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矢澤先生によるコラム 教えて!矢澤先生!

育種家として第一線で活躍する
矢澤秀成さんによる園芸の旬な情報をお届け

第42回花も葉もかわいい! 1年中楽しめる「ベゴニア」

みなさん、こんにちは!

園芸研究家の矢澤秀成です。

 

春になると、たくさんの花苗が売り場を彩って

何を植えようかな、と迷いますよね

 

そこで、今年は

初心者の方にも育てやすいだけでなく

1年を通して花を楽しめ、

さらに、挿し木で増やすこともできる

「ベゴニア」を育ててみませんか。

 

近年、とっても品種が増えて

少しずつファンも増えているんですよ。

 

ということで、第42回は

「ベゴニア」のお話です。

 

 

1:ベゴニアについて

「ベゴニア」の魅力といえば

初心者にも育てやすく、長期間、花を楽しめるところでしょう。

 

原産地は熱帯・亜熱帯(オーストラリアを除く)ですが、

シュウカイドウ科シュウカイドウ(ベゴニア)属に

分類されます。

ちなみに「シュウカイドウ」とは日本の山野に

自生する「ベゴニア」の名称です。

 

「シュウカイドウ」は寒さで茎葉は枯死しますが、

ムカゴが地面に落ちて、寒さに耐えて春を迎えます。

暖かい瀬戸内エリアだと戸外でも

冬越しできるんじゃないかな。

 

でも、ホームセンターで販売されている

「ベゴニア」は寒さに弱いので

基本的には一年草扱いですが

挿し木で更新すると

何年も楽しめますよ。

 

 

2:品種

「ベゴニア」は現在、2,000種類以上あると言われ、

さらに、交配種まで数えると、その数倍にもなるほど

いろんな品種があるので、

多彩な花や葉が楽しめます。

 

共通の特徴は、ひとつの株に雄花と雌花がつく

「雌雄異花」であること。

そして、左右非対称の葉の形。

「ベゴニア」の葉っぱが好き、という方も

増えています。

 

気をつけたいのは、

品種によって育て方が異なる点。

 

そこで、今回はホームセンター「Time」で

人気の2品種

「センパフローレンス」

「エラチオール」

をご紹介したいと思います。

 

 

「センパフローレンス」

センパフローレンスは、

花壇の定番アイテムです。

雨や病気に強く、

春から晩秋まで長い間、花を楽しめます。

ホームセンターの売り場では

9cmポット苗で売られていることが多いですね。

寒さに弱いので、戸外での冬越しには適しません。

霜が降りる前に軒下や室内に取り込み、

日当たりの良い窓辺で管理すると

冬越しできるかもしれません。

 

各社がセンパフローレンスを改良して

いろんな商品を出しているので、

多種多彩な花、色、葉っぱが選べますよ。

葉っぱが真っ黒のものも出てきました。

その他、銅葉や緑葉とか、

花も八重咲きとか、シングルとかね、

いろんな品種のベゴニアを混ぜて

葉っぱの色や花の色で美しくデザインして

植える方が多いですね。

ベゴニア センパフローレンス
ベゴニア センパフローレンス
ベゴニア センパフローレンス
ベゴニア センパフローレンス

 

「エラチオール」

エラチオールは室内の窓辺などで育てます。

ホームセンターでは

冬の鉢花として販売されることが多いので

冬の花と思っている人が

多いかもしれませんが

真夏以外は1年中、花を楽しめます。

とはいえ、だんだん弱っていくので

挿し木で更新すると良いでしょう。

エラチオールベゴニア
エラチオールベゴニア

なお「ベゴニア」は通常、売り場で

「ベゴニア」と表記されていますが

各メーカーが品種改良したものに関しては

メーカーが独自につけた名前(商品名)で

販売されていますよ。

 

 

3:植えつけ

花壇に植える場合は、

日当たりが良く、

水はけや風通しの良い場所に植えましょう。

 

強い日差しや西日が当たると

株が弱るので注意してください。

長雨にも注意!

