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矢澤先生によるコラム 教えて!矢澤先生!

育種家として第一線で活躍する
矢澤秀成さんによる園芸の旬な情報をお届け

第9回もっと、おいしい家庭菜園! 畑の土づくり

第9回 もっと、おいしい家庭菜園! 畑の土づくり

みなさん、こんにちは!
園芸研究家の矢澤秀成です。

みなさんにとって
野菜づくりの1番の楽しみって、なんですか?

大きくなる野菜の姿を見るのは
もちろん楽しいけど、
やっぱり収穫、「食べておいしい!」が
1番じゃないでしょうか?

そこで、前回の「培養土」に引き続き
「土」の話をしたいと思います。
やっぱり「おいしい野菜を食べたいなぁ〜」と思ったら
「土」にこだわることが大切!

そこで、今回第9回は、
家庭菜園で、もっとおいしい野菜を育てるための
「畑の土づくり」についてお話しします。

まずは、基本的なポイントを
おさえましょう。

1:庭の土では野菜が育たない?

野菜に限らず、
「植物がよく育つ土」を作りたいと思ったら、
まず、森の土を思い出して欲しいんです。

森の土をよ〜く観察すると、
小さな塊で構成されていることに気づくと思います。

サラサラでも、コチコチでもない。ふかふかの土です。
落ち葉が腐葉土となり、
動物たちのふんなどの動物性堆肥とも混ざり合っています。

前回の「培養土」でもお話しましたが
森の土のように植物が育つ土の場合、
「団粒構造」がしっかりしています。
なので、水はけも保水性もよく、
空気も栄養もたっぷり含んでいます。

↑『団粒構造』団粒がくっついて集合体になったもの

 

↑団粒構造が含まれる土壌はやわらかくふかふかで植物の栽培に適している

 

ところが、一般的な庭の土は、
ふかふかの土ではないし、
団粒構造が見当たらない場合がほとんど。

だから、庭の土で家庭菜園を始めるには
土づくりが必要なのです。

2:庭の土から畑の土へ!

これまで1度も畑として使っていない土ならば、
植物性堆肥の腐葉土と、
牛ふんなどの動物性堆肥を1:1に混ぜたものを
庭の土に50%ぐらい混ぜましょう。
※割合は、実際の土の状況によって調整が必要です。

 
昨年も畑として利用した土ならば
25%ぐらいでいいですよ。

以後、毎年25%ほど、
腐葉土と堆肥のミックスをすき込んで
良い土の状態に育てていきましょう。

3:堆肥の選び方

動物性堆肥には、牛ふんの他に、馬ふんや豚ぷんがあります。

一般的に使いやすいのは、牛ふんだと思いますが
商品によって含まれる牛ふんの量がちがうし、
おがくずやバークが混ざっているものもあるので
容量と価格だけでなく、
袋の裏側をしっかりチェックして
成分を見比べて選んだ方がいいですよ。

↑牛ふん一例
↑袋の裏側をしっかりチェックしましょう!

 

4:化学系肥料の考え方

「長く家庭菜園を楽しみたい!」と思うなら
化学系肥料は最小限に抑えて、
有機質系の腐葉土や堆肥を
しっかり混ぜていくのがオススメです。

なぜなら、化学肥料に頼りすぎると
1年目は、いっぱい収穫できても、
2 年目以降、徐々に土が痩せて 、
収穫量も徐々に減ってしまうからです。

化学肥料は悪いものではありません。
今年、はじめて植えたナスを
それなりにたくさん収穫しようと思えば
化学肥料という選択は非常に有効です。

でも、化学肥料に頼って土づくりをなまけると
土が弱くなってしまいます。

ちなみに私の畑には化学系肥料を使いません。
理由はね、野菜のウマさがちがうから。
ナス1本、キュウリ1本の味に打ち震えますよ(笑)。

5:ふかふかの土に育てよう!

