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矢澤先生によるコラム 教えて!矢澤先生!

育種家として第一線で活躍する
矢澤秀成さんによる園芸の旬な情報をお届け

第29回「ブロッコリー」で元気に!

みなさん、こんにちは!

園芸研究家の矢澤秀成です。

 

最近、注目している野菜は

「ブロッコリー」です。

 

「野菜の超優等生」なんて言われるぐらい

ビタミン類もミネラル類も食物繊維も豊富。

栄養価がとっても高いので、

いろんな病気への抵抗力をつけるためにも

私は、食べたほうがいいと思っています。

 

家庭菜園で育てれば

鮮度バツグン。栄養成分のロスも少なくなりますよね。

 

ブロッコリーは初心者でも比較的育てやすいので

読者のみなさんにも、ぜひ、挑戦していただきたいです。

 

ということで、第29回は

「ブロッコリー」のお話です。

 

1:ブロッコリーとは

ブロッコリーはアブラナ科アブラナ属の植物。

キャベツ、ケール、カリフラワーなども仲間です。

 

原産地は地中海沿岸地域。

生育適温は20度前後で、涼しい気候を好むんですが、

暖かい気候に適した早生品種も登場し、

日本全国どこでもつくれるようになりました。

 

夏まきと冬まきがあり

年2回栽培できます。

家庭菜園では、

チョウ(アオムシ)の食害が少なく

気候がカラッとしてさわやかな

秋から冬にかけて栽培・収穫する品種が

成功しやすいですね。

 

特に、西日本では、極早生・早生の品種なら

年内に収穫できるから栽培期間も短く

そのぶん、失敗も少ないですよ。

極早生種なら苗を定植してから

約50日で成熟します。

 

しかも、

ブロッコリーは、株の頂上にふくらむ花蕾(からい)

つまり、花のつぼみの部分を収穫するのですが、

多くの品種では、

その頂上の花蕾(頂花蕾と言います)を収穫して

しばらく置いておけば

株の脇から側花蕾が出てきて、

 

キャベツなら1株で1回の収穫ですが

ブロッコリーは2回以上、収穫できるのも魅力です。

 

 

2:収穫期を決めて品種を選ぼう!

実は、ブロッコリーは品種によって

収穫期が異なるんです。

 

つまり、「いつ収穫したいか」によって

品種を選ぶことが大切。

 

日本の厳しい暑さ・寒さ、多湿の環境に耐えられるように

いろいろな品種がつくられているので

どれを選んだらいいか分からなかったら

お店の人に聞いてみましょう。

 

私が昨年、新しい品種を育てた中で

おもしろいと感じたのは、

タキイの「チャレンジャー」。

春どり(2月・3月ごろ収穫)の晩生品種で、

たくさん分枝できるから

収穫量がものすごく多いんです。

コレは別格です。本当にスゴイ。

頂花蕾の大きさもデカイです。

 

さらに、脇から出てくる側花蕾も

頂上の花蕾と同じサイズ。

これは、スゴイことです。

「何、これ!?」って驚いちゃった。

 

収穫量の多さなら

「エンデバー」も匹敵するほどスゴイです。

 

一方、最近登場した新種(茎ブロッコリー)の

スティックセニョール、グリーンボイスなどは

小さめの蕾が次々と収穫できるし、

長い茎が柔らかくておいしいですよ。

 

早生と晩生では収穫時期がズレるから

いろいろな品種を育ててみるのもいいですよね。

 

・極早生種/シャスター ※初心者向け

・中早生種/ハイツ、緑嶺

・中生種/グリーンハット、グリーンパラソル

※グリーンパラソルは頂花蕾専用種

・中晩生〜晩生種/チャレンジャー、エンデバー、メガドーム

 

 

3:苗を選ぶ 苗の植え付け

苗の植え付け時期は、年内・冬収穫を目指すなら

8月中旬〜9月中旬です。

春どりであれば10月植え付けも可能でしょう。

 