とにかく水はけを良くしないと

葉っぱが全部落ちてしまうことがあります。

 

花壇に植えるとしたら

土は、水はけを良くしたいので

しっかりとした団粒構造の土に植えることが大事。

泥土はダメです。

しっかり耕し、腐葉土を入れて

水はけを良くする改良作業をしましょう。

 

鉢植えの場合は草花用培養土を使います。

そんなに植え替える必要はないのですが

何年もそのまま植えっぱなしだと

株が弱ってしまうので、

鉢底から根が見えてきたり、

株の大きさと鉢が合わなくなってきたりしたら

植え替えましょう。

また、芽吹きが悪くなってきたら

枝をポキッと折って、

挿し木で更新した方がいいですよ。

 

4:水やり

植えつけ時にたっぷりと水をあげたら

そのあとは、どちらかというと

過湿に注意が必要です。

とくに、真夏と冬の水やりは控えめに!

根腐れ注意です。

 

花壇の場合、根が張るまでは

しっかり水を与えてもいいけれど、

そのあとは基本的に不要です。

真夏のみ、土が乾いていたら

早朝にたっぷりと水を与えましょう。

 

鉢植えの場合は、土の表面が乾いたら

水を与える程度で大丈夫です。

 

花壇の場合、水やりよりも除草が大事。

しっかり除草しないと雑草の方が早く伸びて

ベゴニアが負けてしまい、

枯れてしまうこともあります。

だから、しっかり除草しましょう。

草を1本ずつ抜いていければ良いのですが

難しい人は、ハサミで草の上部を切るだけでもいいです。

 

また、センパフローレンスは、

真夏もしっかり水をあげる必要がありますが、

ずっと湿っているような状態は良くないので

メリハリをつけて。

土の表面が、やや乾燥気味な状態になったら

水をたっぷりあげましょう。

 

 

5:肥料

花壇の場合は、元肥として緩効性化成肥料を入れたあと、

花期が長いので、途中、肥料を施した方がいいですね。

マイガーデン

ただし、夏真っ盛りの7月・8月だけは避けて。

暑さが少しおさまった9月中旬くらい、

ヒガンバナが咲く頃ですね、

そのあたりに施肥をした方がいいですね。

緩効性化成肥料を適量、パラパラとまいてください。

 

鉢植えの場合は、元肥を入れないで

植えつけから2週間後に

粒状の緩効性化成肥料を適量まくようにします。

マグァンプK

そのあと、生育の状態を見て、

葉の色が薄れたなと思ったら

適量の液体肥料を1〜2週間おきに1回程度、

与えるようにしてください。

 

 

6:花がら摘み・切り戻し・植え替え

花が終わったら、花茎のつけ根で切り落とします。

1週間に1回くらいのペースで

花がらを取り除くと良いですよ。

そして、ツボミがなくなってきたら

根元に近いところで切ってあげます。

そのままにしておくとタネがついて

弱ってしまうので、しっかり切ってあげましょう。

 

切り戻し作業は、

切り口がすぐ乾くような時期がお勧め。

梅雨あけと同時ぐらいのタイミングで行います。

 

約1/2の草丈に切り戻すと

秋に、また開花しますよ。

 

品種によって草丈の伸び方が異なるので

混植している場合は、

草丈がいろいろな高さになってしまうので

高さを揃えて切ってあげると

キレイに揃って咲いてくれます。

 

ハサミで切ると切り口が乾燥して

5mmから1cmぐらい

キュッとしまるんですね。

だから、わき芽の1〜2cm上の位置で切り戻すなど

余裕をもって切った方が

下の脇芽を傷つけません。

 

 

7:挿し木で株を更新しよう

ベゴニアはタネもできるのですが

基本的には挿し木で増やします。

 

挿し穂には、開花していない茎で、

葉芽のある節から2〜3節の長さを使います。

 

開花していたら、ツボミと花は取り除きます。

ツボミや花が残っていると、

そちらに栄養が吸収されてしまうので

取り除いてから挿します。

1カ月くらいで

根っこがはえてきますよ。

 

ほかに、葉を土に挿す「葉挿し」という方法もあります。

葉っぱを折って半分に切って

土に挿すと根っこが出て

2カ月ぐらいかけて苗に成長します。

 

土は、挿し木用の専用土、または

鹿沼土の細粒がお勧め。

あまり栄養分のある土だと、

ベゴニアの切り口からバクテリアが入りやすくなるので

挿し木に適した土を選びましょう。

挿し芽の土
鹿沼土細粒

 

