第40回いつもそばにいてくれる花「クリサンセマム」
みなさん、こんにちは!
園芸研究家の矢澤秀成です。
さて、今回ご紹介する「クリサンセマム」ですが
もしかすると「クリサンセマム」という名前よりも
「ノースポール」とか、「スノーランド」のほうが
よく聞く名前かもしれませんね。
「ノースポール」や「スノーランド」は
種苗会社がつけた商品名なのですが
いつの間にか
こっちの方が一般的になっちゃいました。
本来、「クリサンセマム」とは
「キク科キク属」全体を指す総称で
学名は、また別の名称がついているという…。
ところで私は学生時代、「キク」を専攻していたんですよ。
卒論も「キク」でした。意外ですか?
花びら1枚から「キク」を栽培する花弁培養とかね、
「キク」のバイオテクノロジー研究をしていたんです。
学校のみんなからは「キクオ」と呼ばれていたほど(笑)。
「キク」に夢中でした。
そんな私にとって「クリサンセマム」は
ふと気づくと、そばにいてくれるような大切な花。
みなさんにも、ぜひ好きになってもらいたいと思います。
ということで、第40回は
「クリサンセマム」のお話です。
目次
1:クリサンセマムについて
ホームセンターの園芸売り場で
「クリサンセマム」と書かれたラベルを探すと
白い花は「クリサンセマム・パルドサム」、
黄色の花は「クリサンセマム・ムルチコーレ」と
書かれていることが多いです。
厳密に言うと学名は異なるのですが
どちらも昔、クリサンセマム属に分類されていたため、
その名残で今も「クリサンセマム」と呼ばれています。
ちなみに、「ハナワギク」も「クリサンセマム」の仲間です。
どれも丈夫で栽培が容易なので
ガーデニング初心者の方にも
オススメしたい草花です。
育てやすいから
公共の花壇で見かけることも多いと思います。
ほとんど1年草扱いなんですが、
夏越しできれば2年目も開花しますよ。
では、その「クリサンセマム」の代表的なものを
3種ご紹介しましょう。
- クリサンセマム・パルドサム
(商品名:ノースポール、スノーランドなど)
「クリサンセマム・パルドサム」は
キク科フランスギク属に分類され、
学名は、レウカンセマム・パルドサムといいます。
原産地は、南ヨーロッパ、北アフリカなどの地中海沿岸。
花径3cmほどの白色の花弁と
芯の黄色とのコントラストが美しく、
マーガレットによく似た
清楚な印象の花を咲かせます。
マーガレットのほうが、ちょっと花が大きいです。
暖かい地域なら、秋まきで冬を越し、
1〜2月から少しずつ花が咲き出し、
3月くらいからブワ〜ッと一気に咲きます。
強くて育てやすく、
開花期は早春の2月から
初夏の6月までと長いのが特長。
ビオラ、パンジー、ハボタンと並ぶ
冬から初夏にかけてのガーデニング素材として
なくてはならない存在です。
植えた周辺にタネが自然に散らばるので
いつの間にか、こぼれ種で増えるんですよね。
それくらい丈夫な植物です。
- クリサンセマム・ムルチコーレ(黄色い花)
「クリサンセマム・ムルチコーレ」は
アルジェリア原産で「キク科コレオステフス属」に分類されます。
原産地では多年草ですが、
高温多湿の日本では夏越しが難しいので
1年草扱いされています。
パルドサムと同程度の花の大きさですが、
色は黄色。
丸みを帯びた花形も特徴です。
また、草姿はいくぶん横に這い気味に広がります。
花数が多いので、花壇や吊り鉢に適しています。
園芸売り場では「アップライトイエロー」とか、
「ひなたぼっこ」といった商品名で
売られているかもしれません。
これらは、みんな「クリサンセマム・ムルチコーレ」の仲間です。
パルドサムは冬の間から花苗が出回りますが
ムルチコーレはパルドサムより寒さに弱いので、
ムルチコーレの花苗は2月の終わりから3月にかけて出回ります。
定植も春になってから行い、低温期の間は防寒しましょう。
寒冷地は、特に注意です。
3月の終わりから4月に
遅霜が降る地域では気をつけた方がいいですね。
霜注意報が出たら、ペットボトルをかぶせたり
苗カバーをかけたりして対策しましょう。
- ハナワギク
