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矢澤先生によるコラム 教えて!矢澤先生!

育種家として第一線で活躍する
矢澤秀成さんによる園芸の旬な情報をお届け

第28回知っておきたい「肥料」のお話

みなさん、こんにちは!
園芸研究家の矢澤秀成です。

今回は、とっても大切な「肥料」のお話です。

肥料をやらなくても、山にはたくさんの木が茂っています。
自然界ならば、
落ち葉や昆虫の死骸などを微生物が分解することで
土の中に栄養分が自然と補給されます。

だけど、植木鉢や花壇で花をたくさん咲かせたい、
ウチの庭でおいしい野菜を作りたい、
となると、
土の中の栄養分だけでは足りないため、
枯れてしまう、花が小さくなる、実がつかない…、
という残念な結果に。

そんな失敗をしないために
「肥料」の知識が必要なのです。

肥料には、どんな栄養素が含まれていて
どんな働きをするのでしょうか。

タイムの売り場に並んでいる
いろんな肥料についてもお話しますので
ラク〜な気持ちで何度もくりかえし
読んでみてほしいと思います。

ということで、第28回は知っておきたい「肥料」のお話です。

1:肥料の3要素 チッソ(N)・リン酸(P)・カリ(K)を知ろう!

「肥料」に含まれる3要素といえば
チッソ(N)・リン酸(P) ・カリウム(K)です。
カリウムは「カリ」と呼ばれます。

これらは植物の生育に
なくてはならない栄養分なんですね。

さらに、余裕があれば、
カルシウム(Ca)・マグネシウム(Mg)を加えた
5要素まで覚えると
肥料の選択肢の幅がぐ〜んと広がりますよ。

元素記号にイヤ〜な思い出がある方もいるかもしれませんが
ちょっとだけでも仲良くなれるように
チッソ、リン酸、カリ、それぞれの働きについて
ひとつひとつご紹介してみたいと思います。

【チッソ(N)】
チッソは、おもに葉っぱや茎などを成長させる要素です。
葉っぱや茎をつくることで、
養分の吸収量も多くしてくれています。

しっかりした葉や、おいしい野菜を育てるために
とっても大事なチッソですが、
チッソ過多になると病気に弱くなったり、
大きくなり過ぎて害虫がたくさん寄ってきてしまう原因に。
やり過ぎないこと、程よい量におさえることが大切です。

【リン酸(P)】
リン酸は「花肥え」と言われ、
花を咲かせる=実をつける働きをする要素です。

リン酸が不足すると
リン酸欠乏という症状が出始めます。
花数が少なくなり、実の肥大化も遅れるうえ、
小さくなっちゃいます。
新しい葉が小さくなったり、
下の方の葉が枯れたりすることも。

覚えておきたいことは、
植物がリン酸を吸収するには、
5要素の1つであるマグネシウムが必要だということです。

【カリ(K)】
カリウムが育てるのは植物の「根っこ」です。
根っこがしっかり育つと
植物は病気に強くなる傾向があるので、
カリウムは大事な要素ですね。

また、植物がセルロースを形成するのに
カリウムが関係しています。
つまり、カリウムが細胞壁を厚くすることで
耐病性が強くなるのです。

反対に、カリウムが不足すると
根っこが弱くなるので、
古い葉っぱの先の方から黄色くなったり、
新しい葉の色が暗くなったり、
斑点が出たりします。

【マグネシウム(Mg)・カルシウム(Ca)】
このコラムでも、土づくりの前の土壌改良で
「苦土石灰をまきましょう」とよく書いているのですが
苦土石灰とは
苦土=マグネシウム、石灰=カルシウムなんですね。
MgとCaの両方を土に補えるから
苦土石灰って、本当は素晴らしい肥料なんです。

苦土石灰

土の中にマグネシウムがあれば
リン酸の吸収を高めることができます。

また、しっかりした茎や葉を作るには、
細胞壁の元になるセルロースを作らないといけないんだけど、
そのセルロースを作るにはカルシウムが必要。
そういうことも、ぜひ覚えておきましょう。

2:要素の働きを知って肥料を選ぼう!

ところで、肥料のパッケージ(袋)に書かれた
3つの数字の並び。
これは、何を表しているのでしょうか。

じつは、これは肥料に含まれている
チッソ・リン酸・カリの比率なのです。
なかでも、8-8-8、14-14-14のように
同じ数字が3つ並ぶシリーズは、
いろんな植物に使える無難な肥料と言えます。

肥料(8-8-8)
肥料(14-14-14)

たとえば、リン酸が少なくて、チッソとカリが多い肥料は、
チッソとカリの働きによって
しっかりした葉っぱとしっかりした根を育てるので、
葉物の苗や、芽キャベツなど花をそれほど重視しない野菜、
花が咲くと困る葉物野菜などに使われます。
ひまわりだったら茎や葉っぱをしっかりさせないといけないので、
チッソの多い肥料にしようとか、
栽培する植物によって
肥料を選べるようになるといいですね。

肥料(イチゴ用)
肥料(ジャガイモ用)
肥料(ネギ類)

 

3:いろんな肥料の種類を知ろう!

