれます。
ハーブとして、優雅な香りを楽しむなら
イングリッシュラベンダーです。
極早生品種の「富良野3号」など
新しいのもかなり出てきていますが
昔からある品種の方が
安定して生育できると感じています。
私が育ててきた中では
イングリッシュ系の「グロッソ」が一番、栽培しやすいかな。
ラベンダースティックも作れるし、香りもいいですよ。
ただし、イングリッシュ系にとっては
西日本の暑さは辛いでしょう。
30℃越えで、かなり厳しいと思うので
35℃越えの日が続くと、さすがに無理かなと思います。
鉢に植え替えて涼しい場所に移してあげると
夏越しできるかもしれませんね。
園芸品種としては最近、フレンチ系の品種が増えていて
面白くなってきているなぁと感じています。
ただし、フレンチ系は本気で寒い日には枯れちゃいます。
マイナス5℃あたりが限界ではないでしょうか。
こちらも鉢植えにして、温度管理をしてあげれば
冬越しできるかもしれません。
ちなみに、「レースラベンダー」は
別系統の植物で、半耐寒性。
夏はガンガン咲いてくれるけれど
ラベンダーより寒さに弱くて0℃くらいが限界でしょう。
雪が降って寒波が来たら凍って枯れちゃいます。
雪に埋まっちゃってもダメ。
翌年に持ち越しするのは、ちょっと難しいかな、と思います。
2:いい苗を選び適温で管理しよう
苗を購入する際は、葉色の良さに加え、
茎の節間が詰まった、しっかりした苗かどうかを確認しましょう。
茎がひょろひょろと伸び上がったものを選ばないように。
また、花数が多いものを選んだ方がいいと思いますよ。
そして、購入後の苗ですが、
おウチがとても寒いところだと
持って帰った苗が一瞬で弱ってしまい
苗焼けして枯れちゃうかもしれません。
出荷前の生産者さんのところで
加温されている場合があるので
温度管理で失敗しないよう、
購入してきた苗は、あまり寒い場所に
置かないようにしましょう。
3:水はけのよい土に植えよう
ラベンダーは高温多湿が苦手なので、
一番注意しないといけないのは用土。
水はけの悪い土に植えてしまうと
夏場に蒸れて枯れてしまいます。
購入してきた苗は、水はけのよい土に植え付けましょう。
また、乾燥気味に育てた方が良いので
水のやり過ぎにも注意が必要です。
[用土のブレンド]
・植木鉢の場合
腐葉土4:赤玉土(小)3:日向土(小)2:パーライト1
これに苦土石灰(小さじ1程度)と元肥(緩効性化成肥料)を加えます。
・花壇の場合
腐葉土4:赤玉土(小)3:軽石(小)2:パーライト1
これに苦土石灰と元肥(緩効性化成肥料)を加えます。
ラベンダーの花壇で一番大事なのは「水はけ」です。
関西でラベンダー園を作った際は、地下に水がたまらないように、
地面を50cmぐらい深めに掘って軽石の細かいのを混ぜて
水はけを改善しました。
それでも、水がたまりやすい場所にあった株が
枯れてしまいました。全体の3割ぐらいですね。
原因は、暑さと蒸れです。
プロにとっても西日本の暑さは厳しいものです。
[水やり]
植えつけ時には株元にたっぷりと水を与えますが、
その後は乾燥気味に管理しましょう。
夏場は暑い時に水をやると蒸れちゃうので、
暑くなってきたら日中の水やりを避け、
早朝か、夕方に水をあげるようにしましょう。
[追肥]
肥料は一般的な植物より、やや少なめで大丈夫です。
追肥は、早春に1回と、秋の彼岸花が咲き誇っている頃に1回。
合わせて2回、緩効性化成肥料を与えれば十分です。
4:ハーブとして収穫しよう
ラベンダーの花を収穫して、
ポプリやラベンダースティックを作ったり、
お茶を楽しんだりしたいと思ったら
咲き始めの頃に収穫します。
いわゆる「切り戻し」は花が終わってからの作業なので
全部刈り取ってしまう必要はありません。
使うぶんだけ収穫しましょう。
私は、ラベンダースティックを作るほかに
入浴剤を作りますね。
ローズマリーと同じ要領で
ラベンダーの花だけ手でピーッとしごき取って
ネットに入れてお風呂に入れます。
ちなみに、剪定の時に出る葉っぱも
お風呂に入れたりしています。
5:花が終わったら夏越し準備を!
