第36回「シンビジウム」を200%楽しむために!
みなさん、こんにちは!
園芸研究家の矢澤秀成です。
早いもので年の瀬が近づいてきました。
お歳暮に贈る鉢花の定番といえば
「洋ラン」ではないでしょうか。
中でも、絶大な人気を誇るのが「胡蝶蘭」。
そして、
華やかな色と凛とした花姿、
まっすぐ伸びた葉が美しい
「シンビジウム」です。
シンビジウムは寒さに強いうえ、
開花した後の花の寿命が
他の洋ランより長いのも特長。
ですが、その花が咲き終わったら
どうしていますか?
実は、翌年どころか何年も咲くということを
ご存知でない方もいらっしゃるそうです。
ということで、第36回は
「シンビジウム」を200%楽しむためのお話です。
目次
1:シンビジウムとは
シンビジウムは、
ラン科シュンラン(シンビジウム)属の多年(宿根)草。
洋ランには、「地生ラン」と「着生ラン」がありますが
シンビジウムは地生ランに分類されます。
原産地は、東南アジア一帯、日本、中国、インドネシア、
インド北部〜ヒマラヤ山麓、オーストラリアということで
日本の気候によく合う洋ランです。
しかも、丈夫で育てやすい!
品種が豊富で
大きさも、葉が1m以上になる大型から中型、
テーブルや棚に飾れるくらい小型の
テーブルシンピジウムまで様々あります。
また、花茎の本数によって
2本立・3本立・5本立と表現されるほか、
アーチ仕立てやハート型仕立てなど
支柱を使った仕立て方によっても区別されます。
下垂性といって花が小さな滝のように垂れ下がる
「カスケードタイプ」という豪華なものもありますよ。
花色も豊富ですね。
赤、黄、緑、白、ピンク、オレンジ、あかね色、ブラウン系に加え、
ゴールデンアイなど
繊細な模様が入った華やかなものも増えています。
2:1年目の花を楽しもう!
・置き場所
秋に買ってきたシンビジウムの鉢は
まず、寒い屋外を避けて室内に飾りましょう。
窓辺など、明るい場所で育てるのが良いですよ。
その際、夜間の冷気による
悪影響を抑えるため
ガラス窓と鉢花の間にカーテンが1枚あると良いですね。
できれば分厚いカーテンがいいけれど
レースのカーテンでもいいです。
必ずガラス窓との間にカーテンを
1枚入れられるような窓辺に置きましょう。
夜になったらカーテンを閉めて
ガラス越しに冷気がこないよう気をつけてください。
・肥料
早春まで肥料は施しません。
・水やり
表面の土が乾いたら、たっぷりと水をやりましょう。
カラカラにしちゃうと
花がしおれてしまうので注意が必要です。
花が咲いている間は、
やや湿り気があるくらいの方が良いので
毎週1回のペースで
水を貯めたバケツの中に
シンビジウムを鉢ごとチャポンとつけて
吸水させてほしいんです。
花が終わりかけたら
徐々に水やりの量を減らしていきましょう。
3:花が終わったらどうする?
冬に咲く花って、
咲いている時期よりも
花のない季節=春から夏・秋にかけての
管理の仕方がとっても大事なんです。
だけど、この間に放り投げてしまって夏越しできず
毎年買う、という人もいらっしゃいますが
気に入って買ったお花ですから
もう1回、咲かせてみましょう!
ここで、
おぼえておきたい洋ランの構造
についてイラストでご紹介します。
1番おぼえてほしい部位は
「バルブ」です。
葉の根元にあり、ふっくらとふくらんでいるので
すぐ分かると思います。
ここに、水分や養分が蓄えられています。
花が終わったらなるべく早めに
花茎(花がついていた茎)を根元から切るのですが
当然、葉とバルブは残します。
間違って切り落とさないようにしてくださいね。
次に、ソメイヨシノが咲く頃、
植え替えのことと
バルブを育てることを考えます。
4:ソメイヨシノが咲く頃〜初夏の管理
・植え替え
購入したばかりの1年目は、
土の中で根がパンパンに張っているので
ソメイヨシノが咲く頃に
植え替えたほうが良いと思います。
(植え替えの欄を参照してください)
そして、肥料を施し、
屋外の日当たりの良い場所に出してあげて
柔らかい日差しと、気持ちの良いそよ風にしっかり当てて
丈夫なバルブを育てましょう。
ですが、まだ寒い日もあるので
寒の戻りが予想される日は、
室内に取り込みましょう(とても大事です)。
・水やり・肥料
屋外に出すようになったら
水は毎日、しっかりあげていただきたいです。
加えて、花が咲いているときと同様、
週1回はバケツに水を貯めて
チャポンと鉢ごとつけたほうが
浸み込みやすいですよ。
そして、ひと月に1回は
バケツの水に液体肥料(1000倍にうすめる)を
溶かしておき
その中にシンビジウムを鉢ごと入れて
吸水させることで、肥料も吸収させます。
時間も、たっぷりね。
夕方、バケツに入れたら
朝まで、そのままつけておきます。
・芽かき
暖かくなると葉芽(新芽)が上がってきます。
その葉芽がバルブになろうとするのですが
バルブが増えすぎると鉢の中が混み合うので
