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矢澤先生によるコラム 教えて!矢澤先生!

育種家として第一線で活躍する
矢澤秀成さんによる園芸の旬な情報をお届け

第48回「自然農法」を楽しもう!

みなさん、こんにちは!

園芸研究家の矢澤秀成です。

 

いま、世界では『食』へのこだわりから

自然栽培やオーガニック栽培など

自然と調和する持続可能な農法に

注目が集まっていますね。

 

もちろん日本にも関心の高い方が多いのですが

自然栽培、自然農法、自然農、有機栽培などなど

いろんな名称があり過ぎて違いが分からない、

そんな声をよく聞きます。

 

確かに、それぞれ違いがあり、

ややこしい印象があるかもしれませんが

農薬や化成肥料を使わない、

土は耕さない、

雑草を抜かずに

雑草も虫も味方にする、

など、共通する部分も多いんですよ。

 

そこで、第48回は

「自然農法」に挑戦してみたいな、という方のために

実践していること、楽しむコツなどをお話いたします。

 

1:実践している自然農法

いろんなタイプの自然農法がありますが

「あれがダメ、これがダメ」ではなく

再生可能なモノ、自然のモノは

積極的に利用するようにしています。

 

自然農法に興味があるならば

できるところから取り組んでみる、

 

そんな風に気軽に

チャレンジしてもらえたら

いいんじゃないかな。

 

とくに大切にしているものは

『土』『根っこ』

そして、

『雑草』『虫』を味方にすること。

 

トマトやキュウリ、スイカ、メロン、

トウガラシ、ピーマン、キャベツ、

ブロッコリー、タマネギ、ニンニク、

ニラ、トウモロコシなど

自分流の自然農法で

いろんな作物を育ててみましょう。

 

全体的に、野菜の味が濃いと感じています。

 

 

2:肥料に頼らない土づくりを頑張ろう

新しい畑を借りると

以前の使用者さんが使っていた農薬や

化成肥料が畑の土に残っていることが多いので

1年目は、まず土づくりをがんばって

化成肥料が抜けるのを待ちます。

 

化成肥料の成分が残っていると

野菜はふとっておいしくなるんだけど

 

ふとるとね、人間と同じで

病気を呼びやすくなる、と感じています。

虫も寄ってくるんですよ。

 

私は、私自身が手がける工場で

国産100%、5次発酵の完熟腐葉土を製造し、

この腐葉土だけで土づくりをします。

1年かけてね。

 

5次発酵の腐葉土は

葉っぱの形が残っていないところまで

熟しているので、そのまま畑に使えるんです。

 

みなさんは、

1年目には畑の土と市販の腐葉土を

混ぜてみてください。

しっかり混ぜましょう。

で、試験的にいろいろな野菜を栽培して

その畑の様子を観察します。

 

2年目になると

育てた野菜の姿やカタチがかなり変わります。

野菜がね、引き締まってくる、と言えばいいかな。

 

やや小さめになりますけど、

キャベツの葉も肉厚になります。

ちなみにキャベツって、1枚目・2枚目とかね、

外側の葉っぱは虫が食べるように

できているんですよ。

 

3枚目以降の葉っぱは

虫が嫌いなえぐみみたいなものを出すから

虫が避けるんです。

 

野菜の「えぐみ」には、

マズイえぐみと旨いえぐみがあってね、

旨いえぐみの方が出てきますよ。

 

野菜自体が、虫を寄せ付けない

何かを出すんでしょう。

自然って、おもしろいですね。

 

 

3:自然のチカラを利用しよう

自然農法を実践しておられる方の中には

「肥料を一切使わない」という方もいらっしゃいますが

ボカシ系の肥料や

EM(有用微生物)堆肥を

使うことは良いと思います。

 

