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INNATURA

矢澤先生によるコラム 教えて!矢澤先生!

育種家として第一線で活躍する
矢澤秀成さんによる園芸の旬な情報をお届け

第25回うま〜いナスを作るには!?

みなさん、こんにちは!

園芸研究家の矢澤秀成です。

 

私のナス好きは

うま〜い「水ナス」の発見から始まりました。

会津や大阪・泉佐野の水ナスは

しぼったときの「つゆだく感」が

びっくりするほどすごくてね、

生でもおいしい!!!

浅漬けも最高!!!

水ナス

 

そこで、うまいナスを見つけるために、

ありとあらゆるナスを栽培してみたんですね。

水ナスはもちろん、長ナス、丸ナス、米ナス、緑ナス、白ナス…。

丸ナス 早生大丸
米ナス くろわし

 

その中で最近、私が一番うまいと感じているのは「白ナス」です。

 

白ナス

 

その話をしていたら

今年はタイムさんの一部店舗で

白ナスの苗を取り扱ってくださるというではないですか。

白ナスは「焼き」がオススメですよ!

 

とにかく、うま〜いナスを食べたければ

自分で育てるのが一番!

ということで、第25回は「ナス」についてお話します。

 

 

1:ナスについて

 

ナスの魅力といえば、

植え付けた1か月後(6月頃)から中秋の頃まで

長い間収穫できることです。

原産地はインド。

あったかい気候を好む野菜で、生育適温は20〜30℃です。

 

品種は、かなり多いです。

一般的な長ナスだけでも、

「千両2号」などの長卵型、

「黒陽」などの中長ナス、「庄屋大長」などの大長ナス、

といったように分類され、数多くの品種が存在します。

千両2号
黒陽
庄屋大長

 

ちなみに、冒頭で紹介した「白ナス」や、

緑ナスはイタリア系。

緑ナス

ヨーロッパ生まれで皮が硬いんですよ。

だけど、皮の内側はめっちゃくちゃ

トロトロに柔らかくて、うまいんです!

調理法は、焼けばいいだけ。

お醤油をたらすだけ、

味噌をつけるぐらいで十分おいしいので

困ったときの一品としても助かりますよ。

 

 

2:植え付け前にやっておきたいこと。

【苗】

ナスの苗は4月頃から店頭に並んでいますが

気温が上がらないと育てるのは難しいので

気候や苗の状況を見ながら

5月の連休明け頃から場合によっては

6月まで待って定植します。

 

その間に苗(3寸ポット苗)の根が

ポットの中で回ってしまうと

定植後の土になじまなくなるので

早めに購入した苗は、

ちょっと大きめの5〜6号ポットに仮植し、

根を動かしてから定植するほうがいいですよ。

 

仮植前には、30分間ぐらいでいいので

ナス苗をポットごと約5cmの深さの水に漬けておきます。

植え付けるポットの方も土ごと水に漬け、

それから植え付けた方が、より定着すると思います。

 

こうやって一旦、仮植して根詰まりを防ぐと

一番果からおいしいナスを収穫できます!

反対に、仮植の作業を省くと

一番果が硬くなったり、落ちたりして

おいしくなくなるので気をつけてくださいね。

 

 

【畑】

ナスの好きな場所は、風通しの良い日なたです。

条件にあった場所を選ぶと同時に、

ナス科なので連作障害を考えないといけません。

 

畑の場合、直前にナス科の作物を植えていたら

できるだけ別の場所にしましょう。

どうしても、その場所しかない場合は

植え付ける2週間以上前に畑を耕し、

堆肥・苦土石灰を入れて土壌改良しましょう。

苦土石灰

あるいは、接木苗を用意しましょう。

ナス接木苗

 

畑の水はけが悪い場合は、

畝を作ってもらった方がいいですが、

水はけが良い場合は、

無理に畝を作らなくてもいいと思います。

 

元肥については、ナスは肥料食いなので

(肥料をたくさん必要とするので)

肥料切れしないように。

「野菜用の緩効性化成肥料」など

効果がゆっくりと長く続く肥料を選び、

パッケージをよく見て適量入れましょう。

化成肥料

 

 

【鉢・プランターの場合】

新品の鉢やプランターなら、

買ってきた野菜用の培養土を入れるだけで

すぐ苗を植え付けられますが

 

もしも、ナス科の野菜を作ったあとだったら

鉢・プランター本体もよく洗ってください。

理想を言えば一旦、別の科の野菜を作るなど、

ナス科の連作にならないようにするとベストです。

花と野菜の土

 

どうしてもナス科で連作する場合は

土を全部入れ替えること。

入れ替えが大変だという場合は接木苗にしましょう。

接木苗でも連作障害が出ることはありますが

台木に勢いがあるので

成功する可能性は高くなります。

 

 

3:苗を植え付けよう!

1番花のつぼみがふくらんできたら

定植の合図です。

 

9月の秋ナスを収穫する頃まで育てると

ナスは相当大きくなるので

畑の場合、苗と苗の間は

1mから1m30cmぐらいあけていいと思います。

プランターには1苗でいいです。

尺鉢に、どんと1つでもいいですよ。

 

そして、畑でも、鉢・プランターでも、

苗の段階から仮支柱を1本

挿しておいた方がいいです。

 

植え付けたら水をたっぷり注ぎましょう。

 

 

4:伸ばす枝は3本!