【化成肥料】
化成肥料とは、工場で化学合成によって作られるので
「薬」と同じと考えていいでしょう。
みなさんも「薬」をのむときには
「用法・用量をきちんと守って」使うように
肥料の場合も、パッケージに書いてある
用法・用量をきちんと守って使うことが大事だと思います。

化成肥料には、緩効性の肥料と
即効性の液体肥料があります。

代表的な緩効性肥料としては、
マグァンプK、マイガーデンが有名ですが、
じつにバリエーションが豊富で
粒の色や大きさ、効果の期待できる期間もさまざまです。

マグァンプK
マイガーデン

施肥に手間をかけるのが好きな方は、
1〜3か月に1回のペースで追肥するタイプ
(効き目が1〜3か月)の肥料を選ぶといいと思います。

追肥の作業が面倒な方は、
植えつけまたは植え替えの時に
土に混ぜ込んでおけば
1年以上、肥料の効果が続く
ロングタイプの肥料を選ぶといいでしょう。
たとえば、マグァンプK(中粒、大粒)は
チッソ・リン酸・カリ・マグネシウムを
バランスよく含んでいて、
すべての効き目が緩く長く続きます
(中粒=約1年、大粒=約2年)。

【液体肥料】
即効性のある液体肥料といえば、
ハイポネックスとか、植物工場などが有名です。

ハイポネックス

花用、野菜用など、いろいろありますが、
リン酸を多く含んでいるものが多いですね。

液肥(花・野菜)
液肥(ばら)

即効性があるので
液肥を追肥として使っている人は多いですよ。
中には、「追肥は全部、液肥を使っている」という人もいます。

また、液肥を使うと病気の回復も早まる ので
葉っぱの色や形の様子がおかしいと思ったら
薬剤を散布するなどの処置と合わせて
液肥を使ってみるのもいいかもしれません。

液肥はとっても便利なので、園芸を趣味にするなら、
ハイポネックスなど液肥を何か1本、
持つようにしたら良いと思いますよ。

なお、日本の家庭園芸用の液体化成肥料の多くは、
原液を1,000倍程度に薄めて
2週間に1回ぐらい施肥するような使い方をします。
ただし、ふたばが出たばかりの赤ちゃんのような苗の頃だと、
1000倍ではちょっと濃いです。
2000倍に薄めて水がわりにかけるなど
加減をしてあげて、植物の様子をよく見ながら
本葉が出たら1000倍に戻すなど工夫しましょう。

キャップがハカリになっているので
パッケージを見ながら分量の原液をボトルやジョーロなどに入れ
蛇口からジャーっと勢いよく水を流すとよく混ざりますよ。

ストレート液といって、
すでに薄めてある液肥もあります。
薄めるのが苦手な方は、
このストレート液肥を使う手もあります。

【有機肥料】
軽井沢で野菜を生産している私は
実際、有機肥料しか使っていないです。
「安心・安全で、本当にうまいものを育てる肥料はどれか」、
とたずねられたら「有機肥料ですね」と答えます。

だけど、化成肥料が悪いっていう訳じゃないんです。

化成肥料だけを使い続けると畑の土が痩せちゃうので、
有機と化成を交互に使うなど、
上手に使い分けることが大切だと思うんですね。

近年、化成肥料の原料高騰などの影響もあり、
プロの方は圧倒的に有機肥料を使う割合が増えています。
今後は、家庭菜園でも有機が主流になると思うので、
次の項目で、より詳しくお話したいと思います。

【有機配合化成肥料】
最近、増えているのが「有機配合化成肥料」という、
化成と有機のいいとこどりをした肥料です。
有機と化成、両方混ざっていれば、
家庭園芸でも使いやすいですね。

肥料(有機化成)

4:有機肥料について詳しく

有機肥料で一番有名なのは「油かす」です。

肥料(油かす)

続いて、鶏(けい)ふん、骨粉(こっぷん)でしょうか。

鶏ふん
骨粉

私がよく使っている有機肥料は「魚粉(ぎょふん)」と、
カリの替わりになる「草木灰(そうもくばい)」です。

魚粉
草木灰

あと、肥料といえるかどうか、苦土石灰ですね。

油かすは、比較的チッソが多いけれど、
すごくバランスの良い肥料です。
チッソが葉っぱをしっかり作ってくれるので、
葉物野菜には、すごく適していると思いますよ。

気をつけたいのは、油かすには、
発酵油かすと、サラサラした未発酵の油かすがあること。

特に、注意したいのは
未発酵の生の油かすを使うとき。
土に混ぜると発酵熱が出るので、
植えた苗の根っこが腐らないように
株元から離して使ってほしいんです。
できれば、発酵油かすを使ってもらった方がいいです。