植物がよく育つ「ふかふかの土」に育てるには、
土を耕すと同時に、腐葉土と堆肥を混ぜること。
耕すことで土の中に空気が入るので、
根がよく育つ土になります。

その前の準備として
私は、毎年3月頃、
「苦土石灰(くどせっかい)」を
1平方メートルあたり500gぐらい
畑全体にパラパラとまいています。

苦土石灰には、粉状と粒状のものがありますが、
粒状だと風で飛ばないので使いやすいですよ。

苦土石灰を、ざっくり説明すると
苦土がマグネシウム、石灰がカルシウムです。
マグネシウムは、花や実を育てる栄養素(リン)の
吸収を助けてくれます。
カルシウムは、病気に強い植物を作ってくれます。
さらに、苦土石灰は土のpHも調整してくれるので
苦土石灰をまくことで植物の育ちやすい環境が整う訳です。

土を耕して腐葉土と堆肥を入れる作業は、
種まき、または植え付け前に毎回、行いますが、
苦土石灰は年1回、秋か春のどちらかに行うのが普通です。

また、苦土石灰は植え付け1か月ぐらい前にまくと良いので、
ご自分の育てたい野菜の成育時期と相談しながら
タイミングを調整してくださいね。

6:畝を作ろう!

「畝」は作った方がいいです。
家庭菜園だから必ずではないんだけどね。

畝とは、畑の土を高く盛り上げて作る栽培床のこと。
畝を作ると水はけが良くなるし、
野菜ごとに畝を作ることで
管理しやすくなります。
ちなみに、畝を作ることを「畝立て」と言います。

土の状態や育てる野菜によって
適する畝の高さはちがいます。
特に、水はけが悪い場所は、
ちょっと高めにして水抜けを良くします。

水はけの良い土地を好むサツマイモなんかは
畝の高さ15〜20cmぐらいに高くしますね。

マメ類は強いので畝立てしなくても大丈夫。
ジャガイモ の場合も、土寄せするので
畝立てしにくいのですが、
いずれも、特に水はけが悪い土地であれば
畝立てした方がいいですよ。

その土地の、水はけ状態をしっかり見て、
畝の高さを考えましょう。

↑畝のイメージ

 

7:連作障害を知って植える野菜を選ぼう!

同じ場所で、同じ科の野菜を連続で育てると、
特定の栄養素だけが吸収され続けるので
土の栄養バランスが崩れ、生育に支障が出ます。
このことを「連作障害」と言います。

しっかり土壌改良してあげれば、
大概の場合よくなるのですが、
できれば、ナス科のトマトを植えたなら
次の年はウリ科のキュウリにするとかね、
別の科の植物を植えてあげるのがベストです。

2つの畝を作って交互に入れ替えて植える、
または、ひたすら異なる科の植物を選んで
輪作を続ければ連作障害 になりにくいです。
もちろん、堆肥等をしっかり入れて
土づくりを丹念に行うことでも
連作障害は低減できますよ。

ご自分で判断できなかったら
「去年これを植えたけど、今年これを植えていいですか?」と
お店で相談するといいですよ。

第10回目は、キャベツについてお話しします。
8月10日ごろ投稿予定ですので、次回もお楽しみに!

 

矢澤先生のプロフィール

ホームセンタータイム
ガーデンアドバイザー
矢澤 秀成 先生

矢澤 秀成 先生

現在、やざわ花育種株式会社、葉乃畑合同会社に所属し、代表取締役社長を務める。
種苗会社植物バイオ研究室に16年勤務し、多くの花や野菜を開発する。その間、国内新花コンテストで金賞を含む18回入賞、社内では社長賞2回受賞する。
種苗会社退職後、大手ホームセンター商品開発部長及び顧問、大手肥料メーカー顧問、パテント会社代表、野菜市場顧問、ガーデンセンター顧問などを歴任。多くの植物園などのヘッドガーデナーや監修を行う。
育種家として、多くの個性的な花や野菜、漢方薬などの新種育成を行っており、18年前から全国各地の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う。子供たち自身が交配して世界に一つだけの小さな種を作り、その種を大切に育て世界に一つだけの花を咲かせる授業を行っている。さらに「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、2002年から地域の花好きを育て、そして花の街を育てる「花のマイスター養成制度」を提案しスタートする。現在全国各地でマイスターを育てる花の学校を開校し、マイスターと共に花いっぱいの公園づくりや街づくりに取り組んでいる。
NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」、NHK長野「ひるとく」、BS-日テレ「麗しの庭散策」、SBCラジオ「ずくだせ エブリデイ」、篠ノ井有線放送「花暦」などの多くの園芸番組の講師として出演中。全国で講習、講演活動を多数行い、園芸関連多数執筆中。