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矢澤先生によるコラム 教えて!矢澤先生!

育種家として第一線で活躍する
矢澤秀成さんによる園芸の旬な情報をお届け

第73回花壇の「土づくり」は10月に!

みなさん、こんにちは!

園芸研究家の矢澤秀成です。

 

ようやく猛暑も落ち着いて

ずいぶん過ごしやすくなりました。

10月は、秋冬から来春に向けての

花壇の準備にぴったりの季節です。

 

たとえば、これから植える宿根草には

クリスマスローズやアスチルベ、

ホスタ、ヒューケラ、アジュガ…、

いろいろありますね。

チューリップやムスカリなどの球根類と合わせるのも

いいですよね。

もちろん、パンジー、ビオラといった

冬を彩る一年草もたくさんあります。

ホスタ
アジュガ

「どんなお庭にしようかなぁ」

と夢や憧れをイメージしながら

少しずつでもいいので

お庭の花壇の「土づくり」に

トライしてみませんか。

 

ということで、第73回は、

花壇の「土づくり」についてお話します。

 

 

1:ふかふかの土をめざそう!

植物を元気に育てるには

根を育てることがとても大切です。

根を育てるには、水と養分と空気が必要。

そのために、水はけ・水もちがよくて、

栄養と空気を適度に含んだ土を

つくってあげることが

私たち人間の役目なんですね。

 

本を読むと

「水はけがよく、水もちがよい土は

団粒構造をしています」みたいに

書かれていると思うんですが

「団粒構造の土」って、何だかわかりにくいでしょう?

 

だから私は「ふかふかの土」と表現しています。

 

水分と栄養を施しても

土の中に空気がなかったら植物は育ちません。

ふかふか=空気が入っている状態なので

「ふかふかの土」の手触りをめざして

土づくりを一緒にがんばりましょう!

 

 

2:土づくりの前に!

「ふかふかの土」をつくる前に

10月の花壇には、

夏の植物が、まだ残っていると思いますので、

まず、それらのお片づけをしましょう。

 

ひまわりとか、マリーゴールドとか

夏から初秋にかけて花壇を彩ってくれた植物たちを

ハサミでチョキチョキチョキっと

5cmぐらいの大きさに刻んでから

土の中にすき込んじゃう。

 

その土地にあった有機物を

その土地に戻してあげる作業をすることで

この後の花壇の大事な肥料になりますよ。

 

あと、刈り取った雑草も小さく刻んで

これも土にすき込みましょう。

根っこは取り除かなくてもいいですからね。

ただし、雑草の種には気をつけてください。

土にすき込むのは種の付いていない部分。

種の付いた部分は燃えるゴミに出した方がいいですよ。

 

 

3:植物は弱酸性の土が好き!

次は、土の酸度調整です。

 

日本の土は、酸性雨などの影響によって

酸性方向に傾きがちなのです。

だけど、ほとんどの植物は弱酸性の土が好きで、

土が酸性に傾くと根の先が焼けてしまって

栄養や水分を吸収できなくなってしまいます。

 

何もしないと土は酸性のままになるので

ちょっと良くないですよね。

ということで

アルカリ性の資材を加えて

土を弱酸性に調整してあげます。

 

ここで作業に入る前に

できれば酸度をはかってみましょう。

園芸家の私たちはpHメーターを使いますが

ひとつ1〜2万円ぐらいするので、

リトマス試験紙みたいな、酸度を調べられる測定用紙が

ホームセンターなどでお手頃な価格で

手に入ると思いますのでこれで、

お庭の土の酸度を調べてみてください。

pHメーター
比色式ph検査キット

理想は弱酸性。pH5.5〜6くらいです。

 

花壇の土は1年に1回は

酸度調整した方がいいので

春か秋の植え替え時に酸度をはかって

調整するといいですよ。

 

酸性に傾いた土を弱酸性にするには

通常、苦土石灰を適量まいて、よく撹拌します。

米のもみ殻を蒸し焼きにして炭化させた

もみ殻くん炭を使ってもいいですよ。

ただし、くん炭は強いアルカリ性なので

使う量は、土の量の5%以下にしましょう。

それ以上入れちゃダメです。

5%以上入れちゃうと

アルカリ性が強くなり過ぎて

根が溶けちゃうんでね。

苦土石灰

もし、苦土石灰をまいた後に

くん炭を加えるなら2〜3%くらいに

抑えた方がいいです。

くん炭は少なめにね。

くん炭

気をつけたいのは

酸性の土が好きな植物もいること。

ツツジの仲間やブルーベリー、フジ、サツキなどは

酸性の土の方が好きだということも覚えておいてください。

 

植物の種類によって最適な土は異なるので、

そこを勉強するのも大事ですよ。

 

 

4:堆肥で土に栄養補給!

苦土石灰をまいた後、

1週間以上、そのままにしておいてから

堆肥を混ぜてあげましょう。

 

私は完全発酵の腐葉土を使っていますが

一般的には、牛ふん堆肥やバーク堆肥が

よく使われますね。

 

いずれにしても、よく発酵したものを

使ってくださいね。

腐葉土
牛ふん堆肥
バーク堆肥

 

5:ブレンドで10年もつ土に!

