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矢澤先生によるコラム 教えて!矢澤先生!

育種家として第一線で活躍する
矢澤秀成さんによる園芸の旬な情報をお届け

第32回ぜったいウマくいく「ニンニク」

みなさん、こんにちは!

園芸研究家の矢澤秀成です。

 

いまや「ニンニク」といえば

スタミナ食の代名詞ですが

ハロウィンの飾り付けにも使われるように

西洋では古くから「魔除け」に使われていたそうです。

 

日本でも『古事記』の頃から

「悪疫退散」に使われていたとか。

 

そして、現代の私は、

大切なイチゴのコンパニオンプランツとして

ニンニクを植えています。

 

来年の初夏には

おいしいイチゴをたっぷり収穫し、

カツオのたたきをニンニクで味わいたい!

 

ということで、

野菜づくり初心者でも

ぜったいウマくいくように

第32回は、「ニンニク」栽培のコツをお話します。

 

 

 

1:ニンニクとは

ニンニクの原産地は、中央アジア。

ユリ科ネギ属の多年草で高い栄養価を誇ります。

 

病気にかかりにくく、

栽培しやすく、

長期保存も可能!

 

いいこと尽くしのニンニク。

だけど、ニンニクにも弱点があります。

それは、暑さに弱いこと。

 

そこで、ぜったい成功するコツは

まず、栽培する地域に合った品種を選ぶこと。

 

ニンニクといえば、

大人気のブランド「ホワイト6片」が有名です。

確かに、大きくてウマい!

いろいろな種類のニンニク

 

でも、これは「青森産」で知られるように

寒冷地用の品種なのです。

だから西日本で栽培する場合は

生育の途中で腐らないように、

ちょっと頑張らないといけない。

 

岡山など瀬戸内地域では

種球の産地を確認して

西日本でとれたもの、

暖地用の品種を選ぶといいですよ。

 

 

2:ニンニクの植え付け

インターネットや書籍で

ニンニクの植え付け時期を調べると

9月から10月と書いてあることが多いと思います。

 

だけど最近は、残暑が厳しいですよね。

なので、西日本の暖地では

10月に入ってから植えることを

オススメしています。

今から準備すれば十分、間に合いますよ!

 

栽培する場所は、風通しのよい日なた。

 

庭植えの場合は

水はけの良い場所を選びましょう。

土をよく耕して堆肥を入れ、

腐葉土を入れてふかふかにします。

加えて、植え付けの2週間前までに

苦土石灰を入れて(1㎡あたり100g程度)

pH調整をしましょう。

 

苦土石灰

 

プランターで育てる場合は

20cm以上ある深型を使用しましょう。

 

大きめのプランター

土は、野菜用の培養土でOKです。

ただし、ニンニクが過湿で腐らないように

できるだけ水はけの良い土を選びましょう。

 

培養土

 

次に、ホームセンターで

ニンニクの「鱗片(りんぺん)」を購入します。

ニンニクの塊の状態で売られていることもありますが

植えるときには、1片1片バラして植えます。

 

皮の色が均一で、形が良い

細くない鱗片がいいですね。

パンパンに張っている方が生育も良いですよ。

 

そして、土に元肥(野菜用の肥料、8-8-8など)を入れたら

鱗片のとがった方を上にして植えます。

深さは、土の表面から5cmぐらい。

 

8-8-8

 

株間は15cm〜20cmを目安に植えます。

(プランターの場合は15cmくらい)

 

鱗片を植えたら

しっかりと水をやりましょう。

 

ちなみに、ニンニクはタマネギと同じアリウム属なので

土づくりもタマネギに似た感じでいいです。

元肥に鶏糞を使ってもいいですが、

苦土石灰と併用するとアルカリに傾き過ぎるので

避けた方がいいですよ。

 

鶏ふん

 

3:管理方法

まず、水やりについて。

ニンニクは水分量が多いと腐ってしまうので

やや乾かし気味で管理します。

とくに、暖かい瀬戸内地域では

過湿にならないように気をつけてくださいね。

 

