第72回シェードガーデンの名脇役「ホスタ」

みなさん、こんにちは!
園芸研究家の矢澤秀成です。
ようやく暑さも少し落ち着いて
ガーデンの草花も秋っぽくなってきました。
私が手がけている軽井沢の旧スイス公使館シェードガーデンも
秋の見頃を迎えていますよ。
その中で、よ〜く見ていただきたい植物が「ホスタ」。
小さいのから中くらい、大きいものまで
また、葉っぱの色も黄色からシルバー、シルバーの斑入り、
黄色斑など、いろんなタイプのホスタを
組み合わせて使っています。
ホスタは、どちらかというと脇役的な存在なんですが、
とくにシェードガーデンには欠かせない、
お庭をデザインするのにすごく重宝する植物なんですよ。
しかも、丈夫でお手入れもらくちんなので
「植えてよかった!」という声も多い宿根草です。
ということで、第72回は、
シェードガーデンの名脇役
「ホスタ」についてお話します。
1:ホスタとは
学名はホスタですが
和名は「ギボウシ」、または「ウルイ」とも呼ばれます。
春先に、野草として食べる人も
いらっしゃるんじゃないかな。
軽くサッと茹でて醤油とかつお節で和えるだけでおいしい!
そのままナマでサラダにしてもいいですよ。
ドレッシングかマヨネーズをかけた方がいいと思うけど
ちょっとぬるっとした食感が、また、いいんです。
少し脱線したので話を戻しましょう。
ホスタは昔、ユリ科だったんですが、
今は、基本的には「キジカクシ科」と言っていますよね。
なんかコロコロ変わるんですよ。
ギボウシ属、またはホスタ属の宿根草です。
原産地は日本、東アジア。
開花期は6月下旬〜8月です。
品種によって咲く時期は異なりますが
ちっちゃなユリみたいな花が
たくさんくっついたような、
とても素敵な花を咲かせますよ。
花は一日花で、下から順に咲いていきます。
そのあとタネがいっぱいつきます。
耐寒性、耐暑性は、ともに強く、
丈夫で育てやすいところも人気の理由ですね。
海岸の近くでもいいし、高山や湿原でも大丈夫ですよ。
基本的には、半日陰を好むのですが
斑の入った系統や、黄色っぽい葉っぱのものは
日陰がいいですね。
グリーンの濃いものには
日向でもよく育つものがありますよ。
2:アメリカで大きくなる品種が誕生!
ホスタは、もともと日本にあった植物なんですが
アメリカで盛んに育種が行われているんですよ。
アメリカのホスタ協会という組織もあって、
今やホスタはアメリカ中心、と言っていいと思います。
山形県寒河江市で生まれた
「サガエ」という大葉系の大型品種が有ります。
こうした日本の優秀なホスタが交配され、
新しい品種を世界に供給しています。
ホスタは、品種によって花も大きさも、
色も微妙に異なります。
かつては白の斑入りが人気でしたけど、
最近はオレンジ色っぽい黄色のものや、
ちょっと赤みがかっている品種も人気。
名前を覚えてほしいのは
世界に誇る「サガエ」。
これをベースにいろんな品種が作られてきました。
私の好きなホスタは、
中くらいのサイズの「パトリオット」。
白い斑が入る品種もいいですよ。
フレグランス系ホスタといって
香りの美しいものもありますよ。
それから、マイクロホスタという
ミニサイズのホスタもあります。
これは、寄せ植えにも使えますし、
家の中やベランダでも気軽に楽しめますよ。
とにかくホスタには、いろんな品種があるので
組み合わせるのがとっても面白いですよ。
3:明るい日陰(半日陰)で育てよう!
ホスタは、日当たりと風通しの良い、明るい日陰が好きです。
午前中だけ光が当たる場所もいいですね。
強い西日が当たると葉焼けを起こすことがあるので
西日が当たらない場所の方がいいでしょうね。
庭植えの場合は、激しく地面が乾燥する場所を
避けて植えてあげましょう。
乾燥する場所には、
腐葉土でマルチングして乾燥を防ぎましょう。
ポット苗を買ってきたら
地植えにするか、鉢に植え替えるか、
どちらにしても、ビニールポットから出します。
大概の場合、ポットから抜けなくて困るくらい、
根がパンパンに張っていると思いますが
根を切らないように株を出して
根鉢を軽くほぐしてあげてから
花壇または植木鉢に植え替えてあげましょう。
植木鉢で育てる場合は
成長後のサイズによって鉢の大きさを考えましょう。
葉っぱが大きくなる系統や
草丈が1 mぐらいに育つ品種だったら
大きな鉢にドカンと植えて大きく仕立てるといいですよ。
中くらいのタイプは、
1株なら、6寸ぐらいの鉢で大丈夫だと思います。
土は、水はけが良い弱酸性の土を好みます。
植木鉢で育てる場合は、市販の草花用の培養土で大丈夫。
庭植えの場合は、土が酸性に傾いている可能性があるので
弱酸性になるように苦土石灰を入れて、
硬くなっているようだったら
堆肥をしっかり入れて、ふかふかの土にしてあげましょう。