発芽が悪いとき、生育が悪いとき

野菜の元気がないときに

EM堆肥やボカシ系肥料を

ちょこっと根元に置いてあげると

ググッと元気になりますよ。

私が使っているのは

油かすとヌカを混ぜて発酵させたもの。

これを置き肥えにして使っています。

このほか、

野菜くずなどをコンポストした堆肥も

いいと思います。

ただし、しっかり発酵したものを

使ってもらえたら、と思います。

 

岡山市内のタイムでは

岡山市の「桃太郎コンポスト」を

取り扱っているそうですね。

ほかにも市販のコンポストが

いろいろあるので見比べてみましょう。

さらに、「緑肥」も利用していますね。

文字通り、緑を肥料にします。

新鮮な緑色の植物を土にすき込んで

土に栄養を施す方法です。

 

代表的な緑肥といえば、

マメ科の植物やイネ科のエン麦など。

 

畑全面にエン麦のタネをまいて

土づくりをしながら

緑肥もつくっています。

エン麦が育ったら土の上に倒して

その間に野菜を植えます。

それから自然農薬として

重曹を使っています。

 

重曹の割合が濃いと葉っぱが溶けちゃうので

必ず重曹は1%未満にします。

あとは

コンパニオンプランツも

利用していますよ。

 

忌避効果のある作物を

一緒に植えるのですが

たとえばトマトだったら

バジルとニラね。

 

ニンニク、トウガラシ類もいいですよ。

 

レタスにも、忌避効果があります。

レタスを食べると苦味があるでしょう?

手でちぎると白い乳液みたいな液体が

出ると思うんですけど

あれが苦手な虫が多いみたい。

 

トマトとレタスとか、

ナスとレタスも一緒に植えて

害虫を予防しています。

 

 

4:雑草との付き合い方

「雑草があると虫がたくさんくるだろう」という発想は

全く逆だと思います。

 

私も、実践して初めて気がついたんですけど

雑草って、野菜を守ってくれるんです。

本当に、おもしろいです。

 

雑草は抜きません。

ある程度の高さになったら

刈るようにしています。

 

刈った草は、刈った場所に置きます。

 

そこの土地の栄養を吸収して

育ってきた草なので

その土地に戻してあげる、という考え方です。

 

こうすると畑の土が乾かないので

マルチング材の代わりにもなります。

 

自然農法を続けているとね

土がカチカチにならない、

自然と「フカフカ」の土になるんです。

 

なぜかというと、雑草が土を耕してくれるから。

 

とくに、イネ科の草は強い根っこを持っているので

土の奥深くまで入り込みます。

冬になって地表の部分が枯れると

根っこも枯れてくるんですが

その枯れた根っこをバクテリアが食べるので

根っこのあった部分に

空洞ができるんですね。

 

つまり、土の奥深くに

空気を入れてくれるわけ。

雑草が自然と土を耕してくれてるんです。

 

だから、わざと

畑にエン麦のタネをまいています。

マメ科のカラスノエンドウも最高ですよ。

カラスノエンドウは

マメ科なので窒素固定をして、

土中に栄養分をつくってくれます。

 

ちなみに、自然農法に挑戦した

多くの人が迷うのは2年目以降だと思います。

 

草がいっぱい生える畑で

「どうするんだ?」って話。

 

ネットなどで調べると

自然農法では作物のタネをまいて

育てるやり方が主流のようですが

タネまきじゃなく、

草をかき分けて穴を掘って

ある程度、生育した苗を植えています。

そうすると、草に負けないで伸びてくれます。

 

あ、でも、野菜の種類によっては

タネからでも平気で育ちますよ。

レタスは、こぼれ種でも

バンバン芽が出ます。

軽井沢の冬は、マイナス20度くらいまで冷えるのに

冬越しもできるんですよ。

葉っぱも肉厚で、パリパリした食感で、うまいです。

しかも、香りがすごくいい。

 

自然農法を試されるならば

1年目は農薬と化成肥料を抜くための期間と考えて

土づくりをがんばりましょう。

 

