第13回春を待つ日々を楽しむ!イチゴ
第13回 春を待つ日々を楽しむ!イチゴ
みなさん、こんにちは!
園芸研究家の矢澤秀成です。
コロナ禍も3年目。
次の春こそは、ぱぁっと明るい気分で
迎えたいですよね。
そこで、少しでも気持ちを明るくするために
今年の秋冬は
「イチゴ」を育てながら
豊かな気持ちで陽気な春を待つ、
そんな日々を過ごしませんか。
イチゴは、テラコッタの鉢でも、プランターでも
ストロベリーポットでも、路地(畑)でも栽培できますよ。
ということで、第13回は、
ビギナーの方にも挑戦しやすい
「イチゴ」のプランター栽培について解説します。
目次
1:イチゴの品種
イチゴは、バラ科オランダイチゴ属の植物。
「オランダイチゴ」の名前からわかるように
ヨーロッパのオランダが原産地です。
品種は、
「ほうこう」「さちのか」「とちおとめ」「紅ほっぺ」など。
どれを選べばいいのか迷ってしまうくらい、
とにかく多いです。
さらに、サントリーやデルモンテなどの企業が
家庭菜園向けに育てやすい品種を
どんどん開発しているので
これからも増え続けるでしょうね。
通常、苗の植え付けは、秋に行います。
10月がベストでしょう。
ホームセンターには最近、「よつぼし」や「とちひとみ」など
真夏と真冬以外ならいつでも植え付けできる
「四季なりイチゴ」も出回っていますね。
こちらも育てやすいので人気がありますよ。
2:イチゴ苗の選び方
いい苗を見わけるコツは
苗のまんなか部分にあります。
株元の葉のつけ根にある「クラウン」と呼ばれる部分が
しっかりふくらんでいるもの、
かたくて大きい苗を
選んで購入するといいですよ。
この「クラウン」が小さいと
花芽の数が少なくなってしまいますから
できるだけ「クラウン」が大きいものを選びましょう。
3:イチゴ苗の正しい向きを確認して!
イチゴ苗の植えつけで気をつけたいのは
苗の向きです。
かならず「前」と「後ろ」を確かめましょう。
イチゴ苗には、母株から苗を切り離した跡として
ランナー(根茎)がわざわざ残してあるんです。
なぜかというと
このランナーの反対側に花芽が出るから。
そのため、自分から見て手前の方向に
イチゴが垂れてくるようにしたいと思ったら
ランナーがある方を後ろ(反対側)に向けて
植えないといけないんですね。
とくに、ストロベリーポットに植える場合、
ポットの内側にイチゴが垂れると
見えなくなっちゃいます。
だから、実がなる方向(前)が外側を向くように
向きを確かめて植えることが重要です。
イチゴ苗は、一度根が張ってしまうと
向きを変えることはできないので
前と後ろを間違えないように
気をつけてくださいね。
4:イチゴが育つ土
イチゴの栽培に適した土は
水はけの良い土。
プランター栽培の場合は、
市販の野菜用培養土で大丈夫ですよ。
最近は、イチゴ専用培養土なんていう
便利な土も市販されてますよね。
さらに、アミノ酸たっぷりのイチゴ専用肥料もあります。
初心者は、こういった専用資材を使うと
いいんじゃないかな。
失敗の確率がぐ〜んと減少しますよ。
5:プランター(鉢)に植えよう!
イチゴ苗は思った以上に大きく育つので
あまり詰め過ぎないようにしましょう。
長辺60cmぐらいのプランターに
イチゴ苗2ポットが目安。
1株だけ植えるなら
6号鉢でOKだと思います。
植えつけるときの注意点は
ウォータースペースをしっかり残すこと。
そして、
イチゴ苗のまんなか部分「クラウン」を
土で埋めないこと(完全に埋まらなければ大丈夫)。
苗を土に植えたら
イチゴ専用の粒状化成肥料やIB化成肥料などを
株のまわりにポンポンポンと
置いてもらうといいですね。
もしも「クラウン」の上に肥料が乗っかっちゃったら
指ではじいてあげてください。
小さい粒だと、クラウンの中に
肥料が入っちゃうので
気をつけてあげてくださいね。
6:コンパニオンプランツ
イチゴと一緒に植えると良いコンパニオンプランツの中で
1番のオススメはニンニクです。
私も、イチゴの近くには
ニンニクを植えていますよ。
プランターの場合は
イチゴを1株植えたら、ニンニクを1株、
といったように交互に植えるといいですよ。
7:冬場の栽培管理
イチゴって、寒さにはムチャクチャ強いのですが
乾燥に弱いので冬場の水管理が大切です。
乾燥対策、また越冬対策として、
根元にわらを敷いた方がいいですね。
畑ならば黒マルチを敷きましょう。
水やりは、プランターの場合、
表面が乾いたらしっかりやってください。
畑の場合は1週間に1回ぐらいでも大丈夫ですよ。
だけど、冬場の間は休眠期なので
生長しないし、花も咲かない からね、
存在を忘れられてしまうことがあるんですよね。
冬の低温期の間、生長しないからといって
肥料を追加する必要はなく、
「失敗した」と落ち込む必要もありません。
できれば、そっと見守ってあげてほしいんだけど、
水やりだけはね、忘れちゃうと大変です。
イチゴは一度、水が抜けて
葉っぱがヒョロヒョロになってしまうと
水を与えても復活しません。
カラッカラに乾燥しすぎないよう
気をつけましょう。
芽が動き出すのは
岡山だと2月下旬くらいかな、
芽の色が緑色に変わって動き出したら
緩効性化性肥料をパラパラパラと追肥しましょう。
害虫対策として、
冬場に粒状の殺虫剤(農薬)をまいてもいいですよ。
ボトルに書いてある注意書きをよく読んで