冬の花壇を彩るパンジー/ビオラなどの1年草の場合は

花を楽しめるのが初夏までだから、

およそ半年先までのことを考えればいいので

土の質に深くこだわる必要はないのですが

 

宿根草の場合、その場所に根をおろしちゃうので

10年たってもその場所が快適であるように

硬質赤玉土や硬質鹿沼土を使うことを

オススメしています。

硬質の赤玉土
硬質の鹿沼土

硬質の土は、1回焼き固めているので

粒が硬く、長い間、壊れないから

水はけも、空気の通りもよくなるんですね。

 

値段は、硬質のほうが1.5倍くらい高価ですが

硬質でなければ土の粒が粉々に崩れて

泥になっちゃうんですね。

すると、通気性も排水性も悪くなるので

根が傷んで宿根草がダメになってしまうんですよ。

 

宿根草は一度植えると

10年くらい植えっぱなしになるので

宿根草には硬質の土を使った方がいいです。

 

私の実感では

値段が1.5倍でも、持ちは10倍だと思います。

 

宿根草は、最初の植え時が肝心。

その後の手間をラクにできるように

最初の資材は、いいものを使いましょう。

 

もしも、市販の安価な草花用培養土を使うならば

それに硬質赤玉土を2割くらいプラスして、

さらにパーライトを5%ぐらい加えるといいですよ。

パーライトも粒が潰れないので宿根草に有効です。

ここに完熟の腐葉土を2割ぐらい加えれば、もっといいですね。

腐葉土は、より細かく分解されたものであれば、なおいいです。

 

ブレンドの割合は、植物によって若干異なりますが、

約半分ぐらい足りないものを加えて

アレンジする方法もありますよ。

これらの硬質赤玉土、パーライトなどは

発酵しないので植え付けの直前に加えても大丈夫です。

パーライト

 

6:秋植えの球根類も同様に

秋植えの球根類を植える土も、

宿根草と同じ考え方で大丈夫ですよ。

 

例えばチューリップを翌年春に咲かせた後、

抜いてしまうなら1年草の考え方でいいです。

私みたいに1つのチューリップを

10年〜15年も咲かせたいと思ったら

やっぱり土にこだわらないといけないんですね。

 

年々、だんだん土が締まってきちゃうので

硬質赤玉土や硬質鹿沼土、パーライトなど

潰れにくい土を使った方が絶対いいです。

 

ときどき質問で

「スイセンの花の数がどんどん減っている」

とお聞きするんですが、それは、そういうことなんですね。

 

植えつけた時とは空気の通りがまったく変わっちゃって

土が粉々になるというか、泥みたいになっちゃう。

すると、花が上がらなくなってきます。

ヒヤシンスやラナンキュラスラックス、ムスカリなど

秋植えの球根類も、みんな同様ですよ。

 

10月は、まだ暑い日もあるけど、

土づくりをがんばると、きっと春に

いい景色が見られますよ。

 

 

7:最近の気温について考えること

今年、注意したいのは「気温」ですね。

 

昨年の10月下旬にチューリップの球根講座を

開催したんですけども

暑くて植えられる状況じゃなかったので

11月上旬にスケジュールを変更させていただいたんですね。

 

ちょっと前まで、どの本にも

秋の球根を植えるのは10月って

書いてあったと思うんですが、

暑かったら11月でもいいですよ。

 

気温がしっかり下がったかどうかを

見定めて植えないと

球根が土の中で腐っちゃうので気をつけてください。

 

私が、球根の植えどきを決めるのに

目安にしているのは「落葉」です。

 

バラの葉やアジサイの葉が黄色くなってきたら、

または落葉したら植えつける、としています。

それでもね、

昨冬はバラも1月くらいまで葉っぱが落ちなかったので

神奈川の方では強制落葉させました。

 

 

8:おまけ:プランターの土を再生するには

プランターで使った培養土については

再生して、再び使っています。

 

まず、一番粗いメッシュのふるいで振るって、

土の中に混ざっている根っこや葉っぱなどを取り除きます。

 

次は一番細かいメッシュのふるいで振るいます。

 

目が一番粗いのと一番細かいものの

中間の大きさの土だけを取り出して、

ここに赤玉土やパーライトを混ぜて

ふかふかの土になるようにします。

1週間ぐらい様子を見て

ふかふかの手触りを確かめてから

使ってくださいね。

 

このときに、カルスNC-Rなどの再生剤を使うと

再生までの時間が早くなります。

説明書きをしっかり読んで正しい方法で

使ってみるといいと思いますよ。

土の再生材
土の再生材

 

第74回目は、ソラマメについてお話しします。

10月22日ごろ投稿ですので、次回もお楽しみに!

 

投稿日:2025年10月8日

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矢澤先生のプロフィール

ホームセンタータイム
ガーデンアドバイザー
矢澤 秀成 先生

矢澤 秀成 先生

現在、やざわ花育種株式会社、葉乃畑合同会社に所属し、代表取締役社長を務める。
種苗会社植物バイオ研究室に16年勤務し、多くの花や野菜を開発する。その間、国内新花コンテストで金賞を含む18回入賞、社内では社長賞2回受賞する。
種苗会社退職後、大手ホームセンター商品開発部長及び顧問、大手肥料メーカー顧問、パテント会社代表、野菜市場顧問、ガーデンセンター顧問などを歴任。多くの植物園などのヘッドガーデナーや監修を行う。
育種家として、多くの個性的な花や野菜、漢方薬などの新種育成を行っており、18年前から全国各地の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う。子供たち自身が交配して世界に一つだけの小さな種を作り、その種を大切に育て世界に一つだけの花を咲かせる授業を行っている。さらに「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、2002年から地域の花好きを育て、そして花の街を育てる「花のマイスター養成制度」を提案しスタートする。現在全国各地でマイスターを育てる花の学校を開校し、マイスターと共に花いっぱいの公園づくりや街づくりに取り組んでいる。
NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」、NHK長野「ひるとく」、BS-日テレ「麗しの庭散策」、SBCラジオ「ずくだせ エブリデイ」、篠ノ井有線放送「花暦」などの多くの園芸番組の講師として出演中。全国で講習、講演活動を多数行い、園芸関連多数執筆中。