でんえん

SNSをフォローして最新情報をCHECK!

INNATURA

矢澤先生によるコラム 教えて!矢澤先生!

育種家として第一線で活躍する
矢澤秀成さんによる園芸の旬な情報をお届け

第39回早春に欠かせない花「スイセン」

みなさん、こんにちは!

園芸研究家の矢澤秀成です。

 

早春の花壇の彩りに欠かせない花のひとつに

スイセンがあります。

 

私が住んでいる信州の、

一般のお宅の花壇には

必ずと言っていいほど

スイセンが植わっているんですよ。

 

だから信州で植栽を頼まれる時には

「スイセンを入れてください」という

ご依頼が多いですね。

 

早春によく咲いてくれるので

頼りになる存在でもあります。

 

私が手がける庭園にスイセンを入れる時には

30品種くらいの中から選んでいるんですが

品種も、ものすごく多いですね。

 

ということで、第39回は

「スイセン」のお話です。

 

 

1:スイセンについて

スイセンは、早春の花壇に

ぬくもりを添えてくれる秋植え球根。

とても香りが良く、育てやすいので、

ガーデニング初心者にも人気があります。

 

とにかく品種が多く、1万種くらいありますが

スイセンといえばやっぱり

鮮やかな黄色を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。

 

ところが最近の傾向としては、

副花冠(ふくかかん)という真ん中の

クチバシの部分が

オレンジ色に染まったような

ちょっと外弁とは違う色のものが

結構、好まれているんですよ。

 

・分類:ヒガンバナ科スイセン属 多年草

・原産地:イベリア半島を中心とした地中海沿岸地域

(スペイン、ポルトガル、フランス南部など)

・日照条件:日なた

・草丈:10〜40cm

・耐寒性:強い

・耐暑性:中 ※夏季は休眠期

・開花期:12月〜3月

 

 

2:品種について

お正月の花としても流通するニホンズイセンは

とても香りが良いことで知られています。

日本人に好まれる、いい香りがしますね。

 

このニホンズイセンが

まず、12月から1月、2月に咲き、

そのあと、3月ぐらいから

セイヨウスイセンが咲き出すイメージですね。

ニホンズイセン

 

世界には60種類以上、スイセンの原種があり

1万種を超える品種がつくり出されているんですよ。

ラッパスイセン

 

色は、黄色を中心に、

オレンジ系、グリーン系、白、ピンクなど

バリエーションが多いです。

 

花形も、八重咲き、房咲きなど、豊富です。

カップ咲き(黄)

 

バタフライ咲き

 

ペチコート咲き

 

八重咲き

 

房咲き

 

3:スイセンの鉢を購入しよう

早春の頃にスイセンを買うとしたら

芽出しの鉢植えを購入するのが一般的です。

水仙苗

 

品種によっては、花付きもあります。

 

「テタテート」という黄色の小花の品種は

ツボミ付き、あるいは花付きで出荷されています。

ツボミや花がついていれば好みのものを選べますが

花が咲いていない状態ならば

ラベルをしっかり見て品種名や色・形を確かめ、

好みに合うものを選んでくださいね。

テタテート苗

 

4:用土

鉢植えを買ったら、帰ってすぐに植え替えましょう。

ただし、根っこは触らない方がいいので

ポッと抜いてサッと植えちゃった方がいいですね。

土は、水はけの良い土。

水持ちが良いとスイセンは球根が

軟腐病などにかかってしまうので

サラッとした土が一番良いです。

花と野菜の土

 

庭植えにするなら、

雨の日に植える場所を見つけた方がいいです。

水が溜まるような場所や

水が流れる場所には絶対植えないこと。

 

じゃないと、夏の暑さで

球根が溶けちゃったり、

軟腐病にかかったりしてしまうことも。

 

鉢植えの場合は、草花用の培養土を使いましょう。

庭植えは、水はけの良い場所を選んで植えましょう。

 

 

5:置き場所

日当たりを好むので、

絶対に日当たりが良いところに植えましょう。

花付きが全然、変わります。

日当たりが悪いと、場合によっては

全然花がつかないこともあるので

絶対に日当たりの良いところに植えてください。

 

スイセンって、環境が変わると

パタッと花がつかなくなったりすることがあります。

他の球根植物と比べて

すごく神経質だから

「ナルキサス」っていう名前がついたんです。

 

「ナルシスト」で意外と気難しい子なんですよ。

 

セイヨウスイセンの場合、

冬の間に寒さに十分に当てることが

花芽をつくらせ、良い花を咲かせるためのポイント。

寒さにはとても強いので、

しっかり寒さに当ててください。

 

なお、ニホンズイセンの場合は、

12月末ぐらいには咲き始めるので

セイヨウスイセンほど寒さは必要ありません。

 