栽培管理で大事なのは、

追肥のタイミング。

 

西日本の暖地で栽培する場合、

追肥は、年内に1回。

成長期の3月の中旬までに、もう1回施すといいでしょう。

追肥の種類は、粒状の化成肥料で大丈夫です。

 

マイガーデン

 

例えば、長野のような寒い場所では

冬場に生長が止まるから

年内の追肥はやらないのですが

 

岡山など西日本の温かい地域の場合は

まだまだ生育が進むので、

年内に1回の追肥をすると

大きくて立派なニンニクに育つと思います。

 

2回目は、3月中旬までに施します。

一方、3月中旬以降に追肥をすると

鱗片が腐りやすくなっちゃうので

絶対にあげないように。

 

あとは、収穫までほったらかしでもいいですよ。

 

 

4:摘花

4〜5月頃、ニンニクの花茎が上がってきます。

この茎は「ニンニクの芽」として

スーパーなどでも販売されていますよね。

細かく刻んでチャーハンに入れてもらっても

焼肉に使っても美味しく食べられます。

 

とにかく、

花茎が上がってきたら早め(1〜2週間以内)に

茎を切った方がいいです。

花は、絶対咲かせないようにしてください。

なぜなら、花が咲くと食用部分に

栄養分がいかなくなるからです。

 

できるだけ長い茎を取るために

地面の際で切るといいですよ。

 

 

5:防寒・冬越し対策

ニンニクは寒さに強いので

特に防寒対策をしなくても、霜ぐらいなら平気です。

 

マイナス10度になる軽井沢でも

持ちこたえたのでびっくりしています。

 

ただし、全体が凍結すると枯死してしまうので

冬越し中の水やりは

日中の暖かい時間帯に行うなど

注意は必要です。

 

とくに、暖地用のニンニクの場合、

霜が降りるような場所では、

防虫ネットや寒冷紗などを

かけておくといいでしょう。

 

黒マルチをかければ地温が上昇するので

かなり有効だと思います。

穴あきマルチ

なお、プランターで育てている場合は

北風が当たらない南向きの軒下などに置いてくださいね。

 

 

6:収穫

タマネギの場合は、葉っぱがキレイに倒れたら

収穫時期なのですが

ニンニクは、ちょっとわかりづらいです。

 

5月〜6月頃に、

葉茎が半分以上枯れて黄色くなってきたら

収穫のサイン。

 

晴天が続いて土が乾いている時を選び

根元を持って引き抜きましょう。

 

注意点は、ニンニクの収穫をするなら

絶対に晴れた日に行ってほしいということ。

ニンニクは、実が濡れた状態で収穫すると

のちのち腐りやすいので

例えば雨の日に収穫すると

腐ってしまいます。

そのため、収穫の当日だけ晴天でも、

実が濡れた状態だと腐りやすいので気をつけてください。

数日間、晴天が続いたときに

収穫するのがベストです。

梅雨前には全部抜いてしまいましょうね。

 

晴天が続くと土が乾いているから

抜きやすいというメリットもあります。

 

根ごと抜いたら、そのまま畑に寝かせてもいいですが

私は、茎や葉っぱを束ねて

軒下など、風通しのよい日陰に干して乾燥させます。

みかん用ネットに入れて干しても大丈夫です。

 

ネットに入れて吊るし干し

こうして、しっかり乾燥させておけば

半年くらいの長期保存が可能ですよ。

 

 

7:気をつけたい病気

ニンニクって、病気の心配は少ないのですが

ネギ類特有の「さび病」には気をつけましょう。

 

もしも「さび病」が出た場合、

何もしなければ

「さび病菌」が2〜3年の間、

その場所に居続けます。

 

それくらい厄介なので

私は、みかんの皮を乾かして粉々にしてね、

「陳皮(ちんぴ)」って呼ばれる漢方薬なんですけどね、

それを植え付け前の土に混ぜています。

すると、ペクチンの働きで「さび病」の発生が抑えられます。

 