※なお、登録品種は種苗法によって

挿し木で増やした株の譲渡販売が

禁止されています。

 

 

8:病気と害虫について

病気は、カビ・菌に要注意です。

 

最近、特に菌核病がすごく多いんです。

学校や公園の花壇など、

何年も使っている花壇や

土を休ませずに使っているような花壇で

菌核病がまん延しているようです。

中でも、センパフローレンスが立ち枯れするケースが

非常に多いんですよ。

 

もしも、苗を植えつけて2カ月もしないうちに

土と茎の接点のあたりが溶け出して

枯れてしまった場合は

土に原因があるのではないかと

疑ったほうがいいと思います。

 

また、古い花壇の場合は

菌核病やカビの病気を防ぐために

殺菌剤を散布してから定植することも必要でしょう。

土壌殺菌剤(フロンサイド)

では、殺菌剤を使いたくない場合は、

どうするかというと

 

一番いいのは

昔から言われているように

上層部と下層部を入れ替える

「天地返し」という方法がお勧めです。

 

これは、江戸時代の昔から

日本で行われてきた方法なんですけどね

 

土の上部(地表部)10cm〜15cmを掘り上げておき、

さらに、その下部(深層部)を10cm〜15cmほど掘って、

先ほどの上部の土と下部の土を入れ替えます。

 

まさに、天と地を逆にするから「天地返し」。

 

理由は、地表から15cmより下には、

ほとんどカビや菌類がいないからです。

 

ただし、大きな花壇の場合、

土の上部と下部を入れ替えるなんて

重機を使わないとできないですから

現代では、殺菌剤を散布するのが普通のやり方です。

 

でも、ごく小さな花壇だったら

昔ながらの「天地返し」をやってみるのも

いいと思いますよ。

 

最後に、ベゴニアを育てる際に気をつけたい害虫は、

ヨトウムシ、アブラムシ、ホコリダニなど。

 

中でもホコリダニは、肉眼では、ほぼ見えないので

花や葉に奇形が現れたり

葉の表面がモザイク状になったり、

「なんか、コレおかしいぞ」という

症状が出てきて気づくことになるので

覚えておいてください。

 

そういう症状があらわれたら

葉のウラ側を虫メガネで見てください。

半透明で楕円型の虫が見えたら

ホコリダニだと思います。

スプレー式の殺虫剤で駆除をしましょう。

ベニカXファインスプレー
ベニカネクスト

できれば、害虫が発生する前に

シュシュッとスプレー式の殺虫剤を

かけて予防しておくといいですよ。

 

 

第43回目は、さつまいも についてお話しします。

4月24日ごろ投稿予定ですので、次回もお楽しみに!

 

投稿日:2024年4月10日

 

 

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矢澤先生のプロフィール

ホームセンタータイム
ガーデンアドバイザー
矢澤 秀成 先生

矢澤 秀成 先生

現在、やざわ花育種株式会社、葉乃畑合同会社に所属し、代表取締役社長を務める。
種苗会社植物バイオ研究室に16年勤務し、多くの花や野菜を開発する。その間、国内新花コンテストで金賞を含む18回入賞、社内では社長賞2回受賞する。
種苗会社退職後、大手ホームセンター商品開発部長及び顧問、大手肥料メーカー顧問、パテント会社代表、野菜市場顧問、ガーデンセンター顧問などを歴任。多くの植物園などのヘッドガーデナーや監修を行う。
育種家として、多くの個性的な花や野菜、漢方薬などの新種育成を行っており、18年前から全国各地の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う。子供たち自身が交配して世界に一つだけの小さな種を作り、その種を大切に育て世界に一つだけの花を咲かせる授業を行っている。さらに「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、2002年から地域の花好きを育て、そして花の街を育てる「花のマイスター養成制度」を提案しスタートする。現在全国各地でマイスターを育てる花の学校を開校し、マイスターと共に花いっぱいの公園づくりや街づくりに取り組んでいる。
NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」、NHK長野「ひるとく」、BS-日テレ「麗しの庭散策」、SBCラジオ「ずくだせ エブリデイ」、篠ノ井有線放送「花暦」などの多くの園芸番組の講師として出演中。全国で講習、講演活動を多数行い、園芸関連多数執筆中。