でんえん

SNSをフォローして最新情報をCHECK!

INNATURA

矢澤先生によるコラム 教えて!矢澤先生!

育種家として第一線で活躍する
矢澤秀成さんによる園芸の旬な情報をお届け

第7回はじめてでも簡単!ブルーベリー

第7回 はじめてでも簡単!ブルーベリー

 

みなさん、こんにちは!

園芸研究家の矢澤秀成です。

 

いま「園芸をはじめたい!」

「ガーデニングに挑戦したい!」

という方がすごく増えています。

 

園芸は本当に楽しいですよ!

趣味なんだから、失敗したっていいから

気長に続けてほしいんだけど

 

はじめてだからこそ

成功したい、ですよね。

 

そこで第7回は、

はじめてでも育てやすく、

収穫できておいしくて、

花も紅葉も楽しめる!

「ブルーベリー」をご紹介します。

 

お庭はもちろん、鉢植えでも

楽しく育てられますよ!

 

1:ブルーベリーって、どんな果樹?

ブルーベリーは、北アメリカ原産のツツジ科の果樹です。

寒地向きのハイブッシュ系と

暖地向きのラビットアイ系に大きく分けられるんだけど、

この2タイプを交配させた中間種もあります。

品種は、かなりたくさんあります。

 

果実の大きさも、1円玉程度から

500円玉大の特大サイズまであるし、

実の色が黒っぽいもの、赤いものもあります。

味も、酸っぱいもの、あま〜いものなど

本当にいろいろ!

 

 

2:ブルーベリーは、いいこといっぱい!

まず、花がかわいい!

秋の紅葉もすごくキレイ!

高さ1m程度に剪定すれば

ベランダでも育てられますよ。

⇒ブルーベリーの花(5月頃)

 

さらに、果実がおいしい!

栄養価も高い。

 

果実はそのまま食べられるし、

ヨーグルトに混ぜてもおいしいです。

信州の自宅では

1kg、2kg単位で冷凍保存しています。

暑い日には解凍せずにアイスとして食べてもいいし、

そのままヨーグルトに入れても美味しく食べられます。

 

ジャムもオススメです。

私の好きなブルーベリージャムの作り方は

レモン汁をちょこっと入れて

砂糖は、ほとんど入れない。

そのほうが、酸味があってうまいと思うんだけどなぁ。

 

 

3:栽培条件に適した品種を選ぼう

ブルーベリーをうまく育てるには

気候にあった品種を選ぶことが大事です。

瀬戸内エリアだと暖地向きのラビットアイ系、

または、その交配種がオススメ。

 

次に大事なことは

同じ系統の2品種以上を一緒に育てた方がいい、ということ。

 

ブルーベリーには、1本でも実のなるタイプと、

受粉のために複数の木が必要なタイプがあります。

 

ラビットアイ系は

自分の花粉で実をつけること(自家受粉)が難しいので

別の個体の花粉をつけないといけない(他家受粉)。

そのため、基本的に2品種以上を一緒に育てた方がいいです。

 

ハイブッシュ系は自家受粉でも実がつくんだけど、

2品種以上の他家受粉にした方が立派な実がなるし、

実つきも良くなります。

 

じゃぁ、どの品種とどの品種を一緒に育てたらいいのか?

 

大事なことは、

受粉させるためには

開花期が同じじゃないと意味がないってこと。

 

では、開花期はどうやって調べるのか?

 

一番確実なのは、

花が咲く5月頃、売り場に行って

同じ時期に花が咲いている木を選ぶやり方です。

花の時期以外に購入する場合は、

下のリストを参考に品種を選んでくださいね。

 

【ブルーベリーの開花時期】

  • ラビットアイ系

ホームベル     4月中旬〜5月上旬

ブライトブルー   4月下旬〜5月上旬

B・デライト    4月下旬〜5月上旬

 

  • ハイブッシュ系

ビッグオニール   4月中旬〜4月下旬

ケープフェア    4月上旬〜5月上旬

ブルーレイ     4月下旬〜5月上旬

⇒ブルーベリーの花(5月頃)
⇒6月頃はこんな感じ

 

 

4:良い苗を選ぼう

では、はじめて育てるブルーベリーの苗は、

どれくらいの大きさのものを選べばよいでしょうか。

 

エンピツ状の茎が1本挿してあるような苗だと

収穫できるようになるまでに数年かかります。

直径9cmポットの苗でも早くて翌年、

収穫できるかなぁ、どうかなぁという感じ。

 

若い苗木から育てるほうが面白いんだけど

はじめてさんには、ある程度、大きくて

分枝した苗、花がついている苗の方が安心です。

 

そのほか、接木苗(つぎきなえ)もオススメです。

主に、ラビットアイ系の台木に

ノーザンハイブッシュ系の苗を接木しています。

暖地で寒冷地向けの品種を栽培するときは

このような接木苗が丈夫で育てやすいですよ。

 

