第33回冬・春の庭の必須アイテム「アリッサム」
みなさん、こんにちは!
園芸研究家の矢澤秀成です。
色の少ない冬から春の
花だんや寄せ植えに欠かせない花といえば
「アリッサム」です。
花は白色や紫っぽいもの、
ピンクっぽいものなど
いろんな色があるうえ、
葉も緑だけでなく、斑入り葉が美しい品種もあります。
庭の主役にもなれるし
パンジー・ビオラの名脇役としても
重要な役目を果たします。
とくに、スーパーアリッサムは
生命力が旺盛なので
園芸ビギナーにも育てやすい品種ですよ。
ということで、第33回は
「アリッサム」のお話です。
目次
1:アリッサムという名称について
一般的にガーデニングで「アリッサム」といえば
学名で「ロブラリア・マリティマ(Lobularia maritima)」と呼ばれる
「スイートアリッサム」のことを指すことが多いです。
かつてはアブラナ科アリッサム属に分類されていたのですが
現在は、そこから分離した
アブラナ科ロブラリア属に変更されています。
なので、分類上は「アリッサムとは違う植物」なのですが
昔の名残で「アリッサム」と呼ばれています。
じつは「アリッサム」という
学名が付いた花も存在するので
ちょっと、ややこしいですが
覚えておいてください。
2:アリッサムについて
「スイートアリッサム」は
実生系の一年草。
原産地は地中海沿岸。
水はけの良い土壌を好む花です。
開花期は10月〜5月頃までと長いので
冬から春にかけての庭を彩るのに
とても重宝します。
手まりみたいな形の小花が
株いっぱいに咲く姿がかわいらしく
白、紫、ピンクのほかに
アプリコット系やベージュのような
ニュアンスカラーの花もあります。
他の花とあわせやすいので
寄せ植えにもよく使われますね。
“スイート”という名前から想像できるように
あま〜い香りも特徴です。
春に、スイートアリッサムが満開のハウスで作業していたら
匂いに酔ってしまったことがあるくらいです(笑)。
この「スイートアリッサム」を
厳しい夏の暑さにも耐えるように
改良された品種が「スーパーアリッサム」です。
スーパーアリッサムには
スノープリンセス(白い花)、
フロスティーナイト(斑入り葉)、
パープルプリンセス(緑葉で花が紫)
これら3種類があるので好みに合わせて選べます。
色合いは、スイートの方が多いのですが、
“スーパー”という名前のとおり
ものすごく強い生命力を誇ります。
生長スピードも速く、匍匐(ほふく)性なので
みるみる横に広がっていきます。
寄せ植えにもよく使われるけれど
地植えにして、グランドカバーとして使うこともできます。
スーパーは、いつもシャキッとしていて
安心感があります。
枝も、スイートより硬いです。
また、根がいいんですよ。
ちょっと値段が高いけど、
ガーデニング初心者でも
余裕で育てられるくらい
スーパーアリッサムは別格だと思いますよ。
3:アリッサムを植えよう!
地植えにする場合は、
まず、日当たりが良く、
水はけの良い場所を選びましょう。
植え付ける場所を決めたら
土に腐葉土や堆肥をすき込み、
水はけを良くしてから
よく耕してふかふかにします。
そして、ポットから苗を抜き取り
根鉢を壊さないように
なるべく根を触らないようにして
植えつけ、たっぷり水を与えます。
ちなみに、スーパーアリッサムを地植えにする場合、
1株が大きく育つことを想像しながら
よく考えて場所を選びましょう。
場合によっては直径1.5mぐらいまで
大きくなることもありますよ。
鉢植えの場合、土は、
花と野菜のための培養土を使います。
植え付けた後、緩効性化成肥料を
適量(パッケージに書いてある用量)、
パラパラッとまいて
たっぷりと水を与えます。
1鉢に植え込む本数の目安は
スイートアリッサムなら、
5号サイズの鉢に3〜4苗くらいです。
寄せ植えにすることが多いですが
ひと鉢全部アリッサムにしてもキレイです。
いろんな色を詰めても楽しいですね。
一方、スーパーアリッサムなら
株が大きく育つので
5号鉢に1株で十分です。
ただし、スーパーアリッサムの
斑入り系を植える場合は
強すぎる日差しに弱いので
夏の直射日光や西日が当たる場所は
避けるように気をつけて。
基本的には日なたを好む植物ですが
午前中はよく日が当たり、
午後は日陰になるような場所でも育ちますよ。
4:アリッサムの管理方法
アリッサムの根は細く、
切れやすくて弱いので
水が多いと根腐れしやすいです。
ですから、
地植えの場合、ほとんど水やりの必要がありません。
夏場に乾燥しているからと思って
ザブザブ水をやると
枯れてしまうことがありますので注意を。
追肥のタイミングは
植え付けから1か月ぐらいたった頃。
花期が長いので、
その後も2か月に1回をメドに
緩効性化成肥料を適量(パッケージをよく読んで)、
パラパラと与えてください。
アリッサムの花は根に近い方から
順々に咲いていくので
特に花がら摘みをしなくても次々と花を咲かせますが
咲き終わって枯れた花穂の部分が見苦しいので
チョキンと切ってあげる、そこまで
手入れができるといいですね。
さらに、こんもりと育ってきたら
梅雨前に3分の1程度まで切り戻します。
ただし、アリッサムは高温多湿に弱い植物なので
気温が高い時に切り込みすぎると
弱ってしまうかもしれません。
切り戻しをするときは、
必ず下葉を残すように気をつけてください。
また、暖かい瀬戸内エリアでは、
切り戻し作業を9月半ばまで待っても
10月・11月に再び咲いてくれるので
気候と花の様子を見ながら
切り戻すのが怖いなと思ったら
無理せずそのまま育ててくださいね。
5:アリッサムの植え替え
アリッサムは多年草で
場所によっては宿根するのですが
高温多湿の日本では夏を越せないことが多いので
1年草として扱われています。
特に、残暑の厳しい西日本では
近年のような真夏の猛暑を
耐えられるかどうかは難しいところ。
鉢植えであれば夏の間、
日陰や半日陰に置き場所を変えるなど
涼しく管理することで
夏越しできるかもしれません。
もしも、うまく夏を越えることができたら
アリッサムの鉢植えは毎年、
秋の彼岸花が咲いている10月中旬くらいまでに
植え替えをしましょう。
できるだけ根に触らないように、
根を傷つけないように気をつけながら
ひと回り大きな鉢に植え替えます。
6:病害虫対策
アリッサムに寄ってくる害虫は
アブラムシ、スリップス、ハダニ、
コナガ、ヨトウムシなど。
ですが、冬の間、ほとんど虫はいなくなるので
気をつけたいのは「根腐れ」ですね。
アリッサムは根っこが弱いので
水気の多い状態や蒸れが続くと
根っこがドロッとなって枯れてしまいます。
できるだけ水はけの良い状態を
キープできるよう管理してください。
ひんぱんに植え替えたり、
毎日、水をジャブジャブかけたりするのはNGですよ。
害虫が出てくる春先には
アブラムシを見かけるかもしれません。
見つけたらセロハンテープなどにくっつけて捕まえ、
スプレー式の薬剤をシュシュシュっとかけて
大量発生を予防しましょう。
なお、アプラムシには牛乳スプレー、
根っこに繁殖するカビ類の病気を予防する殺菌剤としては
ネギ類から抽出するアリシンエキスなどの
自然農薬も、ぜひ、お試しください。
(くわしくは、第27回「自然農薬」のコラムをご一読ください。)
投稿日:2023年10月11日