収穫期よりも早めにまいておくといいでしょう。
収穫の何日前まで使っていいのか
しっかり確認して使ってくださいね。
8:気をつけたい病気と害虫
イチゴにとって
気をつけたい病気は
炭疽(たんそ)病、うどんこ病、灰色かび病。
中でも「炭疽病」は一番の悩みですね。
炭疽病菌がどんどん伝染して被害を拡大させるので
一度かかってしまうと、プロでもどうしようもない。
目に見えない菌が原因だからタチが悪いんですよね。
ちょっとでも、1株でも、茶色い斑点を見つけたら
その株は、すぐ「燃えるゴミ」に廃棄しましょう。
焼くしかないです。
その時、使った道具もきちんと洗ってね。
そして薬散し、
しばらく生育状況を見ましょう。
薬散しても伝染は止まらない。
それでも、すぐに薬散することを
オススメします。
使用する薬は、オーソサイド水和剤や
ベンレート水和剤など。
オーソサイド水和剤は、
立枯病や炭疽病をはじめとした、
幅広い病害に予防効果が認められている殺菌剤です。
薬害が少ないので幼苗期の散布にも有効ですよ。
灰色かび病も、
オーソサイド水和剤で防げます。
一方、イチゴにとって
気をつけたい2大害虫は
ハダニとアザミウマですね。
アザミウマがつくと果実にスジがついたり
ボコボコしたりします。
白い粉みたいなのがパーっと飛ぶ
温室コナジラミも厄介。
また、アブラムシがつくと、
すす病が発生したりするので要注意です。
害虫の被害が出たらスプレータイプの殺虫殺菌剤を
シュッシュとまきましょう。
その際、収穫の日にちから逆算して
いつまで使って良いのか確認してから使ってくださいね。
そのほか、アリもイチゴを食べにきます。
アリの食害を防ぐには
わらを敷くなどして、果実が土に直接くっつかないよう、
ちょっと浮かせることが大事。
プランターの脇にぶら下げるようにしてもいいですよ。
害虫のほかには、
カラスやひよどりなどの鳥も食べにきますね。
防鳥ネットが便利なので、
実が赤く色づく前にネットを張りましょう。
Q&A
Q:冬の間にランナーが出てきました。切った方がいいですか?
A:はい。必要のないランナーが出る品種がたまにあるんですよね。
不要なランナーは切ってください。
Q:3月ぐらいに突然、花が咲きました。まだ虫が飛んでいないので人工授粉をしたほうがいいでしょうか。
A:はい。虫の少ない時期に花が咲いたら人工授粉をしましょう。
そういう時は綿棒を使って、
ドーム状の花の中央部を
コロコロコロと花粉をつけて転がす。
そうすれば人工授粉できますよ。
ちなみに、イチゴの花の中には、
めしべがいっぱいあるのをご存知ですか。
だから、受粉の仕方によって
イチゴの形が変わってくるんです。
そのことを覚えておいてください。
すなわち、受粉していないめしべがあると
その部分の果肉が膨らまないので
形が悪くなっちゃうわけ。
だから、全部のめしべに花粉をつけて
まんべんなく受粉させていくことが大事。
そうすると、果肉がまんまるにふくらんで
きれいな円錐形の果実になります。
なお、マンションにお住いの方で
蚊が飛んでこないくらい高層階で育てている方も、
虫が授粉してくれないと思うので
下記のような人工授粉をした方がいいと思います。
Q:来年用に、イチゴ苗を増やすことができますか?
A:「ランナー取り」というのですが、
育てているイチゴ苗に病気が出なかったら、
初夏から夏にかけて新しいランナーが出てくるので、
そこで苗取りすることができますよ。
Q:人工授粉したのにイチゴの実が大きくなりません
A:それは、受粉できていなかったのではないでしょうか?
人工授粉のタイミングは、ちょっと難しいのです。
花が咲いてすぐでは、まだ花粉が出ていない可能性が高いです。
花が咲いて1〜2日たつと
おしべが裂開して
黄色い花粉が粉状になって出てきます。
この花粉が出ているかどうかを、まず確認。
花粉が出ていたら綿棒につけて、
花の中央部全体をコロコロしてあげましょう。
この作業が遅れると
花粉が落ちちゃって
「受粉できなかった」という現象が起こります。
一方、めしべの方も
開花からすぐでは受粉体制に入っていません。
私の経験では、受粉に適した期間は
開花して5日間ぐらい。
遅くても1週間以内には受粉をさせると
しっかりした果実がつきやすいです。
それから、注意点として
雨の日に人工授粉をしないこと。
花粉が雨に流されて
めしべにつきにくいからです。
人工授粉は、
花粉がバッサバッサ出てくる状態であることを確認し、
晴れた日に行いましょう。
Q:イチゴが甘くないです。どうして?
A:さあ、どうしてでしょうねぇ。
甘くない理由は、いろいろ考えられます。
日照不足かもしれないし、
肥料が関係していることもありますよね。
日当たりが原因であれば、
光合成をちゃんとしていないということでしょう。
糖がのらないので甘くならなかったんですね。
または、肥料切れが原因かもしれません。
まだ間に合いそうなら、液肥を追肥してあげて
調整してもらった方がいいと思います。
即効性のあるものがいいので液肥がいいと思いますよ。
肥料切れになると、
実の表面から種が浮いた感じになる「浮き種」という状態になることがあります。
この「浮き種」になると味が落ちて
甘くなくなるので
くれぐれも肥料切れにならないように管理していきましょう。
投稿日:2022年9月28日