鶏ふんは、ニワトリのふんですね。
リンが豊富に含まれていますが、チッソ、カリも入っているので
総合的肥料と言えるでしょう。
これも、発酵したものと、未発酵の生のものがあります。
生の鶏ふんはね、ありえないくらいの強烈なニオイだから
私は発酵鶏ふんをオススメします。
発酵鶏ふんでもニオイますが、生よりはマシです。

鳥類じゃないけども、同じ空を飛ぶ生き物で
コウモリのふんも肥料として販売されています。
インドネシアではコウモリのふんの化石を砕いて肥料にして
野菜を作ってるんですよ。
商品名は「バットグアノ」と言うんですが、
これはニオイもないし、リン酸が豊富に含まれているので
私はバラに与えています。オススメです。

バットグアノ

続いて、骨粉(こっぷん)。
花や実をつけるリン酸の多い有機肥料ですね。
牛の骨、豚の骨、鶏の骨などを
砕いて練って球状にしたような肥料で、
ほとんど発酵している状態だから使いやすい。
とってもいい肥料です。
リンゴやミカンなどの果樹に使っている方が多いですね。

魚粉はリン酸が多い総合肥料と言えますね。
これは、本当に優れた肥料で
私はバラに愛用しています。超オススメの肥料です。
ただし、生なので、使い方はちょっと難しいです。
バラの根元に置くと野良猫が食べにきちゃうのも難点。
魚粉を施肥するときは、株元から少し離して
丸く円を描くようにして土と混ぜてあげます。

草木灰は、名前のとおり、
草や葉っぱなどを燃やした灰です。
カリが大量に入っているので根っこを作る肥料になります。
ただ、草木灰は与え方が難しい。
以前、私は失敗したことがあるんですよ。
土の量に対して草木灰の割合は1パーセント以内ぐらいでいいので、
植木鉢とか、家庭の狭い花壇などに使うときは、
あげ過ぎないように気をつけないといけません。
アルカリ性が非常に強いので、
土の表面が軽く白く染まるくらい、
ささっとかけて混ぜるぐらいでいいと思います。
なお、草木灰は以前、ジャガイモの切り口保護剤として
ご紹介したようにタイムで買えますので
草を燃やして作らなくても大丈夫ですよ。

【有機肥料の注意点】
有機肥料は土に混ぜた後、
反応がおさまるまで
最低でも2週間待ってから
植物を植えたほうがいいでしょう。

もう1つ注意しなきゃいけないのは、
苦土石灰をまいた後に鶏ふんをまく場合、
鶏ふんにはカルシウムも多く含まれているので、
どっちかを少なめにしないと
土中のアルカリが強くなり過ぎること。
ぜひ、覚えておきましょう。

 

投稿日:2023年7月12日

 

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矢澤先生のプロフィール

ホームセンタータイム
ガーデンアドバイザー
矢澤 秀成 先生

矢澤 秀成 先生

現在、やざわ花育種株式会社、葉乃畑合同会社に所属し、代表取締役社長を務める。
種苗会社植物バイオ研究室に16年勤務し、多くの花や野菜を開発する。その間、国内新花コンテストで金賞を含む18回入賞、社内では社長賞2回受賞する。
種苗会社退職後、大手ホームセンター商品開発部長及び顧問、大手肥料メーカー顧問、パテント会社代表、野菜市場顧問、ガーデンセンター顧問などを歴任。多くの植物園などのヘッドガーデナーや監修を行う。
育種家として、多くの個性的な花や野菜、漢方薬などの新種育成を行っており、18年前から全国各地の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う。子供たち自身が交配して世界に一つだけの小さな種を作り、その種を大切に育て世界に一つだけの花を咲かせる授業を行っている。さらに「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、2002年から地域の花好きを育て、そして花の街を育てる「花のマイスター養成制度」を提案しスタートする。現在全国各地でマイスターを育てる花の学校を開校し、マイスターと共に花いっぱいの公園づくりや街づくりに取り組んでいる。
NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」、NHK長野「ひるとく」、BS-日テレ「麗しの庭散策」、SBCラジオ「ずくだせ エブリデイ」、篠ノ井有線放送「花暦」などの多くの園芸番組の講師として出演中。全国で講習、講演活動を多数行い、園芸関連多数執筆中。