第44回あまくておいしい!「トウモロコシ」を育てよう
みなさん、こんにちは!
園芸研究家の矢澤秀成です。
突然ですが、じつは私、
トウモロコシが大好きなんです。
毎年、静岡まで遠出して
いろんな品種のトウモロコシの種を買い集め
軽井沢で育てて味比べをします。
仕事!? ではありません。
単にトウモロコシが好きだから(笑)。
ひと粒残らずキレイに食べるので
いつも驚かれます。
それくらい大好きです。
トウモロコシは鮮度の高いうちに食べるのが
1番おいしいので、ぜひ、みなさんにも
家庭菜園で育ててほしいな。
日当たりさえ気をつければ
ベランダや、プランター栽培でも
立派に育てられますよ。
ということで、第44回は
「トウモロコシ」のお話です。
目次
1:トウモロコシについて
トウモロコシは、コメ・小麦と並ぶ
世界三大穀物のひとつです。
イネ科トウモロコシ属の一年草で
原産地はアメリカ大陸。
生育適温は20〜30℃。
寒さには弱いけれど耐暑性はあります。
大きく3つの種類に分けられますが
家庭菜園用といえば
茹でたり焼いたりして食べる「スイートコーン種」。
その他の2種類は、
ポップコーンの材料として使われる爆裂種と、
家畜の飼料やコンスターチの原料となる馬歯種です。
夏野菜を代表するトウモロコシですが
夏と秋の年2回収穫が可能です。
とはいえ夏の方が断然、おいしいので
今すぐ育てはじめましょう!
2:品種
スイートコーン種には、
なんと100種類以上の
バリエーションがあります。
実が白っぽいホワイト系、
白と黄色が混ざったバイカラー系、
生で食べられる品種もあります。
2023年には赤いトウモロコシも登場しましたが
最近の人気は、やはり
甘みの強い黄色系品種ですね。
私のお気に入りは
フルーティーな甘みがたまらない
ゴールドラッシュや
「甘美なトウモロコシ」と評判のドルチェシリーズ。
ホームセンターでは
苗よりもタネのほうが
扱っている品種の数が多い印象ですが
タネはね、
地温が低いと発芽しなかったり、
発芽までに長くかかったり
ちょっと難しいところがあるので
初心者の方には
苗から育てることを
オススメしたいですね。
どうしてもタネから育てたい場合は
3寸ポットにタネを3粒ぐらいまき、
発芽後、一番いい状態の苗だけを1本残し、
あとの2本は抜かずに
根元で切って間引いてください。
さらに、葉っぱが2〜3枚ぐらいになったら
畑に、あるいはプランターに植え替えましょう。
ポットの中で根っこがぐるぐる巻いてしまうほど
伸びてしまうと
その後の根の成長が悪くなり
草丈も伸びなくなってしまうので
植え替えのタイミングを逃さないようにね。
苗を購入する場合も、
売り場にトウモロコシの苗が並んだら
できるだけ早く購入して
ポットの中の根が伸び過ぎないうちに
定植するようにしましょう。
3:植えつけ
畑に植える場合は
日当たりが良く、
水はけと風通しも良い場所を選んで
苗を植えつけます。
その準備として
植えつけの1〜2週間前に、
苦土石灰を適量まいてpHを中和させ、
堆肥なども混ぜて
ふかふかの土づくりをしておきましょう。
畝の高さは10〜15cmぐらいにします。
日中の気温が20℃以上になったら
苗を約30cm間隔で植えつけます。
これ以上、密な間隔で植えると
茎がヒョロヒョロと細くなってしまうので
気をつけてくださいね。
そして、トウモロコシが受粉しやすいように
1条(1列)ではなく、2条(2列)植えにして
受粉率を高めます。
トウモロコシは他家受粉なので
1株だけ育てても受粉しづらいんです。
だから、同じ品種のものを
たくさん育てたほうがいい。
花粉が飛ぶタイミングと
雌しべの出てくるタイミングが合うように
その確率を高めるには
株があればあるほどいいです。
なお、トウモロコシには連作障害はないので
毎年、同じ場所に植えても大丈夫ですよ。
鉢植え・プランター栽培の場合は、
大きめの鉢またはプランターに
野菜用培養土を入れて植えつけます。
こちらの場合も
1株だけでなく最低2株以上植えて
日当たりや風通しの良い場所で育てましょう。
4:水やり
植えつけ時には、たっぷりと水やりします。
畑の場合、根が張ってしまえば
ほとんど水やりは不要。
鉢植え・プランター栽培の場合は、
土の表面が乾いたらたっぷりと
水を与えてください。
注意したいのは
花が咲いてから収穫までの時期。
この期間に水切れが起こると
実がマズくなってしまいます。
ところが
花が開花する前後や、
実が成熟する前後の時期は
夏場の暑い時期と重なるので
水切れが起こりやすくなります。
この時期に
土が乾燥しすぎないよう注意しましょう。