5:ブルーベリーは土が命

ブルーベリーは、土さえちゃんとしていれば

手軽に育てられます。

 

ほかの植物と違って

酸性の土を好むところが、ちょっと特殊なんです。

 

土壌を酸性に傾けるには、

酸性の土壌改良材ピートモス

(コケなどの植物が積み重なって腐植化し、

何年もかけて泥炭化したもの)を使います。

ところが、

酸度が調整されているピートモスは結構、出回っているけど、

PH無調整のピートモスを探すのが、まず大変。

さらに、赤玉や鹿沼、堆肥を混ぜて、

自分で土を作るので、ものすごく苦労します。

 

何種類もの土を買いそろえるだけでも

かなりの量と金額になってしまうので

市販の「ブルーベリーの土」(培養土/酸性用土)を

利用した方がいいと思いますよ。

 

自分で土を作りたいと思ったら

仲間4〜5人で素材を共同購入するとかね、

「ブルーベリーの土を作る会」みたいな活動が

できたらいいかもしれないですね。

 

 

 

6:どこで育てればいい?

植木鉢でも、地植えでも、

年中、日当たりの良い屋外で大丈夫です。

 

品種にもよりますが、

おひさまにしっかり当てた方が甘みは増しますよ。

 

2本以上並べるときには、お互いの陰で

日陰にならないよう気をつけて。

 

冬に葉っぱが全部落ちたら

そのまま寒い空気にガンガンあてましょう。

ツツジの仲間なので、そうしないと

いい花が咲かないんですよ。

 

なお、小さい苗を鉢植えする場合は、

最初は直径15cmくらいの5号鉢とか

小さめの鉢に植えましょう。

2〜3年に1回、植え替えて

徐々に鉢を大きくしていきます。

 

 

7:ブルーベリー専用肥料でよりおいしく!

苗を土に植えたら、まず、たっぷりの水と、

ブルーベリー専用の肥料を適量与えます。

肥料によって株が健康になれば、

おいしさもアップするし、

実つきも良くなりますよ。

 

前年から植えてある木の場合は、

花が咲く前の春先(3月頃)に肥料を与えます。

 

そして、収穫後8〜9月あたりに

「お礼肥」を与え、

12月の寒くなる頃に「寒肥」を

与えるといいでしょう。

 

 

 

8:土の乾燥対策を忘れずに

ブルーベリーの弱点は、夏の高温と乾燥。

植木鉢は意外と高温になるので

西日に当てないなど配慮してあげてくださいね。

 

また、土の表面をマルチングして

温めないことも大切です。

 

ウチでは「わら」を敷いています。

わらは、土中の温度上昇を抑えるだけでなく

乾燥も防いでくれるんですよ。

 

植木鉢の場合は、

5cmぐらいに切ってある「わら」が市販されているので

これを株元に敷き詰めてあげるといいです。

 

そして、毎年、冬がくる前に

新しい「わら」を敷きなおしましょう。

 

9:水やりはメリハリをつけて!

苗を植えたら、まず、たっぷり水を与えます。

そして、2か月ぐらいの間は、

あまり根を乾かさないようにします。

根が張ってくれば多少、乾いても大丈夫なので

基本的に水の量は少なめに。

 

実がついてきたら、

3日に1回のペースで水をあげましょう。

 

水分不足になると実がシワシワになって

落ちちゃうので

実が大きく育つ様子を楽しみながら

乾燥させないように気をつけてくださいね。

 

ただし、水をあげ過ぎると

味が薄くなるのでほどほどに。

 

 

10:防鳥ネットは必需品!

果樹を育てるなら「防鳥ネット」は必需品!

ネットの目のサイズは

細かい方がいいです。1cm角ぐらい。

 

植木鉢で育てるなら

釣り糸(テグス)を使うのも

効果絶大ですよ。

 

木の周りに支柱を3〜4本立てて、

あんどん仕立ての支柱みたいに、

釣り糸をぐるぐると巻きます。

 

鳥は、目に見えないものが羽に当たると

来なくなるので試してみてくださいね。

 

 

11:中級者は冬のお手入れをしっかり!

翌年も花を咲かせて果実をたくさん収穫するには、

それなりに手間がかかります。

 

この手間が楽しい、と思えたら

あなたは、もう中・上級者!