 

6:水やり

根が張るまでの約1か月間は、

土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えましょう。

 

そのあと、鉢植えは土の表面が乾いたら水を与える程度。

庭植えは、ひどく乾く時以外は不要です。

たとえば、何週間も雨が降らなくて

日照りが続いて葉っぱがシナッとなるほど乾燥していたら

水やりをしてください。

 

そして、鉢植え、庭植えともに

花が終わって葉が枯れ始めたら水やりは控えましょう。

 

 

7:肥料

スイセンは、そんなに肥料を必要としません。

ほったらかしにしていても

環境が悪くなければよく咲いてくれます。

 

元肥として完熟堆肥や腐葉土を混ぜて

植え付けましょう。

(スイセンは、砂質の用土を好みます)

その際、マグァンプやマイガーデンなどの

緩効性化成肥料を入れておけば大丈夫です。

腐葉土
マイガーデン

 

花が終わったら休眠期の夏を経て

10〜11月ぐらいから、再び根っこが動き出します。

 

その頃、緩効性化成肥料を適量

パラパラッと与えればオッケーです。

リン酸分の多い肥料の方が

花付きは良くなると思います。

マグァンプ

 

逆に窒素分の多い肥料だと

葉っぱばっかり伸びちゃって

花付きが悪くなることがあるので

肥料は、選んだ方がいいですよ。

 

植木鉢の場合は、水がわりに液体肥料を

使ってもいいでしょう。

液体肥料

 

8:スイセンの管理

来年もたくさん花を咲かせるため

花が終わってからしばらくは、

球根を肥大させる時期になります。

 

まず、花が終わったら花がら摘み。

花首を切り、花だけ取って

花茎は、そのまま残します。

花茎を残したほうが球根は肥るからです。

 

また、球根に栄養を届けるために

葉は絶対に切らないでくださいね。

ただし、葉がクニャッとしてみっともなくなるので、

葉っぱを束ねて麻紐などでくくると

可愛らしくなります。

スイセンとは、まるで違う植物みたいな

風景を作り出して綺麗ですよ。

だから、わざと束ねています。

葉を結ぶ

 

葉を束ねないと地面にベタッと

だらしなく横たわり、しかも

他の植物の上に被っちゃうんですよ。

 

すると、下になった植物の

生育に悪影響が出ちゃうので

花が終わったら早急に束ねましょう。

 

特に大きな庭園では

束ねることによって花壇に動きが出て

面白いですよ。

束ねても光合成には全然問題ないです。

 

球根を肥大させる場合は

葉色が茶色に変わり始めるまで、

粒状肥料(または液体肥料)を与えてください。

 

鉢植えのスイセンの場合は、球根を掘りあげて、

秋に植え替えるので

お礼肥えをあげて、球根を肥大させます。

 

花壇の場合は、秋に肥料をやるぐらいで

植えっぱなしで大丈夫です。

 

葉は、7月上中旬ごろに自然に枯れていく

枯れたら葉をカマでカットしてもいいし

パリパリに乾燥するまで

そのまま置いておいてもいいです。

 

私は、ガーデンの様子がみっともなくなっちゃうので

束ねた麻紐ごとスイセンの葉をバサッと切って回収し、

球根だけを土中に残して夏を越させます。

 

夏の間は特に水が必要ないので

放置していて大丈夫ですよ。

 

 

9:増やし方

スイセンの場合、タネまきから始めてもいいですが、

通常は球根を分けて増やします。

水仙球根

 

分球するとしたら、スイセンが休眠中の

暑い時期に行います。

 

6月下旬〜7月中旬に葉が枯れたら、

球根を掘り起こします。

スイセンの球根は親球の内部で

3〜4球に分球しているので手で割ります。

(1個の周りに何個かくっついています。

品種によっては1つしかつかないのもあります)。

球根の分球

 

分球したら、丸っこい形の球根を選んで

保管しましょう。

小さめの球根(ズンドウな形)には、

花芽が入っていない可能性があるので

丸いのを探しましょう。

丸くてパンパンに張った球根だけを

鉢に植えると春先、鉢の中いっぱいに

スイセンが咲いてくれます。

庭の花壇に植えているなら

分球せず、そのまま植えておいても構いません。

 

ですが、軟腐病が怖いので、植えっぱなしにするより

できれば1回干して乾かした方が

軟腐病の細菌がいたとしても死んでくれるので、

いいと思いますよ。

 

小さめの球根(ズンドウ形)については

開花までに2年かかることがあるだけなので

すぐには諦めないで。

別の場所に植えておけば

翌年は、花の入った丸っこい球根ができると思います。

 

