第10回シャキッとおいしい秋植えキャベツ
第10回 シャキッとおいしい秋植えキャベツ
みなさん、こんにちは!
園芸研究家の矢澤秀成です。
みなさんは「葉物野菜」と聞くと
何をイメージしますか?
レタス、ハクサイ、ブロッコリー…
いろいろあると思いますが
葉物野菜の代表選手といえば
「キャベツ」です!
キャベツには、春に植えて夏秋に収穫する春植えと
夏の終わりから秋の始め頃に植えて
秋冬から春先にかけて収穫する秋植えがあります。
秋の終わりには
最大の害虫であるモンシロチョウがいなくなるので
秋植えの方が育てやすい、かな?
ということで第10回は、
秋の葉物野菜の代表選手
「キャベツ」をご紹介します。
目次
1:秋植えキャベツの苗を選ぼう
秋植えキャベツの苗を植えるタイミング(定植時期)は
8月から9月にかけてなのですが
大切なのは
「いつ植えるか」よりも
「いつ収穫したいか」を考えること。
収穫できる時期によって
早生(わせ)、中生(なかて)、晩生(おくて)と
品種が分類されていることを知っておきましょう。
そして、その品種にあった時期(適期)に
育てることが成功のコツです。
早生系品種の収穫期は10月下旬から11月ぐらい。
定植時期は8月上〜中旬頃です。
中生(なかて)の収穫期は12月。
定植時期は8月下旬から9月上旬頃。
晩生(おくて)は12月から春先まで採れます。
定植時期は9月中旬頃です。
傾向として、早生にはミニサイズが多く
晩生には、がっちり重たいものが多いですね。
性格的に「待てない人」「はやく収穫したい人」には
早生系がいいんじゃないかな。
極早生(ごくわせ)の「初秋」は
8月に植えて10月下旬には収穫できちゃいます。
同じく極早生の赤キャベツ「ルビーボール」を
一緒に育てるといいです。
サラダに混ぜると色合いがキレイだし、
酢漬けにすると、より鮮やかな色が食欲をそそります。
ちなみに年内に収穫できる品種は
耐暑性があり、夏には強いけれど
寒さには強くないので
適期適作を守ってあげてくださいね。
2:畑の土を準備して苗を植えよう!
苗を植える2週間くらい前までに
畑には苦土石灰をまきましょう。
理由は、
土の pH が酸性に傾くと キャベツが柔らかくなってしまうので、
苦土石灰をまいて中和します。
また苦土石灰に含まれるマグネシウムが
リンの吸収を助ける働きがあります。
腐葉土や堆肥(牛糞など)も入れて
土づくりをしましょう。
その際、
カルシウム分が多い方がシャキッとするので
鶏ふんを入れてもいいね。
鶏ふんには、石灰分・カルシウム分が
多く含まれているからね。
ただし、鶏ふんの場合、夏の高温期間は発酵が進みすぎて
生育障害が起こることもあるので
使うなら少し涼しくなってからの方がいいかな。
また、畑で鶏ふんを使う場合は
苦土石灰の量は少なめにして調整を。
畝は、キャベツの場合、低めで大丈夫。
水はけの良い場所なら作らなくてもいいです。
大きくなるので、株間は30〜40cmぐらい。
植えつける前日の晩から、
ポット苗ごと3cmぐらいの深さの水に浸けるなどして
たっぷり水を与えてください。
夏まっさかりの暑い時期なので
根を切っちゃうとリスクが大きくなるから
根を切らないように。
ポットから、そのままポコッと抜いて植えた方がいいですね。
水は、しっかりあげましょう。
1回萎れちゃうと生育が遅れちゃうし、
いい野菜にならなくなるので
葉がピンとなった状態を保ってあげて。
水のやり過ぎもいけないよ。
土の表面にマルチを被せるなら
黒色だと地温が上がり過ぎて
根腐れする可能性があるので
夏場は銀マルチがいいかな。
もしくは、草抜きが大変だけど、何もしないで。
3:プランターで育ててみよう!
