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矢澤先生によるコラム 教えて!矢澤先生!

育種家として第一線で活躍する
矢澤秀成さんによる園芸の旬な情報をお届け

第11回はじめての秋ジャガ

第11回 はじめての秋ジャガ

みなさん、こんにちは!
園芸研究家の矢澤秀成です。

残暑が続きますが
こよみの上では、もう秋ですね。
秋の定番といえば
「秋ジャガ」なんですが
「ジャガイモといえば春でしょう?」
なんてことを言うWebスタッフがいて驚いています。

ジャガイモには、春に栽培する品種のほかに
秋に育てて初冬に収穫する品種があります。
「秋ジャガ」と言うんだけど
みなさん、ご存知ですか?
寒い地域では栽培できないので
「秋ジャガ」の
ほくほくしたおいしさを味わえるのは
暖地に住む人の特権なんですよ。

ということで
第11回は「秋ジャガ」をご紹介します。

はじめてでも、たくさん収穫できるように
アドバイスいたします!

1:秋栽培に向いている品種

アンデス高地原産のジャガイモは
春栽培と秋栽培、どちらかというと
春栽培の方が品種は多いんですよね。
いま頃から栽培するならば
ジリジリと熱い日差しや長引く残暑に耐えられるように
改良された品種に限られるので
実は、とても少ないのです。
代表的な品種は「デジマ」。
地域によっては春も植えるそうですが
秋ジャガといえば「デジマ」のイメージですね。
その他、「ニシユタカ」「アンデスレッド」は 秋・春どちらでも作付けできます。

ジャガイモは、タネや苗ではなく
「タネイモ」を買って植え付けます。
時期は8月下旬から9月下旬ぐらい。
お彼岸までには植えましょうね。

収穫時期は、植え付けてから約100日なので
11月下旬から12月ぐらいです。
寒い地域では絶対に「秋ジャガ」が育たないのですが
瀬戸内地方なら余裕ですよ。

2:タネイモ の 選び方

売り場で秋栽培向きの品種かどうかを確認したら
ちょっと小ぶりなサイズのタネイモ を選びましょう。

なるべく小さいのがいいです。

理由は、大きいイモの場合、
いくつかに切り分けなきゃならないから。
春に比べて今の時期は、
暑さで断面が腐りやすいですよね。

そこで、タネイモが腐るのを避けるため、
SやMサイズなど、
ちょっと小ぶりなタネイモを選び
なるべく切らずに、まん丸の状態で植え付けると
失敗しにくいですよ。

デジマのタネイモ
ニシユタカのタネイモ
アンデスレッドのタネイモ

3:どこに植えたらいい?

ジャガイモ は、日当たりが良くて水はけの良い場所が好きです 。
植える2週間前から、腐葉土や堆肥を入れて
しっかり土づくりをしたら
水はけを良くするため、畝をつくりましょう 。
(マルチを張る場合は、土寄せできないので
高畝にするといいですよ。)

そして、タネイモを植え付けるときは
芽が上にくるよう、芽の位置を確認して植えます。
土をかぶせたら、たっぷりと水をあげてくださいね。

気をつけたいのは連作障害。
ジャガイモはナス科の植物なので
ナス科の野菜を続けて同じ場所で作るのは
できるだけ避けた方がいいです。

たとえば、ウリ科のキュウリの後にジャガイモなら良いけど、
同じナス科のトマトの後にジャガイモを植えるのは避けたい。
どうしても植えるならば
土壌改良をしっかり行う必要があります。

株と株の間は30〜40cm ぐらい離しましょう。
水は少なめで良いですが
カラカラにしない程度にね。
まだまだ暑い日が続くので
放っておくとカラッカラに乾いちゃうからね。
春栽培とは違って多少、湿らせた方が
いいんじゃないかなと思います 。

プランターで育てる場合は
元肥の入った培養土を使えば大丈夫。
最近はプランターじゃなくて、
袋栽培に取り組んでいる人も多いですね。
袋のまま栽培できる 野菜専用培養土 が販売されていますよ。

深さのあるプランター
袋のまま栽培できる野菜培養土

支柱もマルチも必要ないので
とっても楽ちんでしょう?

あとは、そうだな。
私はコンパニオンプランツとして
近くにニラを植えています。
ニラを植えるとね、害虫や病気の原因菌を
遠ざけてくれるからね。

4:収穫するイモの大きさを左右する「芽かき」

タネイモを植え付けたら
1つのイモから4つとか5つとか
芽がいっぱい出ます。
その中から、どれを残すか。
「芽かき」は、とっても重要な作業です。

「芽かき」をしないと
イモのサイズが大きくならず
結果として収穫量が減ってしまう。

そのため、「芽かき」が必要なわけですが
私は、タネイモ1個につき2芽残しますね。
必要ない芽はポキッポキッと手で折っちゃう。
それで、必要な芽だけ伸ばしてあげます。

その後も、ちょこちょこ芽が出てくるんだけど
それも取った方がいいです。

芽かきイメージ

芽かきをして残した芽が20〜30cmに伸びたら
1回目の土寄せをます。
土寄せとは、株の根元に土を寄せて盛ることね。
植えてからだいたい2〜3週間ぐらいかな。

さらに、また2〜3週間後にも
土寄せします。

そうやって少しずつ土寄せして、
だんだん畝を高くしていきましょう。
理由は、土の表面にイモが出ちゃうと、
イモが光を浴びてしまうことで
「ソラニン」という食中毒の原因となる毒素を生成してしまうから。
しっかり土寄せして、
ジャガイモを土の中にしっかり隠して
陽が当たらないようにしてイモの変色を防ぎます。