みかんの種類は「温州みかん」がいいですね。

みかんを食べたあと、皮を乾燥させて

保存しておくんです。

完全に乾燥すると、手で簡単に崩せるくらい

粉々になります。

キッチンバサミなどで切ってもいいですけど、

できるだけ細かくした方が分解されやすいです。

 

そうやって作った陳皮を

ニンニクを植える1か月前ぐらいに

畑にすき込んでおきます。

 

「さび病」以外では

春腐れ病、黄斑病、モザイク病などに

かかる可能性があります。

これらは、地中の水分を乾かし気味にすることで防げますが

葉っぱにモザイクのような細かい点々が出てくる

「モザイク病」はウイルスが原因なので

感染してしまったら治りません。

その株を残しておくと病気がどんどん広がっていくので

早く抜いて食べてしまうようにしましょう。

 

また、

アブラムシやアザミウマなど、ウイルスを媒介する害虫を

寄せつけないことが大事です。

これらの害虫を見つけたら、すぐ捕殺ですね。

食べ物だから農薬は使いたくないですからね。

 

ただし、モザイク病の症状が出ても、

ニンニクは食べられるので安心してください。

 

 

8:害虫対策

イチゴの害虫忌避など

コンパニオンプランツとして

使われる植物なので

害虫については、ほとんど心配ありませんが、

ネギアザミウマ、ネギアブラムシなど

寄ってくる害虫はゼロではありません。

 

また、葉の内部に侵入して食害する

ネギコガを見つけたらすぐ捕殺しましょう。

葉の中に虫が入っていたら

スジがつくので

葉っぱごとブチュッと潰してください。

 

 

 

Q&A)

Q:同じ場所から芽が2本出てきたのですが、そのまま育てても大丈夫ですか?

A:たまに1つの鱗片から複数の芽が出ることがあります。

これは、1つの鱗片の中で

複数に割れている(分球している)状態です。

病気や奇形ではないので

「脇芽かき」といって、

小さい方の芽を抜いて1本にすれば大丈夫です。

 

そのまま育てると、あんまり大きくならず

良いニンニクができないからです。

おろし金で擦りおろすと指を怪我しそうなくらい

小さいのがいっぱいできても困りますからね、

1本にして大きく育てましょう。

 

投稿日:2023年9月27日

 

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矢澤先生のプロフィール

ホームセンタータイム
ガーデンアドバイザー
矢澤 秀成 先生

矢澤 秀成 先生

現在、やざわ花育種株式会社、葉乃畑合同会社に所属し、代表取締役社長を務める。
種苗会社植物バイオ研究室に16年勤務し、多くの花や野菜を開発する。その間、国内新花コンテストで金賞を含む18回入賞、社内では社長賞2回受賞する。
種苗会社退職後、大手ホームセンター商品開発部長及び顧問、大手肥料メーカー顧問、パテント会社代表、野菜市場顧問、ガーデンセンター顧問などを歴任。多くの植物園などのヘッドガーデナーや監修を行う。
育種家として、多くの個性的な花や野菜、漢方薬などの新種育成を行っており、18年前から全国各地の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う。子供たち自身が交配して世界に一つだけの小さな種を作り、その種を大切に育て世界に一つだけの花を咲かせる授業を行っている。さらに「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、2002年から地域の花好きを育て、そして花の街を育てる「花のマイスター養成制度」を提案しスタートする。現在全国各地でマイスターを育てる花の学校を開校し、マイスターと共に花いっぱいの公園づくりや街づくりに取り組んでいる。
NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」、NHK長野「ひるとく」、BS-日テレ「麗しの庭散策」、SBCラジオ「ずくだせ エブリデイ」、篠ノ井有線放送「花暦」などの多くの園芸番組の講師として出演中。全国で講習、講演活動を多数行い、園芸関連多数執筆中。