キャベツはプランターでも育てられます。
マンションやアパートのベランダで
栽培に挑戦してみませんか。
プランターで栽培するならば
培養土を使えばいいけれど
肥料分が少ない培養土の場合は
水はけ・水持ちのいいもの(赤玉など)を
1〜2割混ぜたり、
腐葉土や牛ふん、油かす系の有機肥料、
化成肥料など元肥を混ぜた方がいいですね。
ただし、マンションだと
ニオイの心配があるからね。
「洗濯物が臭くなっちゃった」とか
隣のベランダから苦情がこないように
肥料は、化成肥料を使った方がいいと思います。
暑い時期なので、プランターの場合でも
土の表面に何かを施しておいた方がいいでしょう。
敷わらでもいいし、腐葉土でもいいと思います。
4:防虫対策をしっかり!
キャベツ栽培で一番大事なことは
苗を植えたらすぐ「防虫ネット」をかけること!
モンシロチョウが、あっという間に
葉に卵を産んじゃうので
速攻、ネットをかけましょう。
トンネル支柱を立てて
その上から防虫ネットをかぶせます。
ネットが風で飛ばないように
洗濯バサミなどでしっかり固定してね。
ムシが入らないよう、隙間をあけないようにしてくださいね。
ムシが中に入っちゃったら
もう、大変です(笑)。
実は、私も失敗したことがあるんです。
苗を植えて3日ぐらい経ってから防虫ネットをかけたら
すでに卵を産みつけられた後で
気がつくと
キャベツがアオムシに食べられて棒状に(涙)。
プランターの場合も、もちろんです。
支柱が立てられる菜園プランターなどを使って
しっかりネットをかけてください。
害虫予防は
薬剤よりも
防虫ネットが1番だと思いますよ。
そのほか、
コンパニオンプランツと言ってね、
一緒に植えるとお互いに良い影響を及ぼしあう関係の
植物同士を指すんだけど、
成長を促したり、病害虫を抑制しあったりするので、
これを活用する方法もあります。
キャベツのコンパニオンプランツである
ニラ、ネギ、ニンニクを一緒に植えると
これらの植物が含むアリシンというニオイ成分が
害虫を遠ざけてくれますよ。
モンシロチョウやコナガは赤色を嫌う性質があるので
赤色のサニーレタスとキャベツを一緒に植えるのも効果的。
サラダを作るときにも、赤系が入ると映えていいよね。
5:追肥、そして、ひたすら防虫!
追肥は、暑さが少しおさまった頃、
彼岸花の咲く頃かなぁ。
植えつけて1か月〜1か月半くらい経って
本葉の数が7〜8枚になったら
一般的な化成肥料(8-8-8など)を与えてください。
追肥と水やり以外の作業といえば、
ひたすらムシの警戒です。
ある程度、大きくなって
葉っぱがしっかりしてくれば
かじられる可能性は少なくなりますが
柔らかくて一番おいしいとき、
害虫に一番狙われるので気をつけましょう。
その後、10月下旬ぐらいかな、
防虫ネットがパンパンになってきたら
思い切ってネットをはずします。
そこからが勝負です!