畑で育てる場合、

土は弱酸性が望ましいです。

植え付ける3週間前に苦土石灰をまいて、

よく撹拌し、2週間前に堆肥などの有機物を混ぜて

土壌改良しましょう。

 

苦土石灰

 

また、植え付け1週間前に

緩効性化成肥料(8-8-8など)を

ひと握りぐらい(80g程度)

パラパラっと入れましょう。

 

肥料(8-8-8)

 

畑に植える際の注意点は

ブロッコリーには連作障害があること。

アブラナ科の植物を植えた場所は、できれば避けましょう。

連作になる場合は、

土壌改良をしっかり行いましょう。

 

植え付ける場所は

日当たりの良い場所がオススメ。

ただし、夏の西陽に当たらないよう、

注意しましょう。

 

また、過湿が苦手なので、しっかり畝を立てて

湿気が逃げるようにしてもらえばいいと思います。

 

植える際は深植えしないように。

 

結構、根が張るので

株間は40〜45cmあけます。

 

プランターの場合は、できるだけ深さのある

野菜用の大型プランターを選びましょう。

 

野菜用プランター

 

土は野菜用の培養土で大丈夫。

 

花と野菜の土

 

マンションなどのベランダで栽培する場合は

エアコンの室外機の生あったかい風が

直接当たらないよう、気をつけてね。

 

そして、苗を植え付けたら

ムシが一気に寄ってきて食べちゃうので、

ぜったいに「防虫ネット」を張りましょう!

 

 

4:管理について

苗を植え付けたら最初だけ、

たっぷりと水を注ぎます。

根が定着したら

土が乾燥した時に水やりする程度で良いですよ。

 

そして、定植から2週間ぐらいたったら

元肥と同じくらいの量(ひと握り)の

追肥を、もう1回やります。

 

追肥によって株や花蕾の大きさが決まるので

追肥は、とっても重要! 忘れないようにしましょう。

 

このあと、

早生と晩生では、追肥のタイミングがちがってきます。

 

極早生には、10月ぐらいに収穫できるものもありますし、

晩生だと2月、3月ごろ収穫することになります。

生育期間が2か月以上違いますから

生育状態を見ながら、

花蕾が見え始めたら2回目の追肥をしましょう。

 

 

5:収穫について

ブロッコリーは、株の頂上につく頂花蕾を収穫したあと、

株の脇から出てくる側花蕾も収穫できます。

 

そこで、良い側花蕾を出させることを意識しながら、

また、側花蕾を切り取らないような高さで

イラストを参考に頂花蕾を切ることがポイントになります。

頂花蕾の切り方/側花蕾の切り方

 

収穫したら、すぐ塩ゆでにして、

醤油マヨで食べるとうまいですよ。お楽しみに!

 

 

6:害虫対策

ブロッコリーは害虫がつきやすい野菜です。

とにかく、チョウがいっぱいやってきます。

特にモンシロチョウが宿敵。

 

農薬で殺す方法もあるけれど、

できれば使いたくないですよね。

 

そこで「防虫ネット」の出番です。

トンネル状に支柱を立てて

防虫ネットですっぽり囲って防御してください。

 

防虫ネットとトンネル支柱

 

ネットを張っても、

ヨトウムシ、ネキリムシ、シンクイムシなど

土の中から食べにくる害虫もいます。

いつの間にかチョウに卵を産み付けられていて

アオムシがすみついているかもしれません。

 

これらの害虫に食べ尽くされてしまう前に

見つけたら速攻で潰しましょう。

 

自然農薬の忌避効果で害虫をできるだけ遠ざける、

というのもオススメです。

こちらも試してみてくださいね。

 

 

7:気をつけたい病害と対策

ブロッコリーは、ほとんど病気の心配がありません。

 

それでも、たまに、うどんこ病や菌核病、

シラキヌ病、べと病などにかかることがあります。

 