ナスをうまく育てるポイントは、

伸ばす枝を3本にすることです。

 

最初に咲いた花(1番花)のすぐ下の、

元気の良いわき芽を2つ残し、

それより下のわき芽は全て

付け根から摘み取ります。

わき芽摘み

 

「3本仕立て」と言うんだけど、

ナスが1個実った、

まっすぐ伸びた主枝が1本あり、

その下から2本ピュピュッと枝が出る状態。

それが、一番いいイメージです。

枝が垂れないよう、

支柱を立てて誘引することも忘れずに。

 

5:日ごろの管理もしっかり!

【水やり】

ナスは水を好む野菜。

水が不足すると硬いナスになりますが、

極端に水切れさせなければ大丈夫です。

 

私の住んでいる長野県は雨が多いから、

ナスの水やりは気が向いた時だけで十分なんですが、

雨の少ない瀬戸内地域の場合、

土の表面が乾いていたらしっかり水をかけてあげましょう。

 

水分不足になると

実がふくらみきらず、成長が止まることもあります。

お尻の方にヘンなキズみたいな跡がつくことも。

 

プランターや植木鉢の場合、

5月〜6月は1日1回、

7月〜9月は1日1〜2回くらい、

しっかり水をあげてほしいです。

雨が降っていない夕方には葉水も。

 

 

【追肥】

ナスは肥料を好むので、

植え付けて1か月後くらいには追肥を与えます。

この頃、枝を伸ばすための肥料が必要なんですよ。

 

私は、牛ふんと魚粉を混合した有機肥料を使っています。

甘みが強くなるからね。

でも、一般の方には扱い方が難しい部分もあるので

化成肥料を与えてあげてください。

 

 

【土寄せ】

ある程度、繁ってきたら、

細かい根っこが地上に出てくるので、

ときどき、株元に

土寄せ(土をかけてあげる)してあげましょう。

ついでに落ち葉もしっかり片付けてください。

 

 

6:収穫&切り戻し剪定

ナスの実ができたら早めに収穫しましょう。

実を大きくすると株も傷むし

タネが入って味も落ちます。

待ち過ぎると腐ることもあるので

ある程度のサイズになったら収穫したほうがいいです。

小さめぐらいのほうがおいしいですよ。

 

収穫の際はナスのトゲに注意しながら

(トゲなし千両ナスという品種もありますが)

手袋を使い、ハサミでカットしてくださいね。

 

ちなみに、ナスは雨が降った後のほうがうまいです。

雨が降ると翌朝、実がぐんとふくらみます。

そのタイミングで収穫すると、うまいナスが採れますよ。

 

そして、収穫するたびに

実がなっていた枝(側枝)を剪定しましょう。

この「切り戻し剪定」をすることによって、

樹勢を維持できます(イラスト参照)。

切り戻し剪定

 

また、細めの側枝を随時、間引きながら

摘芯(芯止め)し、

わき芽を出させて収穫量を増やしましょう。

 

側枝の先に花が1つ咲いたら

その花のすぐ上の葉1枚を残して摘芯。

花が実になったあと収穫したら、

主枝に近い第1わき芽のみ残して切り戻してください。

このように摘芯・収穫・切り戻しを繰り返し

草姿を安定させます。

 

 

7:秋ナスの準備をしよう!

【更新剪定】

つぎつぎに実がなると木の勢いが弱まり、

品質が落ちてくるので

7月下旬ぐらいからお盆前までくらいに

枝の切り戻しと

秋ナス用の追肥を行います。

 

枝は意外に伸びるので1/3くらいは切りましょう。

先端に花がついていようが

実があろうが気にしないで、

全体的に小さくします。

 

 

【根切り】

剪定に加えて、やっていただきたい作業が

「根切り」です。

 

株元を中心に直径40cmぐらいの円を描くように

剣先スコップの刃先が全部埋まるぐらい刺して、

伸びた根っこを切ってあげます。

剣先スコップ

 

根が切れると新しい根が出てくるので

さらに、おいしい実がなりますよ!

 

8:害虫に気をつけて見つけたらすぐ対処を!