6:気をつけたい害虫あれこれ
キャベツに1番多い害虫は、
モンシロチョウのアオムシ。
だけど、アオムシはね、
きちんとネットをしておけば
入ってこないからね。
もし、モンシロチョウのアオムシを見つけたら
即刻つまみ出しましょう。
コナガの幼虫も、
卵を産み付けられなければ大丈夫。
土の中にいるハスモンヨトウは
夜に土の中から這い出してきて
キャベツの葉を食べちゃうんですよ。
バリ、バリ、バリって
かじる音が聞こえるんですよ。
夜盗むから「ヨトウ」って言うの。
幼虫の体長は大きくなると4cmぐらいになる。
見た目は、茶色いアオムシだね。
キャベツ1玉に2〜3匹いるかなぁ。
僕らは夜、頭に懐中電灯くっつけてね
素手で捕まえます。
触りたくなければ、割り箸で。
厄介なのはシンクイムシ。
シンを食べてしまうから
次の芽が出なくなるんですよ。
いつのまにか幼虫がついていて、
いつのまにか芯の中に、こっそりと潜り込んでいるんです。
直径1mmちょっと、長さ4〜5mmの
イモムシみたいな形状をしています。
シンクイムシのように、初期育成の段階で
芽をつぶされると致命的。
これを防ごうと思うと、定植した直後に
食害する虫を忌避するための薬剤をまく必要があります。
小さい虫が多いので
栽培の省力化、手間を省くという意味ではいいのかな。
収穫に影響ない時期に
オルトランなどの薬剤を使います。
土の中にひそむ虫を植えつけ前にやっつける
「土に混ぜる薬剤」もありますよ。
さらに、害虫予防について知っておきたいことは
肥料のやりすぎはNGなこと。
実は一昨年、肥料を多くしたものと、
通常より少なめにしたものを
並べて試験栽培したんです。
そしたらね、肥料を多めに与えたものは
ものすごくたくさん虫に食べられちゃった。
肥料を多めにやると、
柔らかくておいしいキャベツができるからね。
肥料を抑え気味にした方は
虫の被害が少なかったので
農薬の使用量を少なくするには、
肥料を少なめにして
かたく育てた方がいいです。
ちょっと味は落ちるけど
ムシの嫌いな人は肥料を少なめにしましょう。
害虫を見つけてしまったら
即効性のある薬を使うしかありません。
ハンドスプレータイプの薬剤か、
粉剤を使うことになります。
それを避けるために、
植えつけと同時にオルトランをまくなど、
薬剤は、できるだけ栽培初期に使うようにしましょう。
7:どういう形になったら収穫できる?
どれも美味しそうに見えるんだけど(笑)
手で上から押さえてみて、
かたいか、ふわっとするかで
実が詰まっているかどうか分かります。
かたく締まっているものを収穫しましょう。
結球している部分の下に包丁を入れて
パキッと根元を切ります。
ある程度、力は必要ですね。
収穫期を逃すと割れてしまうし、
董立ちすると美味しくなくなるので
食べごろと思ったら早めに収穫しましょうね。
Q&A
Q:プランターに向いている品種は?
A:大きくなるとプランターに入りきらないから
早生系の小さい品種がプランターには向いていますね。
グリーンボウル系の品種は
ミニサイズだからプランターでも育てやすいですよ。
Q:ムシが苦手です! オススメの薬と使い方を教えてください。
A:薬剤を使用しましょう。
オルトランやアドマイヤー粒剤をパラパラっと根元にかけて
土壌に混ぜておくと、コガネムシの幼虫などの
害虫が土の中で死んでくれるので
見ることもないですね。
ハンドスプレータイプの薬剤や、
土の中にひそむ虫をやっつける
「土に混ぜるタイプ」の薬剤もあります。
ただし、農薬を使う際は
パッケージの裏側をよく読んでね、
収穫の何日前まで使っていいかを
確かめて使ってください。
Q:どんな病気に気をつけたらいいですか?
A:軟腐(なんぷ)病ですね。
地面に接している部分が茶色く変色して
ベトベトして腐っちゃう。
肥料をやり過ぎて「チッ素」が効き過ぎると
発生しがちです。発生すると抜いて処分するしかないから
肥料をやり過ぎないように気をつけて。
でもね、肥料が少ないと
かたくなって美味しくなくなっちゃうんだよね。
でも、かたくなったら煮物とか、ロールキャベツにすれば食べられるから
初めての人は肥料少なめで栽培しよう。
投稿日:2022年8月10日