特に、ベランダで育てている場合は
雨が鉢やプランターに
当たらないことがあるので
定期的に水をやったほうがいいでしょう。
5:肥料
苗を植えつけた2週間後に
粒状の緩効性化成肥料を
適量まきます。
そのあとは、1か月に1回、
緩効性化成肥料を適量パラパラと与えましょう。
トウモロコシは「肥料泥棒」と呼ばれるほど、
肥料を必要とするんだけど
ドカン!と一気に肥料をやると
実が硬くなったりするので
追加の肥料は少しずつ足してあげるイメージ。
そのほうが、皮が薄くてウマいのが採れます。
そして
追肥をするタイミングで土寄せします。
軸が細くて支柱が必要そうだったら
支柱を立ててあげましょう。
根がしっかり張っていれば
支柱なしでも大丈夫です。
また、軸が太くてしっかりした品種ならば
支柱は必要ありませんが
マンションなどのベランダで
鉢植えやプランター栽培で育てると
日照不足になりやすく
ヒョロヒョロっとした軸になることが多いので
その場合は支柱を立てましょう。
6:人工授粉
トウモロコシは他家受粉なので
お隣の花の花粉が雌しべについてくれないと
受粉できません。
そのため、最低でも2株以上ないと
受粉できないのです。
風によって受粉できる場合もあるけれど
やはり、人工授粉の方が確実です。
軸の頂上に
雄花が咲く雄穂(ゆうずい)が出て
雄花が咲いて花粉が出てきたら
雄花を手で揺らして花粉を飛散させ、
雌穂(しずい)の
ヒゲのような雌しべに受粉させます。
雌しべ1本に1つの実(粒)がつきます。
全部の雌しべに花粉がしっかりつけば
たわわに実りますよ。
人工授粉を行うのは
午前中がいいですね。
午後になると、すでに花粉が
飛んでいっちゃってるかもしれないから。
人工授粉後から収穫までは
土が乾燥しないよう
水やりをしっかり行います。
なお、あまりに暑すぎると
受粉しないこともあります。
今年も酷暑が予想されているので
できれば早めの7月頃に
収穫できるよう
早く栽培を始めたほうが
いいんじゃないかなと思います。
そのためにも、
やはり苗で育てたほうがいいでしょうね。
花粉が出終わって
ちょっと黒っぽくなってきたら
雄穂を切り取ります。
花粉が出ている間は
黄色っぽくなっているので
すぐわかると思いますよ。
雄穂を揺らすと
バア〜ッと花粉が出てきます。
結構な量の花粉なので
絶対に分かりますよ。
花粉症の方は要注意です
花粉が出なくなったら、
雄花に害虫が寄ってくるので
雄穂を切り取ります。
7:収穫について
まず、ヒゲが出てきたら
摘果して良い実を残しましょう。
若どりした実は
受粉していなくても
ヤングコーンとして
おいしく食べられます。
最近は、ヤングコーン専門の
生産者さんも増えているんですよ。
ヒゲの部分は
サラダやおひたしにしたり
乾燥させてお茶にしたり
赤くなる前だったら食べられます。
ただし、軸が細い場合、
ヤングコーンを採ってしまうと
傷つけて腐りが入ることがあるので
軸が細い株については
ヤングコーンを無理に採らず、
つけたままにして
2つ収穫しましょう。
1つの株に大体3〜4個つくのですが
全部残すと、それぞれの実が
小さくなってしまうから
2つはヤングコーンにして
2つ収穫するくらいが
ちょうど良いと思います。
収穫のタイミングは
雌花から黄色いヒゲ(錦糸)が出てきて
1週間くらいした頃。
受粉から数えて3〜4週間、経った頃です。
ヒゲが茶色に変色するので、
これを目安に収穫しましょう。
収穫が早過ぎると
実が白っぽく、甘みも少ないです。
反対に収穫が遅すぎると
粒の水分が減り、
シワも出て硬くなります。
しかし、
収穫のタイミングをつかむのは
なかなか難しいんです。
そこで、
そろそろ収穫かなと思ったら
ちょっとだけ皮をめくって
実っているかどうか確かめてから
収穫するといいですよ。
8:病気と害虫について
栽培環境を整えてあげれば
比較的、病気は少ないです。
ただし、モザイク病などの
ウイルス病になる可能性はありますね。
日当たりが良い場所で
水はけが良ければ
ほとんど心配ありませんが
葉っぱを見て
モザイク状になっていたら
残念ながら抜くしかありません。
天敵の害虫は「アワノメイガ」。
実の中に入り込んで食害するんですよ。
対策としては
収穫直前まで使える殺虫剤を使う
または、防虫ネットを張ることでしょうね。
実が大きく膨らんでくると
鳥害対策も必要です。
株全体を覆うように
防鳥ネットをかけて
カラスなどに実を
持っていかれないようにしましょう。
第45回目は、落花生 についてお話しします。
5月29日ごろ投稿予定ですので、次回もお楽しみに!
投稿日:2024年5月15日