今年は雨が多く、梅雨の間は気温が上がらなかったんですよね。

低温で湿度の高い状態が続いたので

病気の発生が多いんじゃないかと心配しています。

 

排水しやすいよう気をつけて

葉や茎の様子もこまめにチェックして

症状を発見したらすぐ園芸売場で相談して

対処してください。

 

 

Q&A)

Q:大きく育てるコツを教えてください。

A:まず、大きくしたいからと思って

肥料をやり過ぎるのはNGです。

大きく育てようと、ついつい肥料を足してしまうと

チッソが効き過ぎて逆に病気になったり、

苦くなって味が落ちたりしてしまいます。

 

大きく育てたいならば、

大事なことは、品種をしっかり選ぶこと。

「チャレンジャー」など、

大きくなる品種を選びましょう。

 

次に、腐葉土や動物性の堆肥をしっかり入れて、

ふかふかの良い土をつくることかな。

 

そして、蒸れに弱いので過湿にならないように

乾燥気味に管理すること。

 

最後に、大きさよりも

おいしさを優先させて

適期に収穫すること(笑)。

 

蕾が離れ出したら開花が近いので

ピシッと詰まっているくらい、

まだ早いかなぁと思うくらいがおいしいですよ。

大きくなるのを待ってると失敗しがち。

小さいなぁと思っても、

蕾がきっちり揃ってる時に収穫しないと

おいしくないですからね。

 

ブロッコリーの成長は

以外に早いです。

適期に収穫してできるだけ早く食べましょう。

 

 

Q:冬場に収穫しようと思ったら、花蕾が赤紫色になってしまいました。食べられますか?

A:冬の寒さで花蕾が赤紫色に染まるのは、ブロッコリーに含まれているアントシアニンという成分が原因です。これぐらい色がのった方が、実は甘みが出てうまいです。ゆでると緑色に戻るので大丈夫ですよ。

 

 

Q:花蕾の形がおかしいのですが、食べられますか?

A:いろんな理由が考えられるのですが、

もし、花芽形成の時の障害だったら食べても大丈夫でしょう。

だけど、病気が原因で花蕾が変化した場合は、

あまりオススメできないんですよね。

どうしても食べるなら調べたほうがいいですね。

例えば、菌の影響で花蕾の形状が変わってしまったならば

洗っても菌がついている可能性があります。

食べられないことはないけれど、

私は食べたくないですね。

 

投稿日:2023年8月9日

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矢澤先生のプロフィール

ホームセンタータイム
ガーデンアドバイザー
矢澤 秀成 先生

矢澤 秀成 先生

現在、やざわ花育種株式会社、葉乃畑合同会社に所属し、代表取締役社長を務める。
種苗会社植物バイオ研究室に16年勤務し、多くの花や野菜を開発する。その間、国内新花コンテストで金賞を含む18回入賞、社内では社長賞2回受賞する。
種苗会社退職後、大手ホームセンター商品開発部長及び顧問、大手肥料メーカー顧問、パテント会社代表、野菜市場顧問、ガーデンセンター顧問などを歴任。多くの植物園などのヘッドガーデナーや監修を行う。
育種家として、多くの個性的な花や野菜、漢方薬などの新種育成を行っており、18年前から全国各地の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う。子供たち自身が交配して世界に一つだけの小さな種を作り、その種を大切に育て世界に一つだけの花を咲かせる授業を行っている。さらに「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、2002年から地域の花好きを育て、そして花の街を育てる「花のマイスター養成制度」を提案しスタートする。現在全国各地でマイスターを育てる花の学校を開校し、マイスターと共に花いっぱいの公園づくりや街づくりに取り組んでいる。
NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」、NHK長野「ひるとく」、BS-日テレ「麗しの庭散策」、SBCラジオ「ずくだせ エブリデイ」、篠ノ井有線放送「花暦」などの多くの園芸番組の講師として出演中。全国で講習、講演活動を多数行い、園芸関連多数執筆中。