5:収穫時期は

植え付けから1か月〜1か月半ぐらいたった頃、
化成肥料の追肥を与えるといいですよ。

追肥は何回かに分けてね。

花が咲いたあと、11月下旬くらいには、
葉っぱが黄色く枯れてきます。
茎だけピンとして、葉っぱが下を向くようになってくるんですよ。
そんな状態になったら
掘り起こしてみてオッケーだと思いますね。
ざっくざくと収穫できるはずですよ。

じゃがいもの花

遅くても12月中旬には
掘りあげられると思うよ。
クリスマスのポテトサラダには使えるんじゃないかな。

6:収穫したら日陰で保存

収穫したイモは、風通しのいい日陰に保存しましょう。
ジャガイモにしても、サツマイモにしても
イモ類は収穫後、すぐに食べるより
少し経ってから食べた方がいい。
甘みが増すので、旨味が全然違いますよ。

気をつけたいのは
ジャガイモは、天日に当てない方がいいということ。
日に当てると緑色に変色し、有毒になっちゃうから。
緑色になったら食べないように
気をつけてください。

7:気をつけたい病気と害虫

ジャガイモの天敵は菌類です。
気をつけたい病気は「軟腐(なんぷ)病」。
イモが腐って、ドロドロに溶けちゃうんだよね。
水はけのいい土にすることで防げます。

害虫では、葉っぱにつくダニだね 。
ダニがつくと、葉っぱの色が薄くなって
光合成をしづらくなるので
大きなイモができなくなります 。
ダニが出るのは植え付け初期。
残暑が厳しいとダニが出やすくなるけど、
そこを乗り越えればダニは大丈夫だと思う。
ダニ剤を使用する、または 葉っぱに葉水をかけてあげて。
ダニは水が大嫌いなのでね。

あとは、アブラムシとアザミウマ類(スリップス)にも注意が必要です。

害虫を見つけたら
早めにハンドスプレー剤を使って駆除しましょう。
とにかく、葉っぱを健全にしてあげないと
おいしくていいイモはできないよ。

ハンドスプレー剤

注意点としては
薬を使ってもいい時期について。
薬のボトルの裏側をよく読んで
収穫の何日ぐらい前まで使っていいか
確かめた方がいいですよ。

もしも収穫間近にアブラムシを見つけたら、
牛乳を買ってきてキリフキでアブラムシにかけるといいよ。
脂肪分の薄いのはダメ。
特濃が一番いいですね。
水で薄めずに、原液のまんまね。
牛乳をかけるとアブラムシの体に皮膜ができて
窒息死しちゃうんだよ。
そのあと、水で流せばサァッときれいになるから。
アブラムシに出会わないのが一番だけど
もしも見つけたらやってみて!

Q&A

Q:L や LL サイズの大きなタネイモしか手に入りませんでした。どうしたら良
いですか?

A:そうなんですよね。最近、タネイモの生産事情が良くなくて
小さいサイズが手に入りにくいんです。
残念なことに、もしも L や LL サイズしか手に入らなかった場合は切って使いましょう。
そして、切り口が腐らないような処理を施しましょう。
昔は「草木灰」をつけてたんだけど、今は「じゃがいも切り口保護材」という、切り口を保護して腐りを予防できる商品が販売されています。
根腐れ防止の役目も果たすし、土壌改良にも使えるので便利ですよ。

 

投稿日:2022年8月24日

 

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矢澤先生のプロフィール

ホームセンタータイム
ガーデンアドバイザー
矢澤 秀成 先生

矢澤 秀成 先生

現在、やざわ花育種株式会社、葉乃畑合同会社に所属し、代表取締役社長を務める。
種苗会社植物バイオ研究室に16年勤務し、多くの花や野菜を開発する。その間、国内新花コンテストで金賞を含む18回入賞、社内では社長賞2回受賞する。
種苗会社退職後、大手ホームセンター商品開発部長及び顧問、大手肥料メーカー顧問、パテント会社代表、野菜市場顧問、ガーデンセンター顧問などを歴任。多くの植物園などのヘッドガーデナーや監修を行う。
育種家として、多くの個性的な花や野菜、漢方薬などの新種育成を行っており、18年前から全国各地の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う。子供たち自身が交配して世界に一つだけの小さな種を作り、その種を大切に育て世界に一つだけの花を咲かせる授業を行っている。さらに「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、2002年から地域の花好きを育て、そして花の街を育てる「花のマイスター養成制度」を提案しスタートする。現在全国各地でマイスターを育てる花の学校を開校し、マイスターと共に花いっぱいの公園づくりや街づくりに取り組んでいる。
NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」、NHK長野「ひるとく」、BS-日テレ「麗しの庭散策」、SBCラジオ「ずくだせ エブリデイ」、篠ノ井有線放送「花暦」などの多くの園芸番組の講師として出演中。全国で講習、講演活動を多数行い、園芸関連多数執筆中。