「ハナワギク」は、キク科クリサンセマム属の植物です。
「ハナワギク」は、今でも「クリサンセマム属」なんです。
ですが、ハナワギクを扱っているお店って
実は少ないんですよね。見つけたらレアですよ。
他の2種に比べると
赤、黄、白など色彩が豊富で
花弁の基部に赤や黄色の蛇の目模様が入ります。
花も、ちょっと大きくなります。
草丈も60〜80cmという高性種です。
育つとかなり大型になって場所を取るので、
花壇に植える際には、よく考えて植えてくださいね。
2:土・置き場所
「クリサンセマム」は、どれも
水はけと保水力のバランスの良い、
肥沃な土を好みます。
花壇に植える場合は
定植する1週間前までに
苦土石灰をまいてpHを調整しましょう。
鉢で育てる場合は、市販の草花用培養土を
使ってもらえば大丈夫です。
日当たりを好む植物なので
育てる場所にも気をつけてあげてください。
特に、ムルチコーレは日光を好みます。
日陰で育てると、花の咲く数が少なくなると思います。
パルドサムのほうは、日陰で育てると伸び上がり、
ヒョロヒョロとした姿になることがあります。
また、パルドサムは寒さには強いですが、
寒風や強い霜に当たると葉先が茶色くなって
枯れることがあるので
寒風の当たらない場所に置きましょう。
ムルチコーレは寒さに弱いため、
定植後の霜害に注意しましょう。
3:水やり
基本的に、鉢土の表面が乾いたら
たっぷりと水をやりましょう。
ただし、過湿にやや弱く、湿り過ぎると
根腐れを起こすことがあるので
やり過ぎないように。
特にムルチコーレは過湿に弱いので
やや乾かし気味に管理しましょう。
花壇の場合、定植後は、ほったらかしで大丈夫。
水も、最初だけ与えればいいです。
特に水やりしないですね。
ただし、何度も繰り返しますが
霜注意報が出た時は、不織布をかけるなど
防寒対策をしてあげましょう。
4:肥料
植え付け時には、土に粒状の緩効性化成肥料を
均等に混ぜ込んで元肥にします。
肥料は少なめでも育ちますが
花が休みなく開花するので、
肥料は定期的に施し、
肥料切れを起こさないように注意しましょう。
生育期には、液体肥料(1,000倍タイプ)を
2週間に1回、水がわりに施すと良いでしょう。
肥料が足りないと葉っぱが黄緑色になっちゃいます。
そうなったら、即効性のある液体肥料を与えるとか、
緩効性化成肥料をパラパラっと根元にかけてあげるとか、
様子を見ながら適量の肥料をあげてください。
1年草で、株自体が初夏までの生命なので
肥料を与えるのは5月ぐらいまでかな。
5:花がら摘み
クリサンセマムは、たくさんの花が咲くので
花がらを、まめに摘み取りましょう。
頻度は1週間に1日くらい。なので、
花がらを摘む曜日を決めておくといいですよ。
花弁が枯れた花は
取り除いたほうが見栄えもいいですし、
そのあとの花もつきやすいです。
そのままにしているとタネがついちゃうし、
生育に影響があるので
できるだけ花茎のつけ根付近から摘み取ってください。
手だと、なかなか取れないことがあるので
ハサミで切るほうがラクにできますよ。
6:病気と害虫について
特に注意したいのは、アブラムシ。
冬の間はあまり見かけないけれど
3月頃から出てくるんですよね。
数が少ないうちはテープで捕まえたり
牛乳スプレーで弱らせたりできるのですが
クリサンセマムはアブラムシ被害に遭いやすく
4月下旬ぐらいになるとね、
花が真っ黒になるくらい
ゴマ粒みたいなアブラムシがつくことがあります。
気持ち悪いですよね。
アブラムシは、いろいろな病気を媒介するので
花のまわりや葉の裏側もよく見て
見つけたらスプレー式の殺虫殺菌剤で
しっかり駆除しましょう。
アブラムシ以外では「さび病」にも気をつけましょう。
葉っぱに小さな茶色い斑点が出て
やがて全体が茶色くなって枯れてしまいます。
この症状が出たら、まめに殺菌剤を
かける必要があります。
殺菌剤は、スプレー式のものでもいいし、
ベンレートでもいいです。
アブラムシにしても、さび病にしても
できれば、スプレー式の殺虫殺菌剤で
予防をしておいた方がいいと思います。
投稿日:2024年3月13日