分球したのちは、

私はミカンネットみたいなネットに入れて

風通しの良い軒にぶら下げています。

干して乾かし、完全に休眠させてから

秋に植え替えます。

 

ニホンズイセンは、暑い盛りの8〜9月頃に植えます。

セイヨウスイセンの場合は10〜11月がいいと思いますが

秋になっても夏日が続くようだと、

本当は植え付ける日を遅らせたいんですよね。

その年の状況によって判断するようにしましょう。

 

 

10:病気と害虫について

スイセンにとって一番怖い病気は

「軟腐病(なんぷびょう)」です。

 

原因は細菌なので、これを予防するには、

まず育てる場所に気をつけること。

水はけの良い場所を選び、

庭植えの場合は深く植えましょう。

 

大きい球根の場合は、球根の上に

10cmくらい土を乗せた方が

病気にかかりにくいです。

夏の暑さも避けられます。

 

球根の大きさが、中ぐらい〜小球の場合は

深さ約5〜6cmでもいいですが

軟腐病を避けるには

できるだけ深めに植えた方が良いでしょう。

 

そのほか、気をつけたいのはウイルス系の病気。

特に、葉にモザイク状の模様が出ていたら

抜いて破棄するしか対処法がありません。

 

そのため、ウイルスを媒介するアブラムシを

徹底的に防ぐことが大切です。

要注意時期は花が咲き始める頃。

3月下旬から4月ぐらいの春先に咲く品種は

アブラムシがつきやすいので気をつけて。

 

アブラムシ予防にスプレータイプの

殺虫・殺菌剤をかけておくのもいいと思います。

ガーデンアシストクイーンスプレー

 

 

Q&A)

Q)鉢植えのスイセンを庭に植え直したいのですが

いつ、どのようにしたら良いですか?

 

A)鉢植えのスイセンを2〜3年もそのままにしていると

鉢の中がギッシリ詰まった状態になるので

植え直す、あるいは庭植えにする作業が必要になります。

では、いつ植え直すかということですが、

まず、休眠期の夏の間に球根を掘りあげて

いったん干して乾燥させたあと

秋になってから植え直すと良いですよ。

 

干すのが「面倒だなぁ」と思う方は

鉢の中で夏越しさせて、

芽と根が動き始める秋前に球根を掘りあげて

そのまま庭に植えても構いません。

でもね、1回干した方がリセットしやすいので

面倒でなければ、

ネット状の袋に入れてね、

風通しの良い軒下などで干してから

植え直した方が有効です。

 

 

 

Q)スイセンを植えたままにしていたら

いつの間にか咲かなくなってしまいました。

なぜでしょうか。

 

A)スイセンは繊細なので

植えていた場所が合わなかったり

球根がどんどん増えて窮屈な状態になったりすると

花付きが悪くなってしまいます。

全然、咲かなくなることもあります。

 

このような場合は、いったん球根を

掘り起こして分球してみましょう。

私の場合は、4〜5年に1回は掘りあげて

球根を分けて、植え付け直しています。

ぜひ、お試しください。

いま、植えている場所の状態が

スイセンに合っているかどうかも

確かめてみてくださいね。

 

投稿日:2024年2月14日

この記事のカテゴリ

矢澤先生のプロフィール

ホームセンタータイム
ガーデンアドバイザー
矢澤 秀成 先生

矢澤 秀成 先生

現在、やざわ花育種株式会社、葉乃畑合同会社に所属し、代表取締役社長を務める。
種苗会社植物バイオ研究室に16年勤務し、多くの花や野菜を開発する。その間、国内新花コンテストで金賞を含む18回入賞、社内では社長賞2回受賞する。
種苗会社退職後、大手ホームセンター商品開発部長及び顧問、大手肥料メーカー顧問、パテント会社代表、野菜市場顧問、ガーデンセンター顧問などを歴任。多くの植物園などのヘッドガーデナーや監修を行う。
育種家として、多くの個性的な花や野菜、漢方薬などの新種育成を行っており、18年前から全国各地の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う。子供たち自身が交配して世界に一つだけの小さな種を作り、その種を大切に育て世界に一つだけの花を咲かせる授業を行っている。さらに「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、2002年から地域の花好きを育て、そして花の街を育てる「花のマイスター養成制度」を提案しスタートする。現在全国各地でマイスターを育てる花の学校を開校し、マイスターと共に花いっぱいの公園づくりや街づくりに取り組んでいる。
NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」、NHK長野「ひるとく」、BS-日テレ「麗しの庭散策」、SBCラジオ「ずくだせ エブリデイ」、篠ノ井有線放送「花暦」などの多くの園芸番組の講師として出演中。全国で講習、講演活動を多数行い、園芸関連多数執筆中。