4:お手入れはとってもラク!
ホスタは水が結構好きなのですが、
根元が乾燥しないように気をつけていただければ
ほとんど水をあげる必要はありません。
庭植えの場合、私は1回も水やりしたことないです。
ただし、鉢植えの場合は表面の土が渇いたら
十分に水を与えてくださいね。
また、何日も雨が降らなくて乾燥している場合も
水をあげてください。
もしも、しおれているようだったら
十分に与える必要があります。
肥料は初期肥料だけ。
植えつけてから2週間後ぐらいに
緩効性化成肥料をパラパラと適量まきます。
それ以後は特にあげなくていいです。

本当にお手入れがラクなんですよ。
もし、葉っぱがちょっと薄黄色になった時には
液体肥料を施してください。
植え替えは2〜3年に1回。
2月から3月の間に植え替えます。
芽数が根本に6個くらいあったら、
3個・3個に分けるとか、
塊で分けた方がいいです。
その方が、その後の生育がいいですね。
庭植えの場合は3〜4年に1回掘り上げて、
株を整理し、植え直しましょう。
タネは秋に採取できます。
だけど、花の咲いた後、気をつけていないと、
いつの間にか「パリッ!」と割れて飛んでっいっちゃうので
忘れず採取しましょうね。
タネは2月〜3月頃にまくといいですよ。
私は、秋にタネをまいて冬越しして
春先にピュンピュンと芽が出てくる感じでやってましたね、
タネはポットにまいてもいいし、育苗箱にまいてもいいですが
好光性種子なので、
土は軽く5ミリくらいのせる程度にしましょう。
太陽の光を遮っちゃうと発芽しないです。
5:冬越しは何も手を加えず!
冬になると、地面から上の部分が
全て枯れてしまいます。
枯れてパリパリになると
引っ張れば取れちゃいます。
全部、なくなってしまったように思うかもしれませんが
それでも大丈夫。
ホスタは枯れていないので、ご安心を。
土から上の部分は枯れるけれど、
春になれば、ほぼ完璧に復活してきます。
マイナス20℃くらいまで耐えてくれますよ。
6:気をつけたい病気・害虫
病気は、ほとんど心配ないんですが、
たまに、ウイルス病にかかってしまった株を見かけます。
めったにないですけど、
葉が縮れちゃったり、黒い斑点が出たり、
そういう株を見つけたらウイルス病でしょう。
ウイルス病は治らないので、
見つけたら株ごと抜いて廃棄するしかありません。
このとき、ハサミで切るのは絶対やめてくださいね。
理由は、ハサミを介して他の株に広がるおそれがあるから。
速攻、抜いて捨てる! と覚えておきましょう。
害虫の被害も少ないですね。
たまにヨトウムシがホスタを食べているのを
見かけたことがあるくらい。
その他の害虫を挙げるとすればネコブセンチュウ。
そして、アブラムシが夏の時期、つぼみにつくことがありますね。
アブラムシは、見つけたらブチブチと手で潰すこと。
大量発生していたら、
アブラムシ用の殺虫剤をかけましょう。
予防としてスプレー式の
農薬をかけておくのもオススメですよ。

最も被害が大きいのは、害獣ですね。
つい先日も、ホスタをムシャムシャと
おいしそうに食べている鹿に出会ったばかり。
葉っぱの先の部分が一番おいしいみたいで
茎は全部残してありました(涙)。
イノシシは、ホスタの下にいるミミズを食べるので
ホスタには目もくれないんですが、
結局、土を掘り起こしてしまうので、
ホスタが枯れちゃうんです。
害獣が出没するエリアでは、ある程度、
食べられちゃう覚悟をした方がいいでしょうね。
第73回目は、秋の土づくりについてお話しします。
10月8日ごろ投稿ですので、次回もお楽しみに!
投稿日:2025年9月24日