気をつけたい害虫は、

アブラムシやハダニ、コナジラミ、アザミウマなど。

 

アザミウマは黄化えそ病、

アブラムシはモザイク病を媒介するなど

厄介な害虫です。

 

アブラムシは、少量の場合なら捕殺。

または、牛乳をスプレーすると

呼吸困難になって弱っていきます。

しかし、大量発生した場合は農薬で退治するしかないでしょう。

 

ハダニ対策としては葉水をこまめに行うこと。

特に7月〜8月頃は、ハダニがつきやすいので

葉っぱのオモテ裏にシャワーで水をしっかりかけて

ハダニの繁殖を防ぎましょう。

 

それから、イエロートラップと言うのですが、

ハエ取り紙のように両面がペタペタするテープを

支柱の上あたりにつけておくだけで

コナジラミ、アザミウマ、アブラムシなど

いろんな害虫をいっぱい捕らえられます。

テープは1か月1回を目安に取り替えてくださいね。

粘着シート

 

ナスは食べ物だから、

できれば化学系の薬品を使いたくないですよね。

ムシの量が少なければ自然農薬という選択肢もありますが

大量に出たら化学系農薬をかけるしかないので

早めに気づくことが大事です。

 

農薬を使う場合は、

除虫菊の成分など植物由来成分で作った新商品が出ているので

そういったものを選ぶといいと思います。

パイベニカ
ベニカナチュラル

 

なお、雨が降る前に薬散すると流れちゃうので

薬散は雨の後、葉っぱが乾いてから行います。

雨の後すぐだと葉っぱが濡れていて効果が弱まるので

葉っぱが乾くまで待ちましょう。

 

気をつけたい病気としては

黄化えそ病、モザイク病、うどんこ病、斑点病などですが、

 

私が昨年、ナス栽培で苦労した病気は白絹病です。

根元のあたりが白い糸で覆われ、

やがて立ち枯れてしまう病気。

昨年は、これのせいでナスがパタパタと倒れたんですよ。

 

雨の翌日にカーッと晴れると

白絹の病原菌が土壌で繁殖し

大発生しやすくなります。

 

予防は難しいので

根元に白い糸を見つけたら

早めにナスを収穫してください。

 

 

Q&A

Q:複数のナスが密着したような実ができました。なぜでしょうか?

A:花芽分化期の温度が低いと、実がくっついちゃうことがあります。

肥料のやり過ぎ、という可能性もあります。

不思議な形かもしれないけど食べて大丈夫ですよ。

 

 

Q:ナスの皮にツヤがありません。

A:太陽の光があたり過ぎていませんか?

水分は足りていますか?

日差しが強くあたったり、水分不足になったりすると、

テカリがなくなることがあります。

そのナスは食べられるけれど

残念ながら、おいしくないでしょうね。

 

 

Q:ナスの実が落ちてしまいました。どうして?

A:生理落果という現象ですね。

花から実に移行する際、

ポトッと落ちちゃうことがあります。

原因は、いくつか考えられます。

水分不足のため、どこかを落とさないと耐えられなくなったか、

実がつき過ぎて、このままだと耐えられないので落としたのか。

大概、ナス自身の生命が維持できなくなってくると

生理落果が起こります。

水が少ない場合は、しっかり水をあげる、

実がつき過ぎている場合は、実の数を2〜3割減らしてあげる。

早めに収穫することでも生理落果は防げます。

 

 

Q:日中にしおれています。夜には回復するのですが。

A:青枯病の初期症状という可能性もありますが

単純に水をあげなかったからしおれたという場合、

復活したように見えても多分、テカリがなくなって

おいしくないナスになっちゃうでしょう。

できるだけ、ナスはしおれさせないように

しっかり水をあげましょう。

 

一方、この症状が出る時、

ネキリムシ(地中に根っこをいじめるムシ)や

その類のムシがいる可能性もあります。

 

ムシが原因であれば農薬を使うしかない。

だけど、食べ物だから、

浸透移行性農薬で全滅させるよりは、

「ネキリベイト(住友化学園芸)」など、

土中に隠れたムシを誘い出して薬を食べさせて退治するという

誘殺剤を使うほうがいいでしょう。

誘殺剤は、ムシの数を若干減らす程度しか

効果は期待できませんが。

 

 

投稿日:2023年5月17日

 

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矢澤先生のプロフィール

ホームセンタータイム
ガーデンアドバイザー
矢澤 秀成 先生

矢澤 秀成 先生

現在、やざわ花育種株式会社、葉乃畑合同会社に所属し、代表取締役社長を務める。
種苗会社植物バイオ研究室に16年勤務し、多くの花や野菜を開発する。その間、国内新花コンテストで金賞を含む18回入賞、社内では社長賞2回受賞する。
種苗会社退職後、大手ホームセンター商品開発部長及び顧問、大手肥料メーカー顧問、パテント会社代表、野菜市場顧問、ガーデンセンター顧問などを歴任。多くの植物園などのヘッドガーデナーや監修を行う。
育種家として、多くの個性的な花や野菜、漢方薬などの新種育成を行っており、18年前から全国各地の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う。子供たち自身が交配して世界に一つだけの小さな種を作り、その種を大切に育て世界に一つだけの花を咲かせる授業を行っている。さらに「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、2002年から地域の花好きを育て、そして花の街を育てる「花のマイスター養成制度」を提案しスタートする。現在全国各地でマイスターを育てる花の学校を開校し、マイスターと共に花いっぱいの公園づくりや街づくりに取り組んでいる。
NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」、NHK長野「ひるとく」、BS-日テレ「麗しの庭散策」、SBCラジオ「ずくだせ エブリデイ」、篠ノ井有線放送「花暦」などの多くの園芸番組の講師として出演中。全国で講習、講演活動を多数行い、園芸関連多数執筆中。