花が終わったら、
梅雨に入る前に大きめの鉢に植え替え、
しっかり切り戻しをします。
切り取るときは、わき芽の上から切りましょう。
切り戻しをして風通しがよくなったら
雨の降らない場所に移してあげます。
植え替える鉢は、
テラコッタのような、ちょっと分厚めの植木鉢の方が
熱の伝わり方が弱く、
中の土があたたまりにくいのでオススメです。
そして、夏本番の間は
根鉢があったまらないよう、
鉢ごと土に埋めておく、または二重鉢にしておくと良いでしょう。
とにかく、土があったまらないように工夫します。
無事に夏越しできたら彼岸花が終わった頃、
かなり伸びている枝を切り戻して
コンパクトにします。
信州の場合は、雪が降るので
かなり短く切りますけど
関西のラベンダー園では、
葉っぱを何枚か残すぐらいの長さで
パチっと切っています。
すると来年、下の方からたくさん芽が出てきますよ。
6:挿し木でバックアップを作ろう
株が古くなると木化し、カチカチになって
少しずつ弱り、暑さで突然死することが多いんですよ。
だから、5年に1回ぐらい、
剪定のタイミングで挿し木をして
更新する=バックアップを作っておく方が
いいと思うんです。
なぜなら、ラベンダーは挿し木がとっても簡単だから。
天芽は挿すとしおれちゃうんですが
節間の茎は挿してもしおれることなく、
上手に伸びますよ。
挿し木をする土は肥料分の少ない挿し木用の土を使いましょう。
挿し木の時期は、花が終わってから。
夏の暑さもあるし、乾燥しやすいので
水はけの良い日陰に置き、
根がつくまで毎日、水をかけてあげてください。
挿し木をして、だいたい4〜5週間で
ちょこっと根が出てきます。
秋の彼岸頃にはかなり根が出ていると思います。
それをポットに移し替えて徐々に肥料を入れ込み、
少しずつ明るいところに置いてあげるようにしましょう。
翌年の花は、ちょこっとだけ咲いてくれると思いますが
古株の横に、そういうバックアップを残して
長くずっと楽しんでもらったらいいと思います。
7:気をつけたい害虫と病気対策
ラベンダーが病気になる場合、
原因は「蒸れ」である場合が多いです。
害虫被害を予防するためにも、
古い枝は剪定して風通しを良くしましょう。
できれば真夏は鉢に植え替えて、
風通しの良い涼しいところに置くことが
病気や害虫被害の予防にもつながります。
ラベンダー畑の場合は高畝にして、水はけを良くしてあげましょう。
ラベンダーはハーブとして精油やお茶も楽しめるので、
できる限り薬品の使用を避けたいですよね。
農薬を使うなら「自然農薬」を使った方がいいと思います。
(自然農薬については次回、お話する予定です)
そのほか、最近は食品成分から作られた薬品も多く出回っています。
例えば、酢を原料にした薬品には
害虫の忌避効果があるのでオススメですよ。
[アブラムシ]
花のつぼみがつき始めると出てくることがあります。
数が少なければ私は手で潰しますけど、
手を汚したくなければ、セロハンテープやマスキングテープに
くっつけるようにして取り除くといいですよ。
ただし、大量発生している場合は
残念ながら薬剤を使用するしかないかな。
[ハダニ]
目に見えないくらいのサイズなので見つけにくいですが、
ラベンダーの様子を見て「何かおかしい?」と思ったら
ハダニの可能性大です。
ハダニは葉裏に存在し、湿り気があれば予防できるので
水で流すことが効果的。
葉の裏側まで勢いよく水で流しましょう。
ただし、ハダニが出る時期は高温・乾燥期なので、
日中にバシャバシャと水をかけるのは避けたいところ。
涼しい夕方に行うようにしましょう。
もし、大量発生している場合は薬剤を使うしかないんだけど、
ダニ剤はキツイからね。農薬の中で私は一番怖いです。
なので、ダニ予防をしっかりして大量発生させないよう、
こまめに葉水を与えましょう。
[ヨトウムシ]
柔らかい新芽やつぼみが何者かに食べられていたら
犯人はヨトウムシかもしれません。
夜遅い時間帯に懐中電灯で照らしながら葉裏をチェックして
イモムシのような形の虫を見つけたらヨトウムシでしょう。
割り箸でつまんで潰しましょう。
[カイガラムシ]
カイガラムシは退治が難しいので薬剤散布でしょうね。
カイガラムシ用の殺虫剤「エアゾール」を
シュッと吹きかけるとすばやく退治できます。
死骸が茎にくっついて残っている場合は、
歯ブラシでやさしくこすって落としてください。
Q&A
Q:贈り物でもらったラベンダー(鉢・寄せ植え)を来年も咲かせたいのですが、どうすれば良いでしょうか?
A:5月の「母の日」にもらったラベンダーの鉢って、寄せ植えになってることが多いですよね。そのまま夏まで置いておくと弱ってしまいます。できるだけ早くラベンダーだけ、根っことそのまわりの土ごと出してもらって、ひとまわり大きい鉢に植え替えてあげるのが一番いいです。花がしおれかけたら、バサーっと大胆に切り戻しをして、水はけの良い土に早めに移し替えてください。
Q:ラベンダーを毎年、植え替えていたらどんどん株が大きくなってきました。
A:5年もの、10年ものになって株も鉢も大きくなると管理が大変なうえ、弱った株が突然枯れてしまう可能性もあるので、ある程度、年数が経ったら植え替えるより挿し木をして、株の更新をした方が安全だと思います。ぜひ、試してみてください。
Q:毎日、水やりしているのにラベンダーの元気がありません。
A:ラベンダーは多湿が嫌いなので、毎日のように水を与えると水分が多過ぎて、ちょっとご機嫌を悪くしてしまったんでしょうね。水はけと風の通りを良くして、乾燥気味な状態で管理してあげるとご機嫌を戻してくれるんじゃないでしょうか。
投稿日:2023年4月26日