ガーデナーの仲間入りですね。

 

冬に入る前に「わら」などでしっかり土を覆い、

冬の間に剪定・施肥・薬散を行いましょう。

 

剪定は落葉後に行います。

その際、花芽を切り落とさないよう気をつけて。

枝先に、もじゃもじゃっとついている

まん丸の形の芽が花芽です。

 

それから植木鉢の場合、

植えて3年目を過ぎると

実つきが悪くなるので冬の間に植え替えましょう。

 

実つきが悪くなる理由は、次の2つ。

1・鉢の中で根がいっぱいになってしまうから。

2・土の酸性度が弱酸性方向に偏ってしまうから。

 

そこで、2〜3年に1回、

植木鉢から株ごと抜いて

古い土をたたき落とし、

新しい「ブルーベリーの土」に入れ替えます。

 

このとき、根鉢がいっぱいになっていたら

鉢の大きさをひと回り大きくします。

 

地植えの場合は、周囲の土ぜんぶを入れ替えるんじゃなくて、

2〜3年に1回、ピートモスを追加するなどして酸性度を高めます。

 

私は、株元に20cmぐらいの穴をあけて、

そこに無調整ピートモスと牛ふん堆肥を

1:1に混ぜたものを入れています。

 

奇数の年は株元の東西、

偶数の年は南北に入れる。

これを繰り返しやっています。

 

 

 

Q&A

Q:できるだけ農薬を使わずに害虫を防ぐには?

A:ブルーベリーと相性のいいコンパニオンプランツを一緒に植えましょう。

オススメはミント(各種)です。

ミントの香りでムシが近づかない上、日陰にも強いです。

ペニーロイヤルミントなど、

地を這うようにのびる、ほふく性のミントなら

ブルーベリーの足元を美しい緑で覆ってくれますよ。

 

Q:葉っぱや茎の色がおかしいのは病気?

A:何らかの病気か欠乏症の可能性があります。

液体肥料を与えるだけで元気に戻ることもあるので、「ハイポネックス1000倍」など、いつも使っている肥料を与えてみてください。

もしかしたら、根に障害が出ているのかもしれません。

または、葉っぱに赤い斑点が出ていたり、葉色が薄くなったりしていたら「さび病菌」に感染しているかもしれません。

その場合は、できるだけ早期に適切な処置と薬を。なお、果実は口に入るものだから適用農薬を調べて使いましょう。

農薬を使いたくない場合は、ミカンの皮の内側にある白い部分に含まれるペクチンという成分に「さび病」への効果が認められているので、

ミカンの皮を干してパリパリにしてから粉々にし、土に漉き込んでおくといいですよ。

茎の色が茶色になっていたら、鉄砲虫=カミキリムシの幼虫が茎の中に入っちゃったりして、すでに枯れているかもしれないです。

 

Q:枝に白いものがいっぱいついています(涙)

A:害虫のカイガラムシの可能性が大きいですね。

大量発生している場合は、カイガラムシ用スプレー剤で駆除してください。

また、翌年に害虫を持ち越さないよう、冬の間にスプレー剤で殺虫しましょう。

害虫がつく前にスプレー剤を散布しておけば防虫にもなります。

冬の間にしっかり剪定して風通しをよくしておくことも防虫に欠かせません。

 

Q:果実に白い粉がついているのは、なに? 食べられる?

A:「ブルーム(果粉)」といって、ブルーベリー自身が

果実の乾燥を防ぐために分泌する保護成分です。

もちろん、食べても大丈夫ですよ。

 

Q:株元近くから勢いのいい枝が出てきました。このまま伸ばしてもいい?

A:その枝は「シュート」と言います。シュートをそのままにしておくと、

養分が集中するので、どんどん背が高くなっちゃいます。

ご自分の腰から胸ぐらいのあたりで摘芯して

側枝を出させて花芽をつけさせましょう。

 

投稿日:2022年6月8日

 

この記事のカテゴリ

矢澤先生のプロフィール

ホームセンタータイム
ガーデンアドバイザー
矢澤 秀成 先生

矢澤 秀成 先生

現在、やざわ花育種株式会社、葉乃畑合同会社に所属し、代表取締役社長を務める。
種苗会社植物バイオ研究室に16年勤務し、多くの花や野菜を開発する。その間、国内新花コンテストで金賞を含む18回入賞、社内では社長賞2回受賞する。
種苗会社退職後、大手ホームセンター商品開発部長及び顧問、大手肥料メーカー顧問、パテント会社代表、野菜市場顧問、ガーデンセンター顧問などを歴任。多くの植物園などのヘッドガーデナーや監修を行う。
育種家として、多くの個性的な花や野菜、漢方薬などの新種育成を行っており、18年前から全国各地の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う。子供たち自身が交配して世界に一つだけの小さな種を作り、その種を大切に育て世界に一つだけの花を咲かせる授業を行っている。さらに「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、2002年から地域の花好きを育て、そして花の街を育てる「花のマイスター養成制度」を提案しスタートする。現在全国各地でマイスターを育てる花の学校を開校し、マイスターと共に花いっぱいの公園づくりや街づくりに取り組んでいる。
NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」、NHK長野「ひるとく」、BS-日テレ「麗しの庭散策」、SBCラジオ「ずくだせ エブリデイ」、篠ノ井有線放送「花暦」などの多くの園芸番組の講師として出演中。全国で講習、講演活動を多数行い、園芸関連多数執筆中。