1つのバルブに対して葉芽を1つにし、
それ以外の葉芽を取り除きます。
5:初夏から夏の管理
・日光調整
5月下旬頃からヒガンバナの咲く頃までは
木漏れ日程度の日当たりが理想的です。
夏場は50%くらいの寒冷紗で
直射日光が当たらないように
遮光してあげるほうが良いですね。
・水やり
気温の上がる真夏は、
カラッカラになっちゃうんで
葉水も与えて株の温度を下げましょう。
週1回のバケツにチャポンも
継続したほうが良いですね。
・肥料
ヒガンバナが咲く頃までは、
バケツにチャポンの際に
月1回、液体肥料を溶かして入れておく、
これを継続します。
6:ヒガンバナが咲く頃〜イチョウの葉が色づくまでの管理
・置き場所
ヒガンバナが咲いたら、遮光用の寒冷紗をはずし
屋外の日当たりの良いところへ出しましょう。
ここからイチョウが色づく頃までは
日光に十分当てる期間です。
そして、イチョウの葉が色づいたら、室内へ。
窓辺などの明るい場所で育てます。
・秋の花芽かき
秋に、花芽が上がってきたら「花芽かき」を行います。
良い花が咲くようにするため
また、咲かせる花芽に栄養が集中するよう
花芽を折って数を減らします。
たくさん残すと花が小さくなります。
花芽の数を絞れば、1つの花が大きくなります。
小さくてもたくさん咲かせたいなど
好みに合わせて調整したら良いと思いますが
思い切って折っちゃったほうが、いい花が咲きますよ。
7:晩秋の管理
・置き場所
胡蝶蘭と比べると寒さに強いですが
霜に当たると黒いシミができちゃうんで
天気予報を見て、霜が降りそうなときや
冷え込む夜には
室内に入れた方がいいですね。
窓辺にシンビジウムを置いているなら
暖かい小春日和の日には窓を開けて、
風に当てると良いでしょう。
寒風吹き荒ぶときは開けちゃダメですよ。
8:2〜3年に1回植え替えを
シンビジウムをはじめ、洋ランの鉢花は
定期的な植え替えが必要です。
目安は、根が鉢からあふれるくらいになったら
植え替えどき。
2〜3年に1回、
ソメイヨシノが咲く初春から
初夏にかけての暖かい時期に行います。
土は、水はけの良い土が最適。
洋ラン用培養土を使えば安心です。
私は、ヤシガラピート(ココピート)や、
軽石(日向土の小粒)、パーライトなどを
自分で組み合わせてブレンドしていますが
個別に数種類の土を買って混ぜると
結構な量の土を買ってしまうことになるので
洋ラン用培養土を買ったほうがお得だと思いますよ。
シンビジウムを購入する場合、
6.5号鉢〜7号鉢のサイズの鉢を
お求めになる場合が多いと思います。
その1つの鉢に「バルブ」が何個あるか、
その個数によって
この鉢のまま育てて良いのかどうかが判断できます。
若い株だと1鉢に
3〜4個ぐらいバルブが入っています。
これだと、まだ余裕があるから
植え替えしなくてもいいです。
1つの鉢の中にバルブが6〜7個など
パンパンに詰まっている場合は
根っこもはみ出していたりするので
大きな鉢に植え替える、または、
株分けが必要になります。
なお、バルブは、やがて茶色くなって枯れます。
バルブを手で触ってスカスカした触感なら枯れています。
終わった(枯れた)バルブは切って取り除きましょう。
ですが、緑色のものは、
水分と養分が入っているので切っちゃダメですよ。
古いバルブをつけたままでもダメではないので
切りすぎないようにしましょう。
9:病害虫対策
購入1年目の株で気をつけたいのは
室内から屋外に出したあとの害虫被害です。
とくに、春から秋にかけて多く発生する
ハダニとカイガラムシに注意が必要。
見つけたら速攻、退治しましょう。
中でも、カイガラムシは一度ついてしまうと、
あっという間に増えてしまううえ、
完全駆除が難しく、翌年も繰り返し発生する可能性大です。
そこで、シンビジウムの鉢花を屋外に出すときには
予防のため
カイガラムシ用エアゾール(殺虫剤)を
かけておくと良いでしょう。
それでも、カイガラムシがついた場合は、
もう1度、散布しましょう。
一方で、病害にも気をつけたいところ。
注意したいのは
カビとウイルス系の病気です。
カビは、根元付近に発生することがあります。
予防対策として、風通しの良いところに
鉢を置くようにしましょう。
怖いのは、黒斑病などウイルス系の病気。
ウイルスが原因の場合、治らないので処分するしかないんです。
他の植物に感染してしまうこともあるから
速攻、破棄してもらったほうが良いです。
葉っぱがまだらになっているとか、
所々にシミが見られたらウイルスの可能性が高い。
勇気を出して処分をオススメします。
せっかく育てたシンビジウムが
ウイルスにおかされないようにするには、
ウイルス系の病気を媒介する害虫を近づけないこと。
害虫予防として、スプレー式の殺虫殺菌剤を
散布しておくことも大事ですよ。
第37回目は、葉ボタンについてお話しします。
12月13日ごろ投稿予定ですので、次回もお楽しみに!
投稿日:2023年11月22日