そして、2年目以降は

野菜苗を購入し、植え付けて育てる。

 

自分流の解釈で

できるところから始めてみては

いかがでしょうか。

 

 

5:プランターで始める自然農法

庭や畑がなくても自然農法で野菜を育てたい。

 

そう思ったら

プランターで始めてみませんか。

 

問題は「土をどうするか」、ですね。

 

市販の野菜用培養土には

化成肥料が含まれているのですが

とりあえず1年目は、これを使って

おいしい野菜を育てて

「こんなに虫が寄ってくるんだな」

という体験をしてみてください。

 

2年目には化成肥料が抜けて

地力もなくなるので

その土に、再生可能な腐葉土や

ヤシガラピートなどを混ぜて

自然農法に適した土をつくって

挑戦してみたら良いと思いますよ。

 

 

6:【番外編】鳥や獣はネットで防御

自然農法を実践している畑には

化成肥料も農薬も、

殺虫剤も使っていないんですが

カラスがイタズラするので

困っています。

 

この間は、カラスが落花生を全部ほじくり出して

持って行っちゃった(苦笑)。

 

だから、虫よけはしていないのですが

カラスよけのため

「防鳥ネット」は不可欠です。

 

とくに、芽が出るまでは

カラスがタネや新芽をほじくり返すことのないよう

ネットをベタ掛けするなど

物理的な対策をおこなっています。

 

 

Q&A

Q:自然農法に取り組みたいのですが、夏のヤブ蚊対策に困っています。

殺虫剤を使わない、何か良い方法がありますか。

A:私は、夏の蚊対策として「ミント」を使っています。

ミントの香りは蚊よけになるんですよ。

蚊だけでなく、ゴキブリやカメムシ、アリなども

ミントの香りが苦手だから、これらの害虫を寄せ付けないんです。

私は自家製のミントスプレーを作って

作業前、全身に振りかけています。

ミントスプレーの作り方は、とっても簡単。

スプレー容器にミントの葉と無水エタノール、水を入れて

シャカシャカとよく振り、ひと晩置くだけです。

ミントは食用にも使えますから

窓辺やベランダなどでプランター栽培しておくと

便利だし、虫よけにもなりますよ。

田んぼや畑の土手で育てておくのもいいですね。

 

第49回目は、ハイビスカスについてお話しします。

8月7日ごろ投稿予定ですので、次回もお楽しみに!

 

投稿日:2024年7月10日

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矢澤先生のプロフィール

ホームセンタータイム
ガーデンアドバイザー
矢澤 秀成 先生

矢澤 秀成 先生

現在、やざわ花育種株式会社、葉乃畑合同会社に所属し、代表取締役社長を務める。
種苗会社植物バイオ研究室に16年勤務し、多くの花や野菜を開発する。その間、国内新花コンテストで金賞を含む18回入賞、社内では社長賞2回受賞する。
種苗会社退職後、大手ホームセンター商品開発部長及び顧問、大手肥料メーカー顧問、パテント会社代表、野菜市場顧問、ガーデンセンター顧問などを歴任。多くの植物園などのヘッドガーデナーや監修を行う。
育種家として、多くの個性的な花や野菜、漢方薬などの新種育成を行っており、18年前から全国各地の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う。子供たち自身が交配して世界に一つだけの小さな種を作り、その種を大切に育て世界に一つだけの花を咲かせる授業を行っている。さらに「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、2002年から地域の花好きを育て、そして花の街を育てる「花のマイスター養成制度」を提案しスタートする。現在全国各地でマイスターを育てる花の学校を開校し、マイスターと共に花いっぱいの公園づくりや街づくりに取り組んでいる。
NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」、NHK長野「ひるとく」、BS-日テレ「麗しの庭散策」、SBCラジオ「ずくだせ エブリデイ」、篠ノ井有線放送「花暦」などの多くの園芸番組の講師として出演中。全国で講習、講演活動を多数行